上 下
223 / 281
第十章 バロン

222:殿下、まさか

しおりを挟む
中にはライフル銃が入っている。
「ふん。ドイツサワー社のスキャンディックね。王立警ら隊よりいいのを使っているなあ」
ラリーはぶつぶついいながら、スコープを取り付け、銃弾を詰め込んでいく。
かなり、機嫌が悪そうだ。
「言いたいことがあるだけど、いいかな」
ライフル銃の準備を終えたラリーが一息ついてから言った。
「はい」
「うん」
返事をすると、ラリーはライフル銃を逆さに、持ち手の部分で、バロンとベリルの頭を順々に叩いて来た。
ゴチンと音がして、目から火花が散る。
「ハイウィカムの山小屋に行ったら、そこはもぬけの殻でサーシャには結局会えず仕舞い。帰途についている最中、セドリックっていう正体不明のゲーマーから通信があった」
ラリーは、ますます機嫌を悪くする。
「僕は好きじゃないね、彼。まるでゲームのコマみたいに君らを動かせることに、粋がっている。本当、オールドドメインを支配する人間って感じだ。彼が言うには、ケビン首相の元に二体で乗り込もうと考えたんだって?馬鹿じゃないの?ルシウスの二の舞になりたいのかい?殿下は、アン女王が重篤な状態でまいっているっていうのに」
「だから、行動に出ようとしたんじゃないか」
ベリルは痛そうに額を押えながら、唇を尖らせる。
「首相はオレたちが、過去の記憶を持っていると知ったら、絶対に邪魔に思う。、懐に飛び込んでいけば、スクリーニングしようとする。うまく突きまわせば、ドメイン共存っていうスタンスが真っ赤な嘘だって分かって、それを証拠映像に残せれば」
「うまく突きまわせば、ね」
ラリーがまた、ベリルを持ち手の部分で叩く。
「アイタッ」
「君たち二体じゃ無理だ」
「無謀なのは分かっています。でも、ほんの少しでも、殿下のお役に立てたらと思って」
ベリルに加勢すると、バロンもまた叩かれた。
「お役じゃなくて、足引っ張りの間違いでしょ。殿下のヴァレットと殿下の複製が揃ってケビン首相の元に走ったら、世間はどう思う?よっぽど殿下に嫌なことをされたんだなって、ますますのドメイン嫌悪派のイメージが強くなる」
「ですが、今のタイミングじゃないと……」
タブレットを見ると、まばゆいフラッシュが散っていた。
壇上に眼鏡姿の女性が上がって来て挨拶をする。
『皆さま、お待たせしました。司会は公営放送ABCテレビのアリスです。では、エドワード殿下の緊急会見を行わせていただきます。では、エドワード王太子殿下どうぞ』
促されたエドワードは、白いクロスが長机のマイクに口を近づける。
『エドワードだ。急な会見に足を運んでもらい、感謝する。緊急で会見を開かせてもらったのは、とあるドメインのことだ』
「殿下、まさか」
とバロンは息を飲む。
バロンは、エドワードは会見では、アンがドメインであることを公表しないと思っていた。
だが、バロンのその予想は大きく外れた。
『三年半前に、王立細胞研究所から機密データが盗まれた事件を覚えているだろうか?鹿の園バロンが盗み出し、私は彼をセブノークスの寂れた違法娼館で発見した。彼は機密データを隠しずっと隠し持っていたわけだが、一時期、彼の手元を離れていた時期がある。その間に、私の核細胞データを利用したドメインが不正に造られた。生きている人間の核
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

ニケの宿

水無月
BL
危険地帯の山の中。数少ない安全エリアで宿を営む赤犬族の犬耳幼子は、吹雪の中で白い青年を拾う。それは滅んだはずの種族「人族」で。 しっかり者のわんことあまり役に立たない青年。それでも青年は幼子の孤独をゆるやかに埋めてくれた。 異なる種族同士の、共同生活。 ※本作はちいさい子と青年のほんのりストーリが軸なので、過激な描写は控えています。バトルシーンが多めなので(矛盾)怪我をしている描写もあります。苦手な方はご注意ください。 『BL短編』の方に、この作品のキャラクターの挿絵を投稿してあります。自作です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...