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第十章 バロン
225:保護を願い出た者はどんなオールドドメインでも歓迎するよ
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水面に波紋が広がっていくように、オールドドメイン達が傍からいなくなり、階段への道ができた。
「ケビン首相に、殿下のヴァレットのバロンと、殿下の複製のベリルが保護を願い出ている」
ラリーの叫び声に、エドワードの会見で、手持ち無沙汰にしていたマスコミ各社の取材班が一斉に、右から左から駆け寄って来ようとする。
「まだ、ドメインチェックも済んでいない。テロをもくろみ、体内に爆弾を仕込んでいる可能性だってある。傍に寄るな」
とラリーが一喝する。
「さあ、さっさと階段を上がれ」
銃口を上下に上げラリーが合図をする。
その左右では、テレビ局の女性リポーターが、少し興奮気味にリポートを始める。
「クラッシックシティーTVです。こちら、議会前。エドワード王太子殿下の緊急会見が続いている最中、前代未聞のことが起りました。殿下のヴァレットのバロンと、殿下の複製のベリルが、ケビン首相に保護を願い出ています。一体、王宮で彼らはエドワード王太子殿下からどんな扱いを受けたのでしょうか?やはり、エドワード王太子殿下のドメイン嫌悪は筋金入りなんでしょうか」
彼女のリポートを聞きながら、バロンは階段の最上部にほど近いところまで来ていた。
振り返ると、一本道の先に、ベックス宮殿が見える。
古い建物が両側に並び、緊急放送用に壁に埋め込まれたテレビが、大画面でエドワードを映していた。
王宮の者がタブレットをエドワードに渡して、耳打ちをしている。
タブレットを見たエドワードは、静かに顔を上げて、一点を凝視していた。
その顔に感情はない。
裏切られたと思っているのだろうか?
それとも、どうして勝手に動いたと怒っているのだろうか?
今すぐ傍に飛んでいって、抱き付いて謝りたい。
バロンは、壁に映るエドワードの大画面を見ながら、最後の階段を上がる。
段を踏み外して、転びかけた。
点眼薬をさした左目は、全く何も映し出しておらず、乳白色の世界が広がっていた。
再び、大画面を見るとそこは、真っ黒になっていた。
また、会見場でアクシデントが起ったらしかった。
「保護を願い出た者はどんなオールドドメインでも歓迎するよ」
議会の入り口に出てきたケビンは、両手を広げてバロンとベリルを歓迎した。
そして、二体の頬をピタピタと触ってくる。
「バロン。君は僕がエドワード王太子殿下の元を訪れたとき、とても居心地が悪そうだった。ベリル、君は勲章授与式のとき、エドワード王太子殿下にとても反抗的だった。あのとき、無理にでも保護してやるべきだった」
ケビンは芝居がかった口調で、話し続ける。
集まって来たテレビ局のリポーターたちが「ケビン首相!ケビン首相」と繰り返し、カメラマンが一斉にフラッシュをたく。
バロンにとってその光は、左目に銃弾を撃ち込まれているような辛さだった。
「ケビン首相。その二体はドメインチェックが済んでいません。早く中で、チェックを」
「分かった。さあ、バロン、ベリル、議会の中へ、ここなら、もう安全だ」
ケビンは、二体を招き入れる。
ラリーと同じアサルトスーツを着た、特殊警備兵が寄って来て、バロンとベリルをドメインチェッカーで確認していく。
顔にドメインチェッカーを当てられたとき、バロンの心臓は普段の数倍早くなった。ここでバレたら一巻の終わりだ。
「ケビン首相に、殿下のヴァレットのバロンと、殿下の複製のベリルが保護を願い出ている」
ラリーの叫び声に、エドワードの会見で、手持ち無沙汰にしていたマスコミ各社の取材班が一斉に、右から左から駆け寄って来ようとする。
「まだ、ドメインチェックも済んでいない。テロをもくろみ、体内に爆弾を仕込んでいる可能性だってある。傍に寄るな」
とラリーが一喝する。
「さあ、さっさと階段を上がれ」
銃口を上下に上げラリーが合図をする。
その左右では、テレビ局の女性リポーターが、少し興奮気味にリポートを始める。
「クラッシックシティーTVです。こちら、議会前。エドワード王太子殿下の緊急会見が続いている最中、前代未聞のことが起りました。殿下のヴァレットのバロンと、殿下の複製のベリルが、ケビン首相に保護を願い出ています。一体、王宮で彼らはエドワード王太子殿下からどんな扱いを受けたのでしょうか?やはり、エドワード王太子殿下のドメイン嫌悪は筋金入りなんでしょうか」
彼女のリポートを聞きながら、バロンは階段の最上部にほど近いところまで来ていた。
振り返ると、一本道の先に、ベックス宮殿が見える。
古い建物が両側に並び、緊急放送用に壁に埋め込まれたテレビが、大画面でエドワードを映していた。
王宮の者がタブレットをエドワードに渡して、耳打ちをしている。
タブレットを見たエドワードは、静かに顔を上げて、一点を凝視していた。
その顔に感情はない。
裏切られたと思っているのだろうか?
それとも、どうして勝手に動いたと怒っているのだろうか?
今すぐ傍に飛んでいって、抱き付いて謝りたい。
バロンは、壁に映るエドワードの大画面を見ながら、最後の階段を上がる。
段を踏み外して、転びかけた。
点眼薬をさした左目は、全く何も映し出しておらず、乳白色の世界が広がっていた。
再び、大画面を見るとそこは、真っ黒になっていた。
また、会見場でアクシデントが起ったらしかった。
「保護を願い出た者はどんなオールドドメインでも歓迎するよ」
議会の入り口に出てきたケビンは、両手を広げてバロンとベリルを歓迎した。
そして、二体の頬をピタピタと触ってくる。
「バロン。君は僕がエドワード王太子殿下の元を訪れたとき、とても居心地が悪そうだった。ベリル、君は勲章授与式のとき、エドワード王太子殿下にとても反抗的だった。あのとき、無理にでも保護してやるべきだった」
ケビンは芝居がかった口調で、話し続ける。
集まって来たテレビ局のリポーターたちが「ケビン首相!ケビン首相」と繰り返し、カメラマンが一斉にフラッシュをたく。
バロンにとってその光は、左目に銃弾を撃ち込まれているような辛さだった。
「ケビン首相。その二体はドメインチェックが済んでいません。早く中で、チェックを」
「分かった。さあ、バロン、ベリル、議会の中へ、ここなら、もう安全だ」
ケビンは、二体を招き入れる。
ラリーと同じアサルトスーツを着た、特殊警備兵が寄って来て、バロンとベリルをドメインチェッカーで確認していく。
顔にドメインチェッカーを当てられたとき、バロンの心臓は普段の数倍早くなった。ここでバレたら一巻の終わりだ。
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