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第三章

39:どうして、軽蔑してくれないんですかっ?

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「これまで沢山、色んな人に罵倒されてきました。寄るな、不吉だ。汚らわしい。何で、生まれてきたんだと言われたこともあります」
「大切な人を、褒めたり、慰めたりするのは普通のことなんだよ。ミオさん」
「その普通というものを知りません。だって、俺の日常は……」
 ミオは身体を震わせながら、いきり立っている自分の雄に手を伸ばす。そして、握りこんで動かした。
 気づけば、薄笑いをしていた。
「こうやって自慰を披露させられ、『白』のくせに性欲があるなんて浅ましいとけなされ、笑われるのが当たり前で」
 心の中で、叫ぶ。
 こんなこと、ジョシュアに告げたくない。
 でも、言わないと苦しくて、自分という存在が弾けて粉々になってしまいそうだ。
 床に突っ伏して大声で泣きたかった。
 絶対、彼は、自分に深く失望する。
 そして、興味を失う。
 恋人になって欲しいなんて、言ったことすら綺麗さっぱり忘れて、国に帰るのだ。
 ジョシュアは、険しい顔をしてミオの手を止めさせた。
「今、君は嫌な部分をさらけ出して、僕に嫌われたと思っているだろう。けどね、潤んだ瞳や上気した頬、それに、糸を引くほど充血したその部分を見せつけられるのは、僕にとっておあづけを食らっている犬の気分なんだよ」
 ジョシュアは、ミオの両腰に手を当て、よっと掛け声をかけて抱え上げる。
 落とされまいと反射的に足が開き、ジョジュアの胴体に足が絡む。尻に手を当てられ、しっかり支えられた。
 ジョジュアはミオを抱えたまま、狭い部屋をくるくると動き回る。
「ねえ。僕と何をするのが好き?」
「どうして、軽蔑してくれないんですかっ?」
「それは、単なる君の癖だと分かっているからさ。傷つけれることに慣れきっていて、僕に褒められたり優しくされたりすると、いつもと違うから落ちつかなくなる。そして、わざと嫌われようとする。昔、出会った人がそうだったから、よくわかるよ。あの頃の僕は、何も理解してやることができなかったけれど、今はどうすればいいのか知っている」
 ミオは、ジョシュアにじっと目を見つめられた。
「本当は、あんな姿を晒した上で受け入れて欲しかったんじゃないのかい?」
 瞬間、雷に打たれたかのような衝撃がミオの心に走った
 激しく首を振る。
「そんなことっ、思ってませんっ」
 悲しみとは違う大粒の涙が零れて、頬をつたっていった。
「だって、俺自身が、こんな自分を受け入れられない」
「君が無理でも、僕は受け入れるよ。君は可愛い。綺麗だ。素直になれないところも、臆病な部分も好きだ。他人に献身的に尽くし、自分の欲には控えめな部分も。君のいいところは、まだまだあるよ。一晩中、語ろうか?病的に与えたがりな僕を、見くびってもらっては困るなあ」
 ジョジュアは得意げな顔をした。
「ねえ、何が好き?僕にあれだけ言わせたんだ。ミオさんも言って欲しいな。それとも、僕との時間はただ苦痛なだけだった?」
 手が痺れてきたのか、ジョシュアは、またよっと掛け声をかけて、ミオを抱え直す。
 ミオは、鼻をすすりあげながら言う。
「一緒の、食事っ、ですっ」
 涙どころかしゃっくりまで止らなくなったミオの背中を、ジョジュアは優しく撫で始めた。
「あとは?」
「カードゲームやっ、水浴びっ。抱擁していただくのも、本当は大好きです。添い寝して眠る夜も、一緒に目覚める朝も……口づけも」
「よかった。僕も好きだ」
 ふいに、小鳥が花の蜜をついばむような軽い口づけをされた。
 感情が、荒れた海の波のように溢れ出し、ジョシュアに向かう。
 気が付けば、彼の頭を抱きかかえて、むさぼりつくような口づけを返していた。
「控えめなミオさんから、こんな風に激しくされる口づけは特に好きだよ」
 自慰を拾させられていた過去を打ち明けても、ジョシュアがミオに愛情を注ぐ態度は全く変わっていなかった。
 むしろ、増しているのかもしれない。
 ミオの心の中に、とある言葉が生まれた。
 今まで誰にも使ったことのない言葉だ。
 恥ずかしくて堪らないけれど、どうしてもジョシュアに伝えたい。
「俺、ジョシュア様のこと、とても……慕っています」
 彼は、本当に心の底から嬉しそうに笑ってくれた。
「たぶん今の状況だと、好きですっていうのが、正解だ」
 周りに誰もいやしないのに、ミオは辺りを見回した。
 そして、ジョジュアの耳に口を当て、教えられたばかりの言葉を囁いた。
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