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第十章 バロン
234:お前の唇はしょっぱいな
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バロンも急いで、階段を下って行こうとした。
だが、平衡感覚が取れず、足を踏み外し、転びかける。
すばやく数段飛ばしで上がって来たエドワードが両手を広げた。
バロンはもう落ちることに逆らわず、その腕の中に飛び込んで行く。
「殿下っ。殿下っ」
もう、それ以上語ることができなくて、わあわあとバロンは泣き始めた。
鹿の園では万年最下位の騎士クラス。火傷を負って逃げ出した違法娼館でも同じく最低ランク。
愛されたのは利用されたためで、今まで本当の愛というものを知らなかった。
たぶん、愛とは、相手の腕の中で思いっきり手放しで泣けるというような些細なことなのかもしれない。
「無事でよかった」
エドワードは、堪えきれないというように、バロンの顔を撫でまわす。
火傷のただれた皮膚の部分も、白濁した目の周りも構いはしない。
「お前、左目が、真っ白だ。アイカメラのせいだな。痛くはないか?大丈夫か?」
バロンの左目から垂れる涙を唇で掬いながら言う。
「献身と無謀をはきちがえるな」
そう言われて、バロンは泣きながら吹き出した。
「何故、笑う?」
「だって、ラリーさんが絶対そう言って殿下は怒るって。見事にその通りで」
「王立警ら隊のでの口癖だ。あいつが多分一番、私に言われている」
エドワードは、強くバロンを抱きしめてきた。
「本当に無事でよかった。ケビンのところに行ってしまったかと、一瞬、不安になった」
大勢の人間やオールドドメインが見ているが、全く目に入っていない。
それは、バロンも同じだった。
目を見つめられ、自然と瞼を閉じていた。
唇に温かい感触がある。
「お前の唇はしょっぱいな」
とエドワードが笑って、もう一度、口づけてきた。
だが、平衡感覚が取れず、足を踏み外し、転びかける。
すばやく数段飛ばしで上がって来たエドワードが両手を広げた。
バロンはもう落ちることに逆らわず、その腕の中に飛び込んで行く。
「殿下っ。殿下っ」
もう、それ以上語ることができなくて、わあわあとバロンは泣き始めた。
鹿の園では万年最下位の騎士クラス。火傷を負って逃げ出した違法娼館でも同じく最低ランク。
愛されたのは利用されたためで、今まで本当の愛というものを知らなかった。
たぶん、愛とは、相手の腕の中で思いっきり手放しで泣けるというような些細なことなのかもしれない。
「無事でよかった」
エドワードは、堪えきれないというように、バロンの顔を撫でまわす。
火傷のただれた皮膚の部分も、白濁した目の周りも構いはしない。
「お前、左目が、真っ白だ。アイカメラのせいだな。痛くはないか?大丈夫か?」
バロンの左目から垂れる涙を唇で掬いながら言う。
「献身と無謀をはきちがえるな」
そう言われて、バロンは泣きながら吹き出した。
「何故、笑う?」
「だって、ラリーさんが絶対そう言って殿下は怒るって。見事にその通りで」
「王立警ら隊のでの口癖だ。あいつが多分一番、私に言われている」
エドワードは、強くバロンを抱きしめてきた。
「本当に無事でよかった。ケビンのところに行ってしまったかと、一瞬、不安になった」
大勢の人間やオールドドメインが見ているが、全く目に入っていない。
それは、バロンも同じだった。
目を見つめられ、自然と瞼を閉じていた。
唇に温かい感触がある。
「お前の唇はしょっぱいな」
とエドワードが笑って、もう一度、口づけてきた。
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