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第二章
42.……駄目だ。……こっちに来ちゃ
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木の生えていない広場みたいな場所に転がされ、森羅はすぐさま謝った。
「お前たちが守っている神域に勝手に入って悪かった。でも、どうか殺さないでくれ。肌が真っ黒なままの状態で死んだら、調査団がこの森を大捜索したときに悪魔を見つけたぞってなっちゃう。先生やウトゥさんだけじゃなく、他の神々にも迷惑……っっっ」
地面に尻を着き、後ろ手で逃げようとする森羅を森の主は、大きな前足でボールを転がすように弄んでくる。その度に前足の爪が身体に刺さった。
「オレ、先生の元に帰らなくちゃいけないんだって」
這って少しでも動こうとする。
森の主にはその動きが面白くて堪らないらしい。
爪で腕や背中、腿などが次々と傷付けられていく。
異世界バッドエンドにもほどがある。巨大な猫にやられるだなんて。
最悪なことに雨が降ってきた。
バチバチバチバチと、大きな音を立てて地面を叩く。
「アスファルトでもないのにこの音。なんて大粒の雨なんだ。叫んだって声が届きそうにないな」
たちまち身体が冷えてくる。
森の主は雨を避け、巨木が広げる枝の下へ。こちらの世界でも猫は毛が濡れるのは好きではないようだ。
だが、その場を去りはしない。
監視するように森羅を眺めている。
ドササッ。
重い音を立ててさらに水滴が振ってきた。
木の枝に他の野生のニャーゴが昇っていて、枝についた雨の雫を揺すって森羅に落としてきたのだ。
まるで水の爆弾だ。
「うわっ」
ほふく前進で逃れようとすると、一つが頭に当たった。
気が遠くなる。
バチバチバチバチと続く雨の音を聞いていると、
「シンラ?シンラ、どこですか?」
どこかで、スエンの声がする。
聞き間違いだろうか?
「シンラ?返事を」
間違いない。スエンが近くにいる。
声がさっきより近い。
森羅を木の下で眺めていた森の主がグルゥーゴォーと喉を鳴らす。
「……駄目だ。……こっちに来ちゃ」
森羅の声は届かなかったようだ。茂みをかき分ける足音がして、スエンが顔を見せた。
雨に濡れた銀髪は身体に張り付き、綺麗な顔には泥が跳ねている。
「シンラ!」
一瞬、顔は輝くが、すぐに背後にいる巨猫に目が行く。
まずいものを見てしまったという顔だった。
「お前たちが守っている神域に勝手に入って悪かった。でも、どうか殺さないでくれ。肌が真っ黒なままの状態で死んだら、調査団がこの森を大捜索したときに悪魔を見つけたぞってなっちゃう。先生やウトゥさんだけじゃなく、他の神々にも迷惑……っっっ」
地面に尻を着き、後ろ手で逃げようとする森羅を森の主は、大きな前足でボールを転がすように弄んでくる。その度に前足の爪が身体に刺さった。
「オレ、先生の元に帰らなくちゃいけないんだって」
這って少しでも動こうとする。
森の主にはその動きが面白くて堪らないらしい。
爪で腕や背中、腿などが次々と傷付けられていく。
異世界バッドエンドにもほどがある。巨大な猫にやられるだなんて。
最悪なことに雨が降ってきた。
バチバチバチバチと、大きな音を立てて地面を叩く。
「アスファルトでもないのにこの音。なんて大粒の雨なんだ。叫んだって声が届きそうにないな」
たちまち身体が冷えてくる。
森の主は雨を避け、巨木が広げる枝の下へ。こちらの世界でも猫は毛が濡れるのは好きではないようだ。
だが、その場を去りはしない。
監視するように森羅を眺めている。
ドササッ。
重い音を立ててさらに水滴が振ってきた。
木の枝に他の野生のニャーゴが昇っていて、枝についた雨の雫を揺すって森羅に落としてきたのだ。
まるで水の爆弾だ。
「うわっ」
ほふく前進で逃れようとすると、一つが頭に当たった。
気が遠くなる。
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「シンラ?シンラ、どこですか?」
どこかで、スエンの声がする。
聞き間違いだろうか?
「シンラ?返事を」
間違いない。スエンが近くにいる。
声がさっきより近い。
森羅を木の下で眺めていた森の主がグルゥーゴォーと喉を鳴らす。
「……駄目だ。……こっちに来ちゃ」
森羅の声は届かなかったようだ。茂みをかき分ける足音がして、スエンが顔を見せた。
雨に濡れた銀髪は身体に張り付き、綺麗な顔には泥が跳ねている。
「シンラ!」
一瞬、顔は輝くが、すぐに背後にいる巨猫に目が行く。
まずいものを見てしまったという顔だった。
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