【未完】オレ、異世界で偽装聖婚して恋愛小説家デビューすることになりました!

遊佐ミチル

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第二章

36.スエンに蔑ろにされているってお前は思っているみたいだが、逆だぞ

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「最近はそこまでは」
 ウトゥが首を振る。
「かなりの大声だぜ?スエンの奴、お前のうなされる声を聞いたら俺等が交換しあっているときだって、ぱっと止めて出ていくんだぜ。土人形が泣く赤ん坊があやしにいくみたいにさ」
「交換って交合のことでしょう?つまり、抱き合ってるんでしょう?それを止めてまでってのはオレに気を使いすぎというか」
「抱き合う?いや?」
「嘘付かないでくださいよ。だって、裸で」
「はあん。なるほどなあ。黒焦げ土人形がずっとご機嫌が悪かったのってそのせいか?違う。オレらは何百年と会うことが無かったりするから経験したことを言葉にするには膨大な時間がかかる。だから、触れ合って情報を交換するんだ」
 ウトゥがスエンから預かってきたらしい貝殻のケースを開けた。
 すんと匂いを嗅ぎ、「はああ、なるほど」と勝手に納得。
 腰に結んだ皮袋から似たようなケースを出してきて、手に握らせてきた。
「スエンに蔑ろにされているってお前は思っているみたいだが、逆だぞ。どんなに影で大切にされているか見せてやろう。自分で塗る分は、オレが渡した軟膏を使ってみ?」
「いいです。先生の方を使います」
 スエンのはいつも爽やかな香りがする。一方、ウトゥのは無臭。
「オレが渡した方にオレの唾液は入ってねえってば。んでな、スエンの方はぐっすり寝られる成分が入っているんだよ。全身に塗ったらそれはそれはすやすや眠れる。だがな、使用量を半分にしたとしたら?」
「半覚醒状態になるということですか?」
「ぐっすり寝入っているお前をどんな風にスエンが世話しているかこれで分かるってもんよ。騙されたと思って、な?」
 自分を慈しんでくれるスエンとやらと見てみたい気もする。
 だが、ウトゥに勧められるのは腹立たしい。
「あ。ちょっと、ウトゥさん!」
 ウトゥは勝手に森羅の夜着を脱がしてくる。さっさと背中に軟膏を塗られてしまった。
 夜になった。
 身体の全面に雑な気持ちで軟膏を塗って休んでいると、いつもは舞台の幕が降ろされるように眠りに落ちるのとは少し違うふんわりとした眠りがやってきた。
 やがて扉が開く音。
 部屋に入ってくる足音。
 飛び飛びに覚醒し、次に部屋に灯りが灯ったのを感じる。
 うつ伏せに眠っていると毛布を剥ぎ取られる。
 髪を撫でられる感触。
 続いて、
「シンラ。大丈夫です。ここは劇場じゃありません」
という声。
 とすると、
「う、ううっ」
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