【未完】オレ、異世界で偽装聖婚して恋愛小説家デビューすることになりました!

遊佐ミチル

文字の大きさ
上 下
34 / 97
第二章

34.オレ、失踪しようか?

しおりを挟む
「そのきっかけを作った私は罰を与えられるでしょうね。雷で砕かれるとかそのような類の」
「駄目だ、そんなのっ!!先生。唾液でなんとかなるならオレに……そのう、してくれない?悪魔を飼っていないという証明ができればいいんだから」
「貴方に最善の治療を施さなかったのは訳があります」
「オレの身体に不具合が出るとか?でも、オレのせいで先生の命が危うくなるなら」
「いいえ。不具合が出るのは、身体ではありません。森羅。貴方の人生にです。正確に言うならもう多少の不具合は生じています」
「え?オレどこにも」
「火傷を負って以来、毎日塗っている軟膏があるでしょう?あれにも私の唾液がほんの少し入っているんです。そのせいで十年ぐらいは、寿命が伸びているはず。神々の身体を、それが唾液であっても土人形が取り込めば大きな変化を生みます」
「手を」と続けてスエンが言った。
 差し出すと「失礼」と言って唇を押し当ててくる。
「あっ」
 火傷を気遣って軽く握られているだけなので、スエンの大きな手の中で森羅の手がビクビクと動いてしまう。
 舌がチロリとうごめいた感触があった。
 スエンが唇を離すと、湿り気があった部分が元の肌の色になっている。
「今ので一週間は伸びたでしょうか」
 スエンが黒くなった舌を拭いながら言う。
「森羅の場合、火傷は全身に及んでいますから唾液で処置をしたら、倍以上寿命は伸びるはずです。あなたが百年も生きられないと言ったことが本当なら、おそらく二百歳を越えて生きるはず」
「それって、オレ的にはいいことなんじゃ?オレ、XPっていう病気でずっと病院暮らしだったんです」
 すると、スエンがとても長く息をついた。
「あなた、まるで分かってないですねえ」
 まさかそんな風に言われるとは思わなくて、「え?」と聞き返す声が甲高くなる。
「寿命が伸びることが全ていい結果に繋がりますか?病気で不自由だった日々を取り戻せたとして、最初の内はいいでしょう。でも、ゆくゆくは同族は死に絶え、気がつけば貴方一人。取り残される悲しさが想像できないのですか?」
 森羅は黙り込む。
 それって、先生の経験談なのかな、と思いながら。
 なんとなく頭の中にモヤがかかった気分だ。
「オレ、失踪しようか?クルヌギアにはいないって調査団の連中に言ってもらえれば」
「悪魔は原種の森に隠れているかもしれない。捜索させろという口実を与えることになるでしょうね」
 森羅はうなだれた。
「そうですね。少し考えれば分かることだ。ウトゥさんに言われた通り、自分のことが絡むとてんで駄目になる」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

処理中です...