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第五章

91:花が咲き乱れる夜の庭が、僕?

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「初めてで辛いだろうに礼なんて」
「誰かとこうやって深く繋がれるなんて……思ってもみなかったから」
 ジョシュアの目が細められた。オアシスの初めての晩のように、髪を優しく梳かれる。ミオの内部がジョシュアの形を覚えるまで、二人はずっと動かずに抱き合っていた。その間、ジョシュアはミオの手のひらや腕についた傷一つ一つをなぞっていく。
「あ……っ、みっともみなくて……あぁ……すみません」
 指先の戯れに、ミオの身体が敏感に反応する。触ることのできる傷すべてにジョシュアは触れた。
「この傷、一つ一つにきっと記憶があるね。でも、僕がこうやって上からなぞったから」
 手のひらの傷に、軽く爪をたてなぞられた。それだけで、蕩けそうになる。
「昔の嫌なこと思い出しそうになったら、これは、全部、僕が付けた傷だと思って。いいね」
 この上ない労わりに、ミオの身体が喜んだ。特にジョシュアを受け入れている孔がきゅうきゅうと締め上げる。
「ん…ぁ…。ミオさん」
 ジョシュアが、かすれ声を上げながら、少し腰を引き埋め戻す。先ほどまで指で塗りこめられた香油が溢れ出し、くちゅんと卑猥な音を立てる。
「……ん。……んんぅッ」
 ミオは、気持ちよさに喘ぎながら、寝具に顔を押し付けた。降り注がれた濃密な花の香りがした。
「……俺、……っ今、きっと天国にいます」
 息を乱しながら、愛しい人に伝える。
「花が咲き乱れる夜の庭が、僕?」
「はい。……ジョシュア様の腕の中は……天国です」
 奥まで入れた雄を、今度はゆっくりと抜かれた。
 すごく切なくてたまらない。
 また埋められて呻いた。
 ゆるりと腰を揺らされ、どんどん抜き差しの幅が大きくなっていく。
「すごく気持ちがよくて、幸せだ。僕も、天国にいるようだよ」
 こんな身体にそこまで言ってもらえて、感極まってミオはわあっと泣き出しす。涙どころか、鼻水までこぼし顔はぐちゃぐちゃだ。
「そんなに、泣かないで」
 あやすように、ジョシュアがミオを抱えあげる。ズッと自重で身体が沈み込んだ。
 ジョシュアは、ミオを抱きかかえたままベッドから立ち上がる。
 繋がったまま船室の壁にミオの背中を押し付け、不安定な姿勢のまま腰をゆるく突き上げてきた。掴まる場所はジョシュアの首しかなく、ミオは必死にしがみついた。
「この数週間で少し重くなったね。君が成長する前にしか、こういうことは出来ないな」
「だったら俺、食事を控えます」
「駄目。大きくなるミオさんを見続ける楽しみを、僕から奪わないで」
 どんなミオでも好きなんだと言われた気がして、涙が滝のように溢れてくる。
「笑ってよ。何だか、君を虐めているみたいな気分になる」
「うれし泣きです。しかも、二度目です」
 ミオは、サライエの砂漠の入り口でも泣きそうになったことを伝えた。
「そんな些細なこと」
「俺にとっては特大の幸せで……。……だからもっと泣いてもいいですか?」
 ミオの言葉に煽られて、ジョシュアの吐息が荒くなり、ゆさゆさと身体を揺らす動きが激しくなった。
 動きはとんどん増していきジョシュアの声が「はっあ……あっ、ああっ……」と細切れになったかと思うと、「あっ……ああーーっ。ミオッ」と、最後に飛び切り切ない声を上げた。
 初めて名前を呼び捨てられ、身体中がじんと痺れた。
 ミオも、愛しい人の首にしがみついたまま乱れに乱れた。
「ミオ!」
「ジョシュア様っ!!」
 最後にはお互い名前を呼ぶ余裕しか無くなって、どこまでも幸せに溶けあった。
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