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第二章
23:俺なんかの口づけでお気持ちが晴れるんですか?
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ジョシュアの顔が、ミオの胸に当たった。
「もっと、腕に力を込めてほしいな」
旅の旦那様の命令なのだからと自分に言い聞かせ、ぎゅうっとしがみつくと、小さな吐息が聞こえてきた。
ジョシュアの手がミオの背中に周り、強い力が加えられる。密着にミオも吐息を漏らす。
抱擁がこんなに気持ちがいいものだとは、知らなかった。
ジョシュアが顔を上げた。視線を絡まされ、外せなくなる。
ミオの身体に回った腕にさらに力が籠る。しかし、ひざまづいたままジョシュアが見上げてくるので、抱きしめられているというよりすがられている気分だ。
「もっと、求めてもいい?例えば口づけとか?」
「ご、御冗談を。ジョシュア様が汚れます」
「汚れるだなんて、いつも悲しい言い方をするね。僕は、全くそう思わない。ねえ、一瞬触れてくれるだけでもいいんだ」
「本当に、俺なんかの口づけでお気持ちが晴れるんですか?」
「この国の晴天より晴れやかな気分になるよ。ねえ、どうか。旅の雇い主として度を越したお願いだとは分かっている。あとでちゃんと詫びるから」
ジョシュアがサイティ越しにミオの背中や腰を撫ではじめ、ぞわぞわとした感覚が湧き上がる。
甘美な疼きにミオは「ん……」と声を漏らす。すると「ミオさん」とジョシュアが甘い声でねだる。
寝床の世話と言うのがジョシュアのからかいなら、これはきっと戯れだ。
ミオは勇気を出して、かするような口づけをした。
「ああ。ありがとう」
感極まった声を上げて、ジョシュアが深い口づけを返してきた。一瞬、何が起こったのかわからなかった。口の中で柔らかなジョシュアの舌が、ミオの舌を追いかけまわす。
下半身が、滋養剤を含んでピークがきたときのようにムズムズする。
耳に『白』にも性欲があるなんてゾッとする、という主人の声が急に響いた。
押し倒されかけてミオは「駄目ですっ」と叫ぶ。
昨夜の口づけは、水を飲ませるという理由があった。
しかし、今のは、明らかに違う。
ジョシュア様は、どうしてこんなことを。
そして、俺の下半身は何故こんな反応を。
ミオの大声に驚いて、抱きしめるジョシュアの腕が緩んだ。
「ごめん。嬉しくて、調子に乗って……」
謝罪しかけるジョシュアからミオは逃れ、全力で駆けだす。
雄に充血が極まって、走るだけで痛かった。
「あんなのジョシュア様の気持ちが一時的に高ぶっただけだ。なのに、俺の身体は勘違いして反応して」
もう足を進めることができなくなって、木陰で膝を抱えた。
暫く旅は続く。ジョシュアは、ミオが×印をつけた地図を丹念に眺めていたから。
険悪な雰囲気のまま一緒の時間を過ごすのは嫌だった。案内人をミオから別の人間に代えてしまう可能性だってある。
それは嫌だ。
絶対に嫌だ。
逃げてしまったのは大きな失点だ。
だから、どうにかして挽回しないと。
膝を抱えたまま俯いていると、爽やかな匂いに気づいた。といってもジョシュアがたまに香らせる涼し気な花の香りではない。匂い消しに使う草の香りだ。顔を上げると青々とした匂い消しの草が群生していた。
手を伸ばし、ブチブチと草を引き抜いた。茎をちぎる傍から、爽快感のある匂いがする。手のひらに山になるぐらい匂い消しの草を持ってたき火の傍に戻ろうとすると、ジョシュアと鉢合わせした。
「あっ……。さ、先ほどは」
動揺のせいで、謝罪の言葉がうまく出てこない。ジョシュアが手のひらをくっつけて、匂い消しの草を受け取る仕草をした。
「持とうか?この草を、どうしたいの?」
「湯にかけて、に、煮ます」
「わかった。鍋が必要だね」
ジョシュアは、ミオの旅の荷物から新しい鍋を取ってきて、水を張り火にかけた。ミオは湯がぐつぐつを音を立てて煮立つと、そこに匂い消しの草を投入する。
「もっと、腕に力を込めてほしいな」
旅の旦那様の命令なのだからと自分に言い聞かせ、ぎゅうっとしがみつくと、小さな吐息が聞こえてきた。
ジョシュアの手がミオの背中に周り、強い力が加えられる。密着にミオも吐息を漏らす。
抱擁がこんなに気持ちがいいものだとは、知らなかった。
ジョシュアが顔を上げた。視線を絡まされ、外せなくなる。
ミオの身体に回った腕にさらに力が籠る。しかし、ひざまづいたままジョシュアが見上げてくるので、抱きしめられているというよりすがられている気分だ。
「もっと、求めてもいい?例えば口づけとか?」
「ご、御冗談を。ジョシュア様が汚れます」
「汚れるだなんて、いつも悲しい言い方をするね。僕は、全くそう思わない。ねえ、一瞬触れてくれるだけでもいいんだ」
「本当に、俺なんかの口づけでお気持ちが晴れるんですか?」
「この国の晴天より晴れやかな気分になるよ。ねえ、どうか。旅の雇い主として度を越したお願いだとは分かっている。あとでちゃんと詫びるから」
ジョシュアがサイティ越しにミオの背中や腰を撫ではじめ、ぞわぞわとした感覚が湧き上がる。
甘美な疼きにミオは「ん……」と声を漏らす。すると「ミオさん」とジョシュアが甘い声でねだる。
寝床の世話と言うのがジョシュアのからかいなら、これはきっと戯れだ。
ミオは勇気を出して、かするような口づけをした。
「ああ。ありがとう」
感極まった声を上げて、ジョシュアが深い口づけを返してきた。一瞬、何が起こったのかわからなかった。口の中で柔らかなジョシュアの舌が、ミオの舌を追いかけまわす。
下半身が、滋養剤を含んでピークがきたときのようにムズムズする。
耳に『白』にも性欲があるなんてゾッとする、という主人の声が急に響いた。
押し倒されかけてミオは「駄目ですっ」と叫ぶ。
昨夜の口づけは、水を飲ませるという理由があった。
しかし、今のは、明らかに違う。
ジョシュア様は、どうしてこんなことを。
そして、俺の下半身は何故こんな反応を。
ミオの大声に驚いて、抱きしめるジョシュアの腕が緩んだ。
「ごめん。嬉しくて、調子に乗って……」
謝罪しかけるジョシュアからミオは逃れ、全力で駆けだす。
雄に充血が極まって、走るだけで痛かった。
「あんなのジョシュア様の気持ちが一時的に高ぶっただけだ。なのに、俺の身体は勘違いして反応して」
もう足を進めることができなくなって、木陰で膝を抱えた。
暫く旅は続く。ジョシュアは、ミオが×印をつけた地図を丹念に眺めていたから。
険悪な雰囲気のまま一緒の時間を過ごすのは嫌だった。案内人をミオから別の人間に代えてしまう可能性だってある。
それは嫌だ。
絶対に嫌だ。
逃げてしまったのは大きな失点だ。
だから、どうにかして挽回しないと。
膝を抱えたまま俯いていると、爽やかな匂いに気づいた。といってもジョシュアがたまに香らせる涼し気な花の香りではない。匂い消しに使う草の香りだ。顔を上げると青々とした匂い消しの草が群生していた。
手を伸ばし、ブチブチと草を引き抜いた。茎をちぎる傍から、爽快感のある匂いがする。手のひらに山になるぐらい匂い消しの草を持ってたき火の傍に戻ろうとすると、ジョシュアと鉢合わせした。
「あっ……。さ、先ほどは」
動揺のせいで、謝罪の言葉がうまく出てこない。ジョシュアが手のひらをくっつけて、匂い消しの草を受け取る仕草をした。
「持とうか?この草を、どうしたいの?」
「湯にかけて、に、煮ます」
「わかった。鍋が必要だね」
ジョシュアは、ミオの旅の荷物から新しい鍋を取ってきて、水を張り火にかけた。ミオは湯がぐつぐつを音を立てて煮立つと、そこに匂い消しの草を投入する。
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