【完結】王と伯爵に捧げる七つの指輪

遊佐ミチル

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第十章 バロン

220:俺とだけ、繋がる。ドキドキするだろ?

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「また、このパターンかよ」と尻を擦りながら、立ち上がりかけたベリルは「しゃ、喋った」とさらに驚く。
スワンは、バルコニーの細い手すりで巨体を揺すりながら、器用にステップを踏んでみせる。
「どうだ、すごいだろう。俺はセドリック。お前はベリルだろう?よろしく」
セドリックは羽を手代わりに差し出して来て、ベリルはこわごわとそれを握った。
「ほんじゃ、時間も押しているところだから、はじめるぜ」
スワンは口を開いた。
舌の上に鍵が乘っている。
「この鍵を使って、錠を開ければいいんだね」
『そうだ。中には、真っ赤な色をした疑似スクリーニング用アンプルが三本。そして、点眼薬のボトルと紫色のアンプルが1本、指示書も入っている』
鍵を使って錠を開け、中身を確認すると、セドリックの言った通りだった。
『鍵をスワンの口にもどしてくれ』
言う通りにすると、スワンはゴクンと喉を鳴らして鍵を飲み込み、バルコニーの手すりの上で反転した。両幅二メートルはありそうな羽を広げると、あっという間に飛び立っていく。
数秒後、ブウウウーンと音がして、いかにも機械といった武骨な監視ドローンが数台、スワンを追いかけていく。
『ヤベッ。意外と追っ手が早く反応した』
今度は、バロンの右の付け根からセドリックの声が聞こえてきた。
『音源を切り替えた。部屋を出て、王宮の外へ』
指示され廊下を走りながら、バロンは聞く。
「大丈夫なの?俺らに指示を与えつつ、監視ドローンから逃げるだなんて」
すると、明るい声が帰って来た。
『大丈夫、大丈~夫!!俺、同時に四つまでだったら、完璧にこなせるし。むしろ、燃える』
「出た、完璧」
『なんか、言ったか?』
「いや、何も」
『まあ、いい。走りながら報告聞いてくれ。変人サーシャとは無事、連絡が取れた。あまりにもハイウィカムの天候が悪すぎて、別の場所から飛ばそうと移動したらしい』
「飛ばしてくれるって?」
『ああ。オレが連絡を取ったときは、壊れるだのなんだのウダウダ言っていたが、勝負をしろ、腰抜けって言ったら、乘って来た。今は、配送ドローンを数百のグループに分けて、クラッシックシティーに向かって飛ばしている最中だ』
「よかった。ルシウスこれで記憶が守れそうだ」
「本当に、お騒がせルシウスめ」
バロンとベリルは、セドリックの報告を聞いて胸をなで下ろす。
『箱に入っていた点眼液は、アイカメラといって、今、開発段階の最新撮影機器だ。元々は、失明者に使うものらしいが、裏の世界では、どんなセキュリティーチェックも通り抜けて盗撮・盗聴ができる機器だと注目されている。なんせ、自分の臓器が機器になるんだもんな。今のセキュリティーシステムでは、発覚しようがない。紫のアンプルは、増設した右のデータ孔につっこめ。一部の機能を除きクラッシュさせ、議会のセキュリティーチェックを通り抜ける」
バロンは質問する。
「一部の機能を除きって?」
『俺とだけ、繋がる。ドキドキするだろ?』
そう言われて、バロンは首を傾げた。
「うん?」
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