56 / 97
第三章
56.これじゃあ、いつもと逆ですね
しおりを挟む
自慰は神々にとって途方もないエネルギーを使う行為とウトゥが言ったのは本当だったようだ。
スエンはあの後、昏々と眠り続け、五日ほど過ぎてから目を覚ました。
スエンの寝室にずっと控えていた森羅は、ニャーゴらとともに歓喜する。
もう、ウトゥはキ国に帰ってしまった。彼から介抱の仕方は予め聞いていたので、
「先生、これ、飲んで!冷たい飲み物です」
とまずスエンに水分を勧める。
「これじゃあ、いつもと逆ですね」
木のコップに手を添えて飲ませてもらったスエンは苦笑。
随分と意識ははっきりしてきたようだ。
森羅の手の甲に浮かぶ神紋を撫でながら、「不具合はありませんでしたか?」と聞いてくる。
「はい。火傷も治りましたし、めちゃくちゃ元気……」
スエンが目覚めた喜びで頭がいっぱいになっていたが、この神紋を得るために物凄い体験をしたことが一気に思い出され、森羅は身体がかーっと熱くなるのを感じた。
(大丈夫。普通でいられる。先生が目覚めるまでたくさんイメトレしたんだから)
と心にブレーキ。
抱き合ったのは、緊急事態だったから。
愛し合ってああいう展開になった訳じゃない。
事実、ウトゥとは最初、顔を合わせたときは気まずかったが、向こうがあっけかんとしていたから、こっちにすぐに普通に接することができた。
「ひ、ひとまず報告を」
過剰に反応してしまうのは避けたいのに、最初の声は裏返ってしまった。
医師に仲良くしてもらったことを勘違いして恋心をつのらせて結果傷つくというような繰り返しをしたくない。
(偽神紋を付けてもらうために情は与えて貰ったと思うけれど、それは、愛とは別物だよね)
「オレが神紋を得た直後に調査隊がやってきて、みんなで居間で対応を。先生はオレの胸と手の甲の神紋を見せて、悪魔じゃない証明をした後、今後『神との添い寝』も必要ないと告げられました」
「そうでしたか」
とスエンはほっと一息。
(いやあ。あれもなかなか凄かった)
先日の一件。
十数人でやってきた調査隊は、最初森羅の手の甲の神紋だけでは証拠にならない言い始め、それに切れたスエンが森羅の夜着をはだけながら神紋を見せつけつつ、自分の胸に森羅の額を押し当て『無粋な土人形共め。ようやく見つけたこの男と私は早く睦み合いたいのが分からないのか?居座るというならば、この場で見せつけてやるぞ。神の交合を見たら目が潰れるかもしれないがな』とほとんど意識のないまま口上。調査隊を震え上がらせクルヌギアから追い出してしまったのだ。
「怪我をした仔ニャーゴは、ウトゥさんが原種の森に送っていきました。きちんと森の主と合流できたようです」
報告は完了。
ここで森羅はふふっと笑う。
「ご機嫌ですね」
「はい。先生に後で見せたいものがあって」
実は、原種の森から森羅もウトゥも珍しい物を貰ったのだ。
早くそれをスエンに見せたい。
「ウトゥは?」
スエンはあの後、昏々と眠り続け、五日ほど過ぎてから目を覚ました。
スエンの寝室にずっと控えていた森羅は、ニャーゴらとともに歓喜する。
もう、ウトゥはキ国に帰ってしまった。彼から介抱の仕方は予め聞いていたので、
「先生、これ、飲んで!冷たい飲み物です」
とまずスエンに水分を勧める。
「これじゃあ、いつもと逆ですね」
木のコップに手を添えて飲ませてもらったスエンは苦笑。
随分と意識ははっきりしてきたようだ。
森羅の手の甲に浮かぶ神紋を撫でながら、「不具合はありませんでしたか?」と聞いてくる。
「はい。火傷も治りましたし、めちゃくちゃ元気……」
スエンが目覚めた喜びで頭がいっぱいになっていたが、この神紋を得るために物凄い体験をしたことが一気に思い出され、森羅は身体がかーっと熱くなるのを感じた。
(大丈夫。普通でいられる。先生が目覚めるまでたくさんイメトレしたんだから)
と心にブレーキ。
抱き合ったのは、緊急事態だったから。
愛し合ってああいう展開になった訳じゃない。
事実、ウトゥとは最初、顔を合わせたときは気まずかったが、向こうがあっけかんとしていたから、こっちにすぐに普通に接することができた。
「ひ、ひとまず報告を」
過剰に反応してしまうのは避けたいのに、最初の声は裏返ってしまった。
医師に仲良くしてもらったことを勘違いして恋心をつのらせて結果傷つくというような繰り返しをしたくない。
(偽神紋を付けてもらうために情は与えて貰ったと思うけれど、それは、愛とは別物だよね)
「オレが神紋を得た直後に調査隊がやってきて、みんなで居間で対応を。先生はオレの胸と手の甲の神紋を見せて、悪魔じゃない証明をした後、今後『神との添い寝』も必要ないと告げられました」
「そうでしたか」
とスエンはほっと一息。
(いやあ。あれもなかなか凄かった)
先日の一件。
十数人でやってきた調査隊は、最初森羅の手の甲の神紋だけでは証拠にならない言い始め、それに切れたスエンが森羅の夜着をはだけながら神紋を見せつけつつ、自分の胸に森羅の額を押し当て『無粋な土人形共め。ようやく見つけたこの男と私は早く睦み合いたいのが分からないのか?居座るというならば、この場で見せつけてやるぞ。神の交合を見たら目が潰れるかもしれないがな』とほとんど意識のないまま口上。調査隊を震え上がらせクルヌギアから追い出してしまったのだ。
「怪我をした仔ニャーゴは、ウトゥさんが原種の森に送っていきました。きちんと森の主と合流できたようです」
報告は完了。
ここで森羅はふふっと笑う。
「ご機嫌ですね」
「はい。先生に後で見せたいものがあって」
実は、原種の森から森羅もウトゥも珍しい物を貰ったのだ。
早くそれをスエンに見せたい。
「ウトゥは?」
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。


美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる