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第十五章 アーサー
276:ボクも、バロンもベリルもクリストファーも、アーサーの肌友!
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「そうだね」とアーサーは苦笑いした後、続けた。
「現在、クラッシックシティーは外部の人間は出入りが自由に出来ないから、それを今よりも緩やかにしていこう。肝は緩やかだ。街並みを守る意味もあるけど、撤廃はせずに、プレミア状態を守る。そうすれば、閑古鳥が鳴くシーズンが無くなって、安定的な収入に繋がる」
「アーサー、お前、頭が回るなあ」
とダニエルがアーサーの金の髪をくしゃくしゃにした。
「ボクは宝石商っていう商人だよ」
とアーサーは笑った。
「クラッシックシティーとそこに住む人間やオールドドメインは観光資源だから、その部分をどんどんアピールするのもいいね。僕たちは生まれた頃からジャケットやドレスが普通だけど、他の国々の人たちはそうじゃない。貴族の服装や暮らしに憧れる人も多いから、それを観光の目玉としてもいい。そうなると、ホテルがいる。クラッシックシティーにホテルはないから、エドワードはホテル開業許可を貴族に与えてタウンハウスをホテルに改装してもらうのもいいんじゃない?そうなると、従業員がいる。観光ガイドだって必要だ。レストランやカフェだって数が足りなくなるよね」
そして、アーサーはエドワードに向きあった。
「でね、エドワード。寄付の件なんだけど、僕が所有している鉱山の一山を王家に寄付させてもらいたいんだ。そうすればロシアのエセ貴族があれだけ寄付したんだからって、周りの貴族たちはライバル意識で次々と寄付をしてくると思う。僕、今回の英国暴動で、何も活躍してないし」
「馬っ鹿だなあ」
とダニエルが今度はアーサーの背中を叩いた。続いてエドワードとメアリーもアーサーの背中を叩く。
エドワードが言った。
「お前の十五年前の勇気は、英国暴動の終結まで繋がっている」
ダニエルが続けた。
「そうだぞ。それに、鉱山一山寄付って、お前はどんだけ男なんだよ!」
「え、だから、僕、今回は何も……」
アーサーは、幼馴染に褒められる意味が分からなかった。
「殿下―!!」
すっかり出来上がったルシウスが、エドワードにしなだれかかってきた。
タブレットの画面を見せて言う。
そこにはスペイン王宮が映っていた。
「こっちの国を見習ってさ、王宮に大きなカフェを作ってみない?でさ、従業員に、鹿の園の連中を混ぜてもらえない?男娼なんかしたくないけど、あの世界しか知らないって子も多いし。でも、クリストファーっていう受付係がしっかり教育しているから、抜群の礼儀作法で接客可能だよ。なんなら彼を引き抜いてトップに据えたらいいかも。物凄く敏腕だし」
「鹿の園の受付係。なるほど、確かに接客には長けていそうだ」
「クリストファーか」
懐かしい名前を聞いて、アーサーは頬を掻いた。
まだできたばかりの鹿の園で、十五才の寂しいアーサーは彼によく慰めて貰った。
ベックス宮殿でまた再会するのは、恥ずかしいが、懐かしくもある。
「さては、肌友だね?」
と酔っぱらったルシウスが、アーサーを大声でからかって来る。
「ボクも、バロンもベリルもクリストファーも、アーサーの肌友!」
すると、バロンは赤面し、訳のわかっていないベリルが「肌友って楽しそうだな!」と朗らかに笑う。
「違う、ベリル、違う!」
「現在、クラッシックシティーは外部の人間は出入りが自由に出来ないから、それを今よりも緩やかにしていこう。肝は緩やかだ。街並みを守る意味もあるけど、撤廃はせずに、プレミア状態を守る。そうすれば、閑古鳥が鳴くシーズンが無くなって、安定的な収入に繋がる」
「アーサー、お前、頭が回るなあ」
とダニエルがアーサーの金の髪をくしゃくしゃにした。
「ボクは宝石商っていう商人だよ」
とアーサーは笑った。
「クラッシックシティーとそこに住む人間やオールドドメインは観光資源だから、その部分をどんどんアピールするのもいいね。僕たちは生まれた頃からジャケットやドレスが普通だけど、他の国々の人たちはそうじゃない。貴族の服装や暮らしに憧れる人も多いから、それを観光の目玉としてもいい。そうなると、ホテルがいる。クラッシックシティーにホテルはないから、エドワードはホテル開業許可を貴族に与えてタウンハウスをホテルに改装してもらうのもいいんじゃない?そうなると、従業員がいる。観光ガイドだって必要だ。レストランやカフェだって数が足りなくなるよね」
そして、アーサーはエドワードに向きあった。
「でね、エドワード。寄付の件なんだけど、僕が所有している鉱山の一山を王家に寄付させてもらいたいんだ。そうすればロシアのエセ貴族があれだけ寄付したんだからって、周りの貴族たちはライバル意識で次々と寄付をしてくると思う。僕、今回の英国暴動で、何も活躍してないし」
「馬っ鹿だなあ」
とダニエルが今度はアーサーの背中を叩いた。続いてエドワードとメアリーもアーサーの背中を叩く。
エドワードが言った。
「お前の十五年前の勇気は、英国暴動の終結まで繋がっている」
ダニエルが続けた。
「そうだぞ。それに、鉱山一山寄付って、お前はどんだけ男なんだよ!」
「え、だから、僕、今回は何も……」
アーサーは、幼馴染に褒められる意味が分からなかった。
「殿下―!!」
すっかり出来上がったルシウスが、エドワードにしなだれかかってきた。
タブレットの画面を見せて言う。
そこにはスペイン王宮が映っていた。
「こっちの国を見習ってさ、王宮に大きなカフェを作ってみない?でさ、従業員に、鹿の園の連中を混ぜてもらえない?男娼なんかしたくないけど、あの世界しか知らないって子も多いし。でも、クリストファーっていう受付係がしっかり教育しているから、抜群の礼儀作法で接客可能だよ。なんなら彼を引き抜いてトップに据えたらいいかも。物凄く敏腕だし」
「鹿の園の受付係。なるほど、確かに接客には長けていそうだ」
「クリストファーか」
懐かしい名前を聞いて、アーサーは頬を掻いた。
まだできたばかりの鹿の園で、十五才の寂しいアーサーは彼によく慰めて貰った。
ベックス宮殿でまた再会するのは、恥ずかしいが、懐かしくもある。
「さては、肌友だね?」
と酔っぱらったルシウスが、アーサーを大声でからかって来る。
「ボクも、バロンもベリルもクリストファーも、アーサーの肌友!」
すると、バロンは赤面し、訳のわかっていないベリルが「肌友って楽しそうだな!」と朗らかに笑う。
「違う、ベリル、違う!」
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