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第二章

45.小さな身体で賢明に生きている姿が伝わってきて微笑ましい

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「意味なんて無いですよ」
 すると、スエンは悲しそうに微笑んだ。
「そう。最後に是非、知りたかったのですが」
 そして、手に持っていた携帯を森羅に預けてくる。
「最後って?」
「電話というものをなさい。貴方の仲間に。話ができるということは、助けも呼べるということでしょう?」
「え??」
 森羅はあっけに取られた。
 携帯を使って帰れって?あっちの世界に?
 自分の想像とは真逆の結果だ。
 だから、携帯を振りかざす。
「先生。これ、いらないの?世界を一変させるかもしれないのに?」
「果たしてそれ一つで可能でしょうか?もし途中で壊れたら?その物を作るまでに長い工程が必要でしょう?どうやってもこの世界ではまだ揃えられません」
「じゃ、じゃあ、オレの情報は?この国の歴史を少し知っている。他の国のことだって。どんな風に大国が生まれ滅んでいったことも」
「それでも貴方は帰るべきです」
「何で?!」
 森羅の叫び声が洞窟内にこだまする。
「ここは、オレを利用する状況なんじゃないの?口説きたいから、名前の意味を聞いてきたんじゃないの?」
「違います。ただ純粋に知りたかっただけ。貴方とはもう二度と会えないでしょうから心に留めておきたかった」
 震える手で携帯の電源を押してみた。
「ごめん……なさい」
「シンラ?」
「先生は携帯を持っているオレを利用すると思っていたから、ずっと警戒していたんだ。そもそも、これそもそも、これ、使えないのに。落とした衝撃でひび割れているし、充電だってゼロ。コンセントは古代バビロニアには無いし、ワイファイだって」
 いつの間にかまた泣いていたのだろう。
 スエンが涙を拭ってくれる。
「使えなくていいのです。元々私達の世界に無いものなのですから」
「オレの頭の中にたくさん情報はあるから。オレ、先生だけに話す」
 スエンが微笑む。
「私は貴方と過ごせるだけで十分」
「情報すらいらないの?オレの唯一の価値だよ?」
「そんなことありません。クルヌギアに響かせてくれるあなたの笑い声。興味津々で私に聞いてくる探究心溢れる表情。少しずつでも私の手当によって治っていく身体。小さな身体で賢明に生きている姿が伝わってきて微笑ましい」
 なんという口説き文句だ。
 裏のない純粋さだから、なおさら森羅を照れさせる。
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