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第十五章 アーサー

279:一足早い誓いの口づけだ。承認はここにいる皆だ。

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とエドワードは、バロンの顔を覗き込んで呼びかける。
「どうした?何とか言ってくれ」
それでも、バロンが言葉を発しないので、エドワードはバロンの左手を取って、薬指に口づけた。
「結婚して欲しいと言っているのだが、不服か?」
すると、バロンが俯いた。
「不服とか、不服じゃないとか、そういうレベルの話ではなく……。殿下、駄目ですよ、こんなの」
バロンが涙声になる。
「全員が収まるべきところに収まった。それの何が駄目なんだ?お前は、私と歩む道は茨の道だったとしても、花園の道だと言った。それに初めて抱いた夜、もう逃がさないと言ったはずだが?」
しかし、バロンは押し黙ったままだ。
ティーパーティー会場に怪しい雰囲気が漂い始めたとき、ツツツッとバロンの右手の付け根が通信を伝えてきた。
迷うバロンに「でろ」とエドワードが促す。
「はい。バロンです」
『俺、セドリック。目の調子は?』
バロンは静かに笑う。
「相変わらずだよ」
『ごめん、ずっと謝りたかった。お前が、点眼剤を使う訳がないって思っていた。そこまで、人間に尽くすわけないと。でも、その結果は正反対で……。ゲームの延長みたいに楽しんでいた。オールドドメインのことも、英国暴動のことも。俺はとんでもない人でなしだ』
「いいんだ。結果的に英国暴動が収まったんだから。セドリックのアイカメラが無ければ、死者が多数出ていたと思う。だから、そんなに気に……」
黙って話を聞いていたエドワードが、バロンの右手を取った。そこに話しかける。
「セドリック、私だ」
『その声、殿下?!あのこの度はすみません。あ、あの』
「バロンにすまないと思っているなら、王立細胞研究所に入れ。そして、ダニエルに鍛えてもらえ。お前は自分の才能を持て余しているんだ。その才能を、バロンの目の再生に役立てろ。いいな」
エドワードはバロンの右手の付け根を押して、一方的に通信を終える。
「殿下」
バロンは濡れた目元を拭った後、エドワードの左手を握った。
「俺……俺……」
「ああ、分かった。こういうことだな?」
エドワードは、唇をバロンへ寄せた。
「一足早い誓いの口づけだ。承認はここにいる皆だ。王太子の私とオールドドメインのお前との結婚はスムーズにはいかないだろう。だが、絶対に成し遂げる。約束だ」
「はい」
バロンは涙を零しながら、返事をする。
「なあ、本体。御願いがあるんだけど」
ベリルが急にエドワードへと近寄っていった。
アーサーは、はらはらしながらそれを見守る。
「隣家のドメインだった、チェインとロベルトがまだ戻って来てないんだ。本体がそんなに知名度があるなら、今度の定例会見で……呼びかけてもらえないか?そして王宮にやってきたら……何か、仕事を」
「分かった。ベリル」
アーサーの元に戻りかかけたベリルはバッと振り向く。
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