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第一章

3.腐ってもあちら様は我ら土人形とは違うお方

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「また、昼だ」
 目覚めたら地下牢みたいな場所にいた。
 高い部分に小さな窓が作られ、腕が入るかどうかの僅かな隙間から強い光の帯が漏れている。
「どこなんだ、ここ?そして、オレは誰なんだ?」
 自分の名前すら分からない。
 身につけているのは着慣れた感じの縞の上下服。真ん中のボタンが一つ、取れかけている。
「痛ててて」
 肩の部分を引っ張ると、草で擦れたような痕がある。
 野原みたいな場所に落ちた後、ここに連れて来られたようだ。
 数日が過ぎているのに、誰も顔を見せない。
 唯一、時間間隔が図れるのは、手しか入らないぐらいの小さな扉から差し入れられる何味なのかも判別が付かない薄味のスープと硬いパン。
「定期的に持ってきている気がする。なのに、小窓からはずっと明るい日差しって……」
 すんと、鼻をすする。外は暑そうだが、地下牢はいつもひんやりしていて薄着の自分にはかなりつらい。
「身体が少し火照っている。風邪でも引いたらヤバイぞ」
 呟いていたら、急に地下牢が開いた。
 立っていたのは、袖のない長衣を着た屈強な身体つきの若い男が二名。
 身につけてるのは革ベルトに皮のサンダル。そして、帯剣している。
 兵士だろうか?まるで古代ローマの世界だ。
 男らは、無理やり腕を掴んできた。
「痛い、痛いって」
 喚いていると、また一人牢に。
 兵士風の二人の男らよりかなり年配の男だった。光沢のある青い長衣を着ていて、身分が高そうだ。
 男がじっと見つめてくる。
「小僧。どんなに怖くても、粗相のないようにな。腐ってもあちら様は我ら土人形とは違うお方」
「土人形?どういう意味っ……」
「連れて行け」
 両腕を男らに抱えられ牢から連れ出されると暗い廊下だった。
 螺旋状の階段をどこまでも上らされる。
 誰かと対面させられるようだ。
 ただならぬ雰囲気に
「か、帰る。離してくれ」
 精一杯暴れると、それまで無言だった兵士の一人が、
「帰れるわけねえだろ。お前が冥界に連れて行かれる役に選ばれたんだから」
と言い、もう一人が、
「可愛そうになあ。生きたまま心臓を取り出されるだなんて」
 つまり、生贄?
 ガクンと膝が抜けた。
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