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第二章

47.残念ながら、あなたとは聖婚できないんです

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「貴方の魂には、既にたくさんの傷がついていたのですね。気づいてやれなくてすみません」
 コツンと額をぶつけてくる。
 神様の体温はとても熱かった。
 まるでキスされるようなシチュエーションに思えてきて、そんな都合のいいことを考える自分はどこまでいっても馬鹿だなと思いながら森羅は「はあ。すっきりしたあ」とわざと明るく言ってスエンの胸元から這い出る。
「ということで先生。オレ、向こうに戻れたとしても帰る宛が無いんだ」
「残念な気持ちは無いのですか?」
「ちっとも。夜しか出歩けないモルモット生活はこりごりだ。こっちの世界の方がオレはいいよ」
「本当にこちらの世界を愛せていますか?貴方ね。クルヌギアにやってきてからずっと泣いています。夜中に、止めて。見ないでって泣き叫んでいる」
「夢を見るよ、よく。裸で舞台に上げられる夢。でも、必ず先生が助けに来てくれるんだ。オレの心を先生が癒やしてくれていたのは間違いないよ」
「シンラ。私は至らない神なのに」
「オレ、先生に怒られるかもしれないけれど、寿命が伸びるなら嬉しいんだ。先生と一緒にいられるから」
 本音がぼろりと溢れてしまい、森羅は慌てた。
「待って。今のはオレの希望というか願望」
「私と一緒にいたい?」
「オレの寿命が伸びてしまって先生は鬱陶しかもしれないけれど、い、い、一緒にいちゃあ、駄目かなあ?オレ、先生とウトゥさんとの仲を邪魔したりしないし、先生にこうやって抱きしめてもらっても馬鹿みたいに前向きな勘違いをしたりしないからさあ。……側にいさせてよ」
「続けて。シンラ」
「本当は、聖婚して欲しい。可能ならぎゅうぎゅうに束縛して欲しい。願って良いなら、ずっと離さないで欲しい。可能なら、あ……あ、愛して……欲しい」
 鼻水が垂れる。
 格好の悪い告白だなと頭の隅では冷静に思えるのだが、分離してしまったかのように口の動きは止まらない。
「ねえ、先生。オレと聖婚して。聖婚してよう。お願いだよう」 
 ウトゥとの仲を邪魔しないと言った側から、「お願い。お願い」とスエンの首の根っこにしがみついて再三繰り返す。
「シンラ」
 スエンが引き剥がした。
「残念ながら、あなたとは聖婚できないんです」
「どうして?オレ、ふさわしくない?分かった。オレのこと、……嫌い?」
「貴方のことを嫌いなわけではありません。むしろ……」
 スエンは最後まで言わず、森羅から顔をそらす。
「先生?」
「聖婚なんてしたら、神々と同じ時間を生きることになってしまいます。土人形の寿命が倍になるのと訳が違うのですよ」
「それでいいのに。ううん。オレはむしろそれがいい」
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