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第二章
19:朝から、もう旅の案内人の顔だ
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第二章
今朝の起床は、随分ゆっくりだった。
薄暗いうちに起きなければならないミオは、いつも通り目覚めてしまったが、客引きに出ないで横たわっていられることが幸せだった。
すぐ隣にはぐっすり眠るジョシュアがいて、ブランケットの下で規則正しく胸を上下させていた。
ずっとされていた腕枕に気づき、知らず知らずのうちに笑みがこぼれた。
なのに、悲しくもあった。
一泊二日の旅は今日で終わりだ。ジョシュアとの夜もそして朝ももう巡ってこない。
誰かと離れがたいと思うのは、初めてだった。
しばらくじっとしていると、ジョシュアの腕が動いた。寝返りを打ちたいのかもしれないと頭を外すと、ごろりとミオに背中を向ける。
「ミオさん?」
間延びした声が上がり、ジョシュアの手が辺りを探し回る。夢うつつでも、こんな自分を片時も離したくないと言ってくれているようだ。
ミオは嬉しくなって「ジョシュア様。おはようございます」と彼が寝返りを打った方向に回り込んだ。
「おはよう。日の光が随分眩しいね。随分眠ったんだな」
ジョシュアが、眩しそうな顔をする。
「慣れない砂漠の旅で、お疲れになったのでしょう。ラクダの背に乗るのが初めてですと疲れますし、酔う方もいらっしゃいます」
「朝から、もう旅の案内人の顔だ」
ふっと、頬を撫でられた。ジョシュアの唇に目がいき、一瞬で昨夜の出来事が蘇ってきて、ミオは膝立ちのまま後ずさる。
「昨夜は、すすすすみませんでした。ご迷惑をおかけしました。お蔭でこんなに元気です。目覚めて、すぐにお礼を言うべきでした。至らなくて申し訳……」
「仰々しい謝罪もお礼もいらないよ」
ジョシュアは、伸びをしながら起き上がった。
「すぐに朝食になさいますか?それとも先に飲み物を?」
「とりあえず、水浴びでもしようかな」
日が昇り、天幕の中は汗ばむほどの温度になっていた。
確かに水浴びには、うってつけな時間帯だ。
ジョシュアは浜辺を歩きながら夜着を脱ぐと、全裸になってザブンとオアシスに飛び込んでいく。
今朝の起床は、随分ゆっくりだった。
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すぐ隣にはぐっすり眠るジョシュアがいて、ブランケットの下で規則正しく胸を上下させていた。
ずっとされていた腕枕に気づき、知らず知らずのうちに笑みがこぼれた。
なのに、悲しくもあった。
一泊二日の旅は今日で終わりだ。ジョシュアとの夜もそして朝ももう巡ってこない。
誰かと離れがたいと思うのは、初めてだった。
しばらくじっとしていると、ジョシュアの腕が動いた。寝返りを打ちたいのかもしれないと頭を外すと、ごろりとミオに背中を向ける。
「ミオさん?」
間延びした声が上がり、ジョシュアの手が辺りを探し回る。夢うつつでも、こんな自分を片時も離したくないと言ってくれているようだ。
ミオは嬉しくなって「ジョシュア様。おはようございます」と彼が寝返りを打った方向に回り込んだ。
「おはよう。日の光が随分眩しいね。随分眠ったんだな」
ジョシュアが、眩しそうな顔をする。
「慣れない砂漠の旅で、お疲れになったのでしょう。ラクダの背に乗るのが初めてですと疲れますし、酔う方もいらっしゃいます」
「朝から、もう旅の案内人の顔だ」
ふっと、頬を撫でられた。ジョシュアの唇に目がいき、一瞬で昨夜の出来事が蘇ってきて、ミオは膝立ちのまま後ずさる。
「昨夜は、すすすすみませんでした。ご迷惑をおかけしました。お蔭でこんなに元気です。目覚めて、すぐにお礼を言うべきでした。至らなくて申し訳……」
「仰々しい謝罪もお礼もいらないよ」
ジョシュアは、伸びをしながら起き上がった。
「すぐに朝食になさいますか?それとも先に飲み物を?」
「とりあえず、水浴びでもしようかな」
日が昇り、天幕の中は汗ばむほどの温度になっていた。
確かに水浴びには、うってつけな時間帯だ。
ジョシュアは浜辺を歩きながら夜着を脱ぐと、全裸になってザブンとオアシスに飛び込んでいく。
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