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第十章 バロン

213:君、盗聴・盗撮の類にも強い?

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「この、写真見て」
「首相と、ルシウスの写真?これがどうかしたのか?」
「張り込みのプロのネットフィリップスの記者でさえ、こんな不鮮明な写真しか撮れないってこと」
「じゃあ、無理ってことか?」
ベリルは悔しそうに拳を握りしめる。
「いいや」
とバロンは首を振った
「ケビン首相が喋らなくたって、オレたちが表れたら、ドメイン共存とは矛盾した行動を絶対に起こすはずだ」
「何でそう言いきれる?」
「スクリーニング用のアンプル」
「え?」
ベリルは眉根を顰める。
記憶を失いたくないドメインにとっては、一番忌避したい代物だ。
だが、バロンは自信に満ちていた。
「殿下のところにいるのはもう嫌だ。昔の記憶を消して貴方に忠誠を誓うと言って、スクリーニング用のアンプルを差し出せば、きっと彼は俺たちに打つ。その瞬間をとらえればいい」
「けど、その手立てがないって訳か」
悔しそうに頭を掻いたベリルは、自分のデータ孔を触り始めた。
「人間と違う機能があるなら、こういうときに役立ってほしいよなあ」
「あっ」
バロンは声を上げた。
「どうしたんだよ?」
「セドリック!セドリックだ?」
「誰それ?」
「ほら、勲章授与式にいた、頭、ぐちゃぐちゃの」
バロンは、右手のデータ穴を軽く二度タップした。
「すげっ。バロン、右にも穴がある」
「昔、悪いことをして、造った穴だよ」
「見かけによらないなあ」
とベリルが目を丸くする。
「勝手にいろいろカスタマイズされちゃってね。確か、通信の機能も付けたって言っていたような気がするんだけど」
通信機能を付けられても、話をする相手がいなかったので、実際に使うのは初めてだ。
バロンは右手に向かって口を近づけた。
「セドリックと通信」
すると、数秒して『はいよ』という声が聞こえてきた。
「すげー。ロボットみたいだ」とベリルが声を上げる。
『あ……た…』
しかし、電波状況はよくない。
バロンは電波を探して部屋の中を移動し、最後にバルコニーに落ち着いた。
「ごめん。こっちの電波がよくないらしくて」
『構わない。あんたから連絡を貰えてうれしい。デートの誘いだろ?』
「え?違う、違う。そんなんじゃない、からかわないでくれよ」
『オレのラボに飛び込んで来た三年前と違って、随分りりしくなったと思うけど。だから、思わずこの前、誘っちまった。エドワード王太子殿下に思いっきり睨まれたけどな。で、デートの誘いじゃないなら、何の用?』
「君、盗聴・盗撮の類にも強い?」
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