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第一章

8.貴方のような土人形は初めてです。少し面白くなってきました

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「余計なことをするならば、今すぐに貴方をクルヌギアに連れ去って心臓をえぐり出しますよ」
 平坦な声で言われて少し焦る。
 でも、自分の読みが正しいなら……。 
「それ、オレをこの部屋に押し込んだ兵士も言っていました。たぶん、脅し文句ですよね?」
「さあ」
「ここからはオレの推測です。間違えていたらすみません。同族が神に捧げられ死を迎えるなら、土人形側はもっと華々しい神事にするはずです。なのに、手抜きが目立つ。この神事、恐怖が独り歩きしているだけで実際は形骸化されたものでは?」
 スエンが薄目を開けた。
 緑の目がこちらを軽く睨んでいる。
「こ、言葉が過ぎ」
「続けなさい」
「えっと、あの」
「いいから続けなさい。貴方のような土人形は初めてです。少し面白くなってきました」
「はい。じゃあ、お許しが出たということで詳しく説明します。まず、第一に添い寝役の扱いに関してです。オレは怪我をした状態で地下牢に入れられていました。手当もろくな食事も無くここに。捧げ物のような扱いなら事前に綺麗にするはずでしょう?そして、神様は事前に湯桶と薬草の束みたいなのを事前に用意していました。つまり、添い寝役は捕まった状態で神様に差し出されるのが状態化している」
「ふうん。なるほど」
「だから、神様自ら添い寝役に湯浴みをさせ、食事を与える。この夜着だって、神事なら立派な箱とかに入れられて枕元に用意されているはず。なのに神様は鞄から取り出した。神様とオレでは身長が全く違うので、この夜着はわざわざどこかで買い求めたか、作らせた可能性が高いです」
 スエンは黙って耳を傾けている。
「最後に、これはとても立ち入った推測です。貴方は、れっきとした神様だけれど、土人形と蔑む存在が主催する神事を断れない立場にあって、何も分からず差し出され怯える土人形を鬱陶しいと思う反面、選ばれた土人形には罪は無いのだからといつも優しくしていたのでは?」
「辺境の地にも文明が発達した国があるといいます。貴方は高度な教育を受けた高官の子息なのかもしれませんね。だが、親が庇いきれない悪事をしでかしたとか?」
 推理返しされた。
 でも、正解を答えることはできない。
「分かりません。地下牢のような場所で目覚めて、着ていたのは縞の上下。右肩はどこからか落ちたのか痛みがあって、手の甲と腕には古い傷が。内出血みたいな」
 スエンが足の甲を指さしてきた。
「そちらは?」
「この部屋にくるときに引きずられて」
「目覚めたときから靴も履いていなかったと?」
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