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第五章
89:もう一度、言うよ。どうか僕と一緒に生きて
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貪るように口づけあい、二人は寝台に倒れ込む。
「滋養剤なんかなくても、……本当は全然……大丈夫なんです」
ミオは恥ずかしがりながら、ジョシュアの手を下半身に導く。
「ジョシュア様と口づけするだけでこうなってしまうので、俺の方が浅ましいです」
感極まったように、頬に瞼に、余すところなくジョシュア口づけを与えてくる。
「これが素の君の硬さで、体温で、反応なんだね。滋養剤を飲んでいたときの君より強力だ」
「この身体でできることは限られているかもしれません。でも……だからこそ、何でもします。どうか御傍に置いてください」
「なら、僕と一緒に英国に……」
ハジバミ色の瞳が、自信さなげに揺れていた。
ここまできて不安になるこの人が愛おしい。
「はい」とミオは頷く。
ジョシュアは、泣き笑いの顔で口づけを繰り返してきた。そして、端が欠けた装飾品を見せる。
「最初の晩、君は介抱してくれたお礼に、苦労してためたお金を差し出してきたね。来世、奴隷に生まれないように運命を舵取りをするための頼みの綱のようなそれを買えなくなると分かっていたはずなのに。奴隷がこの装飾品を欲しがる意味を知って、君が愛おしくて愛おしくて堪らなかった。だから、奴隷の吹き溜まりで瀕死の君を見つけて、僕は獣のような咆哮を上げてしまったよ」
「俺も、意識が途切れる瞬間まで、ジョシュア様のことを考えていました。差し上げた装飾品をジョシュアはどこにでも連れて行ってくれるだろうって、嬉しくて、そして、俺本人じゃないことが途方もなく悲しくて。だから、今、こうやって抱き合えて天にも昇るようなうれしさです」
すると、ジョシュアが泣き笑いの表情を浮かべた。
「天に昇るのは待っておくれよ。それは、ずっとずっと後だ。どうか僕と一緒に生きて」
そこで、ジョシュアが唇を引き結んだ。
「このセリフ。二回目なんだ。覚えている?」
「はい。旅が終わる前の晩でした。テーベの街に入る手前だったと思います」
「君は返事をしてくれなかった」
「もう、お側にいられないと覚悟していたので」
でも、今はジョシュアと一緒に生きるという可能性が見えてきた。
ジョシュアが真剣な目でミオを見つめてくる。
「もう一度、言うよ。どうか僕と一緒に生きて」
ミオはゆっくり深呼吸する。
そして、「はい」と頷いた。
ジョシュアを抱きしめると、一瞬だけ嗚咽が漏れた。
こんなにも自分はこの人に思われていたのだとミオは改めて思った。
そして、生まれて始めて本能のままの言動を始めた。
「ジョシュア様、あの……」
と言いながら夜着のボタンを自ら外していく。
でも、セリフを言うのが恥ずかしい。
何度か、言いよどんで、ついに愛しい人に伝えた。
「あ、あの……。もっと……したい……です」
「……ミオさん」
ジョシュアに驚かれて、赤面した。
「く、口づけだけでは物足りないんです。た、旅の最中、ジョシュア様もこんな気持だったのでしょうか?そ、そ、それは辛い思いを」
ボタンを外す手が震えていた。
ジョシュアが眩しいものを見るかのように、徐々にさらされていく素肌を眺めている。
こんな傷だらけの身体でも、彼にとっては愛でるべき存在なのだと改めて実感した。
いやらしい気分にはほど遠いのに、身体の中心が滾って痛いぐらいだ。
純粋にジョシュアを求めている証拠だ。
「駄目だよ。まだ、本調子じゃないんだから」
そう言いながら、なぜか、ジョシュアは強くミオを抱きしめてくる。
息が苦しくなるような包容だった。
今は、それが嬉しい。
「ジョシュア様」
「ん?」
「滋養剤なんかなくても、……本当は全然……大丈夫なんです」
ミオは恥ずかしがりながら、ジョシュアの手を下半身に導く。
「ジョシュア様と口づけするだけでこうなってしまうので、俺の方が浅ましいです」
感極まったように、頬に瞼に、余すところなくジョシュア口づけを与えてくる。
「これが素の君の硬さで、体温で、反応なんだね。滋養剤を飲んでいたときの君より強力だ」
「この身体でできることは限られているかもしれません。でも……だからこそ、何でもします。どうか御傍に置いてください」
「なら、僕と一緒に英国に……」
ハジバミ色の瞳が、自信さなげに揺れていた。
ここまできて不安になるこの人が愛おしい。
「はい」とミオは頷く。
ジョシュアは、泣き笑いの顔で口づけを繰り返してきた。そして、端が欠けた装飾品を見せる。
「最初の晩、君は介抱してくれたお礼に、苦労してためたお金を差し出してきたね。来世、奴隷に生まれないように運命を舵取りをするための頼みの綱のようなそれを買えなくなると分かっていたはずなのに。奴隷がこの装飾品を欲しがる意味を知って、君が愛おしくて愛おしくて堪らなかった。だから、奴隷の吹き溜まりで瀕死の君を見つけて、僕は獣のような咆哮を上げてしまったよ」
「俺も、意識が途切れる瞬間まで、ジョシュア様のことを考えていました。差し上げた装飾品をジョシュアはどこにでも連れて行ってくれるだろうって、嬉しくて、そして、俺本人じゃないことが途方もなく悲しくて。だから、今、こうやって抱き合えて天にも昇るようなうれしさです」
すると、ジョシュアが泣き笑いの表情を浮かべた。
「天に昇るのは待っておくれよ。それは、ずっとずっと後だ。どうか僕と一緒に生きて」
そこで、ジョシュアが唇を引き結んだ。
「このセリフ。二回目なんだ。覚えている?」
「はい。旅が終わる前の晩でした。テーベの街に入る手前だったと思います」
「君は返事をしてくれなかった」
「もう、お側にいられないと覚悟していたので」
でも、今はジョシュアと一緒に生きるという可能性が見えてきた。
ジョシュアが真剣な目でミオを見つめてくる。
「もう一度、言うよ。どうか僕と一緒に生きて」
ミオはゆっくり深呼吸する。
そして、「はい」と頷いた。
ジョシュアを抱きしめると、一瞬だけ嗚咽が漏れた。
こんなにも自分はこの人に思われていたのだとミオは改めて思った。
そして、生まれて始めて本能のままの言動を始めた。
「ジョシュア様、あの……」
と言いながら夜着のボタンを自ら外していく。
でも、セリフを言うのが恥ずかしい。
何度か、言いよどんで、ついに愛しい人に伝えた。
「あ、あの……。もっと……したい……です」
「……ミオさん」
ジョシュアに驚かれて、赤面した。
「く、口づけだけでは物足りないんです。た、旅の最中、ジョシュア様もこんな気持だったのでしょうか?そ、そ、それは辛い思いを」
ボタンを外す手が震えていた。
ジョシュアが眩しいものを見るかのように、徐々にさらされていく素肌を眺めている。
こんな傷だらけの身体でも、彼にとっては愛でるべき存在なのだと改めて実感した。
いやらしい気分にはほど遠いのに、身体の中心が滾って痛いぐらいだ。
純粋にジョシュアを求めている証拠だ。
「駄目だよ。まだ、本調子じゃないんだから」
そう言いながら、なぜか、ジョシュアは強くミオを抱きしめてくる。
息が苦しくなるような包容だった。
今は、それが嬉しい。
「ジョシュア様」
「ん?」
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