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第十一章 ラリー
238:うるさいなあ、ラリーは。君に関係ないことだろ?
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「ああ」
アーサーが頷くと、「いいよ。本体がそう言うなら、遊びに来てやる」とベリルがエドワードの背中をバシッと叩いて、廊下に向かって駆けていく。
「本当に、これ、持って帰ってしまっていいの?」
アーサーがエドワードに銀の箱を見せた。
そこに、何が入っているのか、ラリーは知らない。
「構わない」
「バロンにプレゼントするものとばかり思っていたのに、僕の勘、外れたかな?」
「そうだな。その予定はない」
アーサーは銀の箱を掲げ、「分かったよ。僕が保管しておく。必要になったらいつでも言って」と言いながら部屋から去っていく。
「それじゃあ、私も行くわ」
と、メアリーも立ち上がる。
「何だ、まだ、この部屋に居座ると思ったのに。館に帰るのか?」
「……わからないわ」
急にメアリーの声のトーンが下がる。
そして、自分のタブレットを乱暴に持つと、ふいっと廊下に出て行ってしまった。
「さっきはあれほど、元気だったのに、おかしな奴だ」
エドワードはメアリーを追いかけ扉を出かけ、振り向いて言った。
「ラリー。頼むぞ」
「あ、はい」
部屋には、もうルシウスしかいなかった。
ルシウスは、一人掛けの椅子に座ったまま、タブレットをいじくっている。
「君は、ダニエル元伯爵の元に帰らないの?」
「帰れるわけないじゃん」
「『ボクの悲劇日記』もバラ撒かれることなく、配送ドローンも全羽回収できたんだからいいじゃないか。まあ、ダニエル元伯爵は、カードの請求金額に多少腰を抜かしたかもしれないけれどさ」
「それは大丈夫。幸せの配送ドローンとしてオークションに出すことにしたから」
「ちゃっかりしてんなあ」
「お褒め頂き光栄です。ていうか、ラリー。USB一個盗んだだろ?サーシャから聞いたぞ?」
「彼、バラしたの?でも、僕はもう持っていないよ。多分、殿下が保管していると思う」
「ああ。君がハイウィカムにサーシャの救出に向かった後、みんなで鑑賞会をしたんだって。失礼しちゃうよ」
「クラッシックシティーの住民にバラ撒く気でいたくせに?」
「他人がボクのことをどう思おうが関係ない。けど、知っている相手にボクの本心を知られるのはやっぱり辛い」
ルシウスはそう言いながら、タブレットを握りしめる。
「やっぱり、ダニエル元伯爵の館に帰れば?」
「うるさいなあ、ラリーは。君に関係ないことだろ?」
「そうかもしれないけれど、このまま関係が途切れて、孤独を選ぶのはいい選択肢とはいえないよ」
すると、ルシウスがタブレットから視線を外しチラリとラリーの顔を見る。
「それって、経験談?」
「そう」
「ふうん」
気の無い返事をしたルシウスは、暫く無言だった。だが、やがてボソッと口を開いた。
「殿下とさ、事件以来きちんと話をした?」
「……いや」
アーサーが頷くと、「いいよ。本体がそう言うなら、遊びに来てやる」とベリルがエドワードの背中をバシッと叩いて、廊下に向かって駆けていく。
「本当に、これ、持って帰ってしまっていいの?」
アーサーがエドワードに銀の箱を見せた。
そこに、何が入っているのか、ラリーは知らない。
「構わない」
「バロンにプレゼントするものとばかり思っていたのに、僕の勘、外れたかな?」
「そうだな。その予定はない」
アーサーは銀の箱を掲げ、「分かったよ。僕が保管しておく。必要になったらいつでも言って」と言いながら部屋から去っていく。
「それじゃあ、私も行くわ」
と、メアリーも立ち上がる。
「何だ、まだ、この部屋に居座ると思ったのに。館に帰るのか?」
「……わからないわ」
急にメアリーの声のトーンが下がる。
そして、自分のタブレットを乱暴に持つと、ふいっと廊下に出て行ってしまった。
「さっきはあれほど、元気だったのに、おかしな奴だ」
エドワードはメアリーを追いかけ扉を出かけ、振り向いて言った。
「ラリー。頼むぞ」
「あ、はい」
部屋には、もうルシウスしかいなかった。
ルシウスは、一人掛けの椅子に座ったまま、タブレットをいじくっている。
「君は、ダニエル元伯爵の元に帰らないの?」
「帰れるわけないじゃん」
「『ボクの悲劇日記』もバラ撒かれることなく、配送ドローンも全羽回収できたんだからいいじゃないか。まあ、ダニエル元伯爵は、カードの請求金額に多少腰を抜かしたかもしれないけれどさ」
「それは大丈夫。幸せの配送ドローンとしてオークションに出すことにしたから」
「ちゃっかりしてんなあ」
「お褒め頂き光栄です。ていうか、ラリー。USB一個盗んだだろ?サーシャから聞いたぞ?」
「彼、バラしたの?でも、僕はもう持っていないよ。多分、殿下が保管していると思う」
「ああ。君がハイウィカムにサーシャの救出に向かった後、みんなで鑑賞会をしたんだって。失礼しちゃうよ」
「クラッシックシティーの住民にバラ撒く気でいたくせに?」
「他人がボクのことをどう思おうが関係ない。けど、知っている相手にボクの本心を知られるのはやっぱり辛い」
ルシウスはそう言いながら、タブレットを握りしめる。
「やっぱり、ダニエル元伯爵の館に帰れば?」
「うるさいなあ、ラリーは。君に関係ないことだろ?」
「そうかもしれないけれど、このまま関係が途切れて、孤独を選ぶのはいい選択肢とはいえないよ」
すると、ルシウスがタブレットから視線を外しチラリとラリーの顔を見る。
「それって、経験談?」
「そう」
「ふうん」
気の無い返事をしたルシウスは、暫く無言だった。だが、やがてボソッと口を開いた。
「殿下とさ、事件以来きちんと話をした?」
「……いや」
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