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第十五章 アーサー
273:ここは空気を呼んで、喜ぶところだろう、ルシウス君?殿下、ボクらのためにありがとうって言うところだろう?
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「もしかして、アン女王の願いのことを思い出している?彼女、『我々は増殖する』って願いを語ったって君、真っ青な顔で言ったよね。その時以来、君はアン女王のことをエドワードとは違った意味で拒絶してきたような気がするよ」
「どうかな」
とぼけようとするダニエルにアーサーは口を開いた。
「エドワードは知らないだろうけれど、アン女王は、幼い僕たちにとって憧れの人だった。その彼女の核細胞データを使ったオールドドメインが人間を不幸にするなんて、泣けてくる。あっては欲しくないよ。ずっと、人間もオールドドメインも平和でありたい。僕は甘いのかな?」
すると、ダニエルに肩を叩かれた。
出ない答えを考えてもしょうがないというような、強い叩き方だった。
「ここで、ずっと立ち話をしていてもしょうがない。行こうぜ」
「そうだね」
アーサーはダニエルとともに、ティーパーティーの会場に向かって歩きは始めた。
「よう、エドワード。お招きありがとう」
ダニエルは、シャンパンやお菓子が入ったバスケットをエドワードに渡す。
「空になったバスケットは、メアリーに返してやってくれ」
すると、シートに座って小皿にサンドイッチなどを用意していたメアリーが目を輝かせる。
「ダニエル!私ね、新作のマフィンを持って来たの!帰りに持って行って」
「うへえ。メアリー。この前、貰ったマフィン、ラボのスタッフ一同、美味しく頂いたばかりだよう」
とダニエルがさきほどの沈んだ気持ちを吹き飛ばすかのように、大げさな悲鳴を上げた。
皆が、地面に敷かれた大きな布の上に座った。
アンを中心に、左側にエドワードとバロン、右側には、メアリー、ダニエルとルシウス。そしてアンと向き合う形で、アーサーとベリルが座る。
今日のアンは、黒いドレスにベール姿ではなかった。
在りし日のアン王妃のように、春の日にぴったりの若草色のドレスを着て、顔をきちんと出している。
いつもこわばっている顔は、陽気のせいか、少し緩んでいた。
シャンパンやワインの栓がポンポンと抜かれ、グラスに注がれる。
「乾杯」
と皆で言って、春の柔らかな日差しの中、まずアルコールを楽しんだ。
「昼酒サイコウッッッ―!!」
ダニエルにもたれながら、ルシウスがグイグイ、シャンパンを開けていく。
「最初からピッチが速えーよ。しかも朝からお前、何も食べてないだろう?酔っぱらうとタチが悪いんだから、そこんとこ自覚しろ!」
とダニエルがルシウスの口に生ハムが巻かれた小さなパンを突っ込みながら叱る。
ベリルは、久しぶり会ったバロンと楽しそうにおしゃべりをし、アンはシャンパングラスを片手に坐って春の日差しを楽しんでいる。
エドワードが言った。
「三年後、私が国王となると同時に、新ドメイン法一条が撤廃される運びになりそうだ」
「おっ!!バロン、ベリル、ルシウス、よかったな」
とダニエルがシャンパングラスを掲げる。
ほろ酔いのルシウスが、ダニエルにもたれ掛かりながら言った。
「僕たち三体は、あんまり変わらないと思うけど」
「ここは空気を呼んで、喜ぶところだろう、ルシウス君?殿下、ボクらのためにありがとうって言うところだろう?」
とダニエルが慌てて説明するが、ルシウスはバスケットに入ったボトルの中から新しいシャンパンを物色するのに夢中で聞いていない。
エドワードが、また口を開いた。
「どうかな」
とぼけようとするダニエルにアーサーは口を開いた。
「エドワードは知らないだろうけれど、アン女王は、幼い僕たちにとって憧れの人だった。その彼女の核細胞データを使ったオールドドメインが人間を不幸にするなんて、泣けてくる。あっては欲しくないよ。ずっと、人間もオールドドメインも平和でありたい。僕は甘いのかな?」
すると、ダニエルに肩を叩かれた。
出ない答えを考えてもしょうがないというような、強い叩き方だった。
「ここで、ずっと立ち話をしていてもしょうがない。行こうぜ」
「そうだね」
アーサーはダニエルとともに、ティーパーティーの会場に向かって歩きは始めた。
「よう、エドワード。お招きありがとう」
ダニエルは、シャンパンやお菓子が入ったバスケットをエドワードに渡す。
「空になったバスケットは、メアリーに返してやってくれ」
すると、シートに座って小皿にサンドイッチなどを用意していたメアリーが目を輝かせる。
「ダニエル!私ね、新作のマフィンを持って来たの!帰りに持って行って」
「うへえ。メアリー。この前、貰ったマフィン、ラボのスタッフ一同、美味しく頂いたばかりだよう」
とダニエルがさきほどの沈んだ気持ちを吹き飛ばすかのように、大げさな悲鳴を上げた。
皆が、地面に敷かれた大きな布の上に座った。
アンを中心に、左側にエドワードとバロン、右側には、メアリー、ダニエルとルシウス。そしてアンと向き合う形で、アーサーとベリルが座る。
今日のアンは、黒いドレスにベール姿ではなかった。
在りし日のアン王妃のように、春の日にぴったりの若草色のドレスを着て、顔をきちんと出している。
いつもこわばっている顔は、陽気のせいか、少し緩んでいた。
シャンパンやワインの栓がポンポンと抜かれ、グラスに注がれる。
「乾杯」
と皆で言って、春の柔らかな日差しの中、まずアルコールを楽しんだ。
「昼酒サイコウッッッ―!!」
ダニエルにもたれながら、ルシウスがグイグイ、シャンパンを開けていく。
「最初からピッチが速えーよ。しかも朝からお前、何も食べてないだろう?酔っぱらうとタチが悪いんだから、そこんとこ自覚しろ!」
とダニエルがルシウスの口に生ハムが巻かれた小さなパンを突っ込みながら叱る。
ベリルは、久しぶり会ったバロンと楽しそうにおしゃべりをし、アンはシャンパングラスを片手に坐って春の日差しを楽しんでいる。
エドワードが言った。
「三年後、私が国王となると同時に、新ドメイン法一条が撤廃される運びになりそうだ」
「おっ!!バロン、ベリル、ルシウス、よかったな」
とダニエルがシャンパングラスを掲げる。
ほろ酔いのルシウスが、ダニエルにもたれ掛かりながら言った。
「僕たち三体は、あんまり変わらないと思うけど」
「ここは空気を呼んで、喜ぶところだろう、ルシウス君?殿下、ボクらのためにありがとうって言うところだろう?」
とダニエルが慌てて説明するが、ルシウスはバスケットに入ったボトルの中から新しいシャンパンを物色するのに夢中で聞いていない。
エドワードが、また口を開いた。
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