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第十章 バロン
216:殿下、お待たせしました
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「ち、違うよ。そんなじゃないよ。セドリック、何を聞いて……」
バロンが慌てているうちに、通信が途切れてしまった。
仕方なく、バロンは部屋に戻る。
部屋では、ベリルがスチュワートから貰ったテロのときの写真を整理し、茶封筒に入れていた。
「どうだって?悪い友達、何か手があるって?」
「潜入できそうだよ。必要な物を十二時に配送ドローンが運んでくるって」
「あと三十分か」
ベリルは壁の時計を見て言う。
「なあ、バロン。アーサーに会いに行ってもいいか?十二時にはここに戻るからさ」
「もちろんだよ。でも、ベリルがアーサー様の傍を離れがたくなってしまったら、俺だけでいくから。でも、このことは誰にも話さないで」
「何言ってんだよ、見くびんな」
ベリルは、写真が入った茶封筒をバロンに渡すと部屋を出て行く。
入れ替わりに、キースが部屋に入って来た。
「バロン。殿下がおよびです」
「は、はい」
バロンは、ギュッと茶封筒握りしめた。
「どちらに伺えば?」
キースに聞くと、彼は「王宮の裏庭だそうです」と答えた。
小雪がちらつく裏庭に、スチュワートから渡された写真を持って走って向かう。
遠くに、雪の地面に分厚いコートを羽織ったまま寝転がる男の姿が見えた。
「殿下、お待たせしました」
バロンは傍らにしゃがみ込む。
ズボンを履いていても、膝がひんやりした。
「何をされているのですか?」
すると、エドワードが目を瞑ったまま、答えた。
「頭を冷やしている」
「そうですか、じゃあ、俺も」
バロンはエドワードの隣りに寝転んだ。
空からは、フワフワと小雪が降ってきて、バロンの鼻や頬の上で溶けて行った。
「何で、黙っている?」
「殿下が何も喋りたくなさそうなので」
すると、エドワードが目を細め、鼻を鳴らした。
「そのとおりだ。正直、このまま消えてしまえたらどんなにいいだろうと思う」
「はい」
「そんなこと言ってはいけないですよ、頑張りましょう。と安い励ましをしないところが、お前らしい」
「喋るの、下手なんです」
「私もだ」
「これ……お渡ししてもいいですか?」
バロンは、スチュワートから預かった写真をエドワードに渡した。
エドワードは写真を見ながら言う。
「スチュワートか?」
「はい。最新のソフトで、人物の視線が分かる動画も頂きました。ここに入っています」
とバロンは右手の付け根を左手の人差し指で示す。
「ケビン首相の視線は、十名の空港職員が駆け付けた際、テロリスト三名を捉えてしました」
「ネットフィリップスの奴、パパラッチのくせに、そこまでやってくれたか」
バロンが慌てているうちに、通信が途切れてしまった。
仕方なく、バロンは部屋に戻る。
部屋では、ベリルがスチュワートから貰ったテロのときの写真を整理し、茶封筒に入れていた。
「どうだって?悪い友達、何か手があるって?」
「潜入できそうだよ。必要な物を十二時に配送ドローンが運んでくるって」
「あと三十分か」
ベリルは壁の時計を見て言う。
「なあ、バロン。アーサーに会いに行ってもいいか?十二時にはここに戻るからさ」
「もちろんだよ。でも、ベリルがアーサー様の傍を離れがたくなってしまったら、俺だけでいくから。でも、このことは誰にも話さないで」
「何言ってんだよ、見くびんな」
ベリルは、写真が入った茶封筒をバロンに渡すと部屋を出て行く。
入れ替わりに、キースが部屋に入って来た。
「バロン。殿下がおよびです」
「は、はい」
バロンは、ギュッと茶封筒握りしめた。
「どちらに伺えば?」
キースに聞くと、彼は「王宮の裏庭だそうです」と答えた。
小雪がちらつく裏庭に、スチュワートから渡された写真を持って走って向かう。
遠くに、雪の地面に分厚いコートを羽織ったまま寝転がる男の姿が見えた。
「殿下、お待たせしました」
バロンは傍らにしゃがみ込む。
ズボンを履いていても、膝がひんやりした。
「何をされているのですか?」
すると、エドワードが目を瞑ったまま、答えた。
「頭を冷やしている」
「そうですか、じゃあ、俺も」
バロンはエドワードの隣りに寝転んだ。
空からは、フワフワと小雪が降ってきて、バロンの鼻や頬の上で溶けて行った。
「何で、黙っている?」
「殿下が何も喋りたくなさそうなので」
すると、エドワードが目を細め、鼻を鳴らした。
「そのとおりだ。正直、このまま消えてしまえたらどんなにいいだろうと思う」
「はい」
「そんなこと言ってはいけないですよ、頑張りましょう。と安い励ましをしないところが、お前らしい」
「喋るの、下手なんです」
「私もだ」
「これ……お渡ししてもいいですか?」
バロンは、スチュワートから預かった写真をエドワードに渡した。
エドワードは写真を見ながら言う。
「スチュワートか?」
「はい。最新のソフトで、人物の視線が分かる動画も頂きました。ここに入っています」
とバロンは右手の付け根を左手の人差し指で示す。
「ケビン首相の視線は、十名の空港職員が駆け付けた際、テロリスト三名を捉えてしました」
「ネットフィリップスの奴、パパラッチのくせに、そこまでやってくれたか」
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