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第十二章 ベリル

243:アーサーは、ベリルに手を出してこないだろうから、積極的にいけって

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王宮からの帰り道、アーサーとベリルは馬車の中でタブレットを見ていた。
「うわあ。エドワードの恩赦をバロンが回避した」
とアーサーは声を上げる。
そして、宝石の入った銀の箱を軽く叩いた。
「宝石をバロンにプレゼントしないと言った時点で、何か考えているなと思ったけれど、恩赦だったとは。でも、バロンの方が一枚上手だったね」
「本体、ポカーンとしていた」
ベリルが答えると、アーサーはおかしそうに笑う。
「ダニエルが見ていたら、大爆笑している」
ベリルはアーサーの肩にもたれた。
「ダニエルとルシウス、大丈夫かな?」
「そうだね。ちょっとそれは心配だ」
「首相との過去のこと、一言もダニエルに話さなかったのはなんでだろう?オレだったら苦しくて堪らないと思う」
「鹿の園の歴代最長の王で、美しくて強そうな彼が実は繊細で純粋だって誰も、気付いていなかったんだよね。きっと、ダニエルでさえも。だから、ダニエルはルシウスを嫌いになったわけじゃなくて、なんというか、自分に怒っているんじゃないかなあ」
「早く、あの二人の馬鹿話が聞きたい」
「僕も。二人組のコメディアンみたいだものね」
沈黙が訪れた。
アーサーが優しい目でベリルを見つめている。
「本当に、ベリルが無事でよかった」
「アーサーは、日に一回はそう言う。確かに、相談もせずに危険な場所に飛び込んだのは悪かったよ。けど、十二才のアーサーの勇気を知って、じゃあ、オレは今回、本体を援護してやらなきゃいけないって思ったんだ」
「けど、僕が君を心配するのは、息を吸って吐くぐらい自然なことだから諦めて」
「知っている」
ベリルはクスリと笑う。
「これから、どうするんだ?真っ直ぐ館?」
ベリルは、窓を開ける。
暴動の後は消え去ったクラッシックシティーの景色が表れる。
「いや、貸金庫に寄ってこれを預ける」
「なーんだ」
「ん?」
「王宮にいたとき、一緒に寝るぐらいしかできなかったじゃないか。アーサーは別室に籠って、宝石のデザインの仕事をかかりっきりでしていただろう?あと、バロンから相談を持ち掛けられて、ずっと時間をとっていた。オレ、結構寂しかったんだけどなー。けど、人目があるから、アーサー我慢してるんだって自分に言い聞かせていた。館に直行して、すぐにでもするだから大丈夫って」
語るベリルに、アーサーはあっけにとられている。
「する……って、何を?」
「ルシウスから、やり方はいろいろ聞いた。アーサーは、ベリルに手を出してこないだろうから、積極的にいけって」
「今すぐ忘れてっ!!」
アーサーは焦り、ベリルはクスクスと笑った。
貸金庫に行くと、アーサーは棚の高い位置に銀の箱を戻した。
ベリルは、中央のソファーに座ってじっとその様子を見ていた。
自分の名前がついた、緑色と黄色の宝石。
そのどちらかが欲しい。
そして、残りをアーサーに付けて欲しい。
そう言いたいが、一度断られているから勇気が出せない。
アーサーが、貸金庫の壁にかかった時計を見た。
「館に戻るのは夕方でもいいかな?」
「うん。でも、大分時間があるけど?」
すると、アーサーが優しい笑顔を向ける。
「僕だってベリルと二人きりでいたかったんだ。だから早めに王宮を」
「そっか」
「君と、クラッシックシティーを手を繋いで歩いたり、お茶をしてみたいなと思って」
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