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第二章
24:これは、からかいでしょうか?それとも戯れというものですか?
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「すごく爽やかな香りだ」
鍋の上で香りを吸い込んで、気持ちよさげな顔をした。
「黒い水で具合が悪かったのも吹き飛ぶ」
「ジョシュア様。もう使わないハンカチなどお持ちですか?タオルでもいいです」
渡されたそれを、ミオは熱湯の中に端を摘んで潜らせる。空気に晒し冷ましてから絞った。
「どうぞ、手を」
差し出された手をタオルで包んで、何度か拭った。
「嗅いでみてください。黒い水の匂いは、薄くなっていると思います」
ジョシュアは、指先を鼻の下に押し当てた。
「確かにしない。全然しないよ」
「オアシスに自生する、匂い消しの草です。束ねてポケットに入れて持ち歩く人もいます」
「物知りだね、ミオさんは」
褒められて嬉しい。でも、それ以上会話が続けられなかった。口の中にジョシュアの舌の感覚が残っていて困る。
たき火がぱちぱちをはぜた。青白い肌とハチミツ色の肌は炎に照らされて、同じオレンジ色をしている。
「さっきはごめん。怒っている?」
「旅の旦那様に対して、奴隷は怒りません」
「なら、もう少し距離を詰めてもいい?」
身体に走った熱を思い出し、ミオはたき火から去りかけた。ジョシュアが手首を素早く掴む。ミオは顔を伏せた。
「これは、からかいでしょうか?それとも戯れというものですか?俺、奴隷だからそういうことが全然わからないんです」
違うよ、とジョシュアが首を振る。
だったら、何だって言うんだろう。
行為に意味があるなら、きちんと言葉で教えて欲しかった。
ジョシュアはミオの手首を握りしめたまま背後に回って、そっと抱きしめてくる。
触れられている部分から、甘い痺れが走る。
だから、振りほどけない。
触れられるという幸せを、ミオの体はいつの間にか覚えてしまった。
暫くその体勢のまま、たき火の炎を二人で見ていた。もっと木切れを集めておくんだったと、残り少ない燃料を見ながらミオは思った。
鍋の上で香りを吸い込んで、気持ちよさげな顔をした。
「黒い水で具合が悪かったのも吹き飛ぶ」
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「どうぞ、手を」
差し出された手をタオルで包んで、何度か拭った。
「嗅いでみてください。黒い水の匂いは、薄くなっていると思います」
ジョシュアは、指先を鼻の下に押し当てた。
「確かにしない。全然しないよ」
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「物知りだね、ミオさんは」
褒められて嬉しい。でも、それ以上会話が続けられなかった。口の中にジョシュアの舌の感覚が残っていて困る。
たき火がぱちぱちをはぜた。青白い肌とハチミツ色の肌は炎に照らされて、同じオレンジ色をしている。
「さっきはごめん。怒っている?」
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「なら、もう少し距離を詰めてもいい?」
身体に走った熱を思い出し、ミオはたき火から去りかけた。ジョシュアが手首を素早く掴む。ミオは顔を伏せた。
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だったら、何だって言うんだろう。
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