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第九章 ベリル
209:会見の内容をすでにご存知なのですか?
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スチュワートは、写真をコマ送りのようにペラペラと捲り始める。
「殿下がなんでこんなことを俺に要求したのかなあ、映像で見れば十分だろうと思っていたんだが、面白いことが分かった。ま、俺の仮説だけどね」
「十五年前のテロは、相手国のテロリストが、空港職員に化けて王族らを襲ったということで解決しているのでは?」
「それがそうでもないんだよねえ。軍関係者によると、実はテロが起こることを知っておいて防がなかったという噂がある。まあ、この手の陰謀説はよくある話で、当事者には不幸な話でしかないが、マスコミやお茶の間では、格好のゴシップネタだ。俺も先日までそうとしか思っていなかった」
スチュワートは、三十枚ほどの写真の中から、一枚、取り出した。
「これは、テロリストが空港内に押し入ってくる直前のものだ」
そして、護衛の者のうち、一人を指で示す。
皆が、王族らを見ている中、その男だけ、別方向を見ていた。
「……ケビン首相だ。この場にいたんだ」
「どこ?」
バロンが言い、ベリルは写真を覗き込む。
「そして、こっちの方向から、空港職員に化けたテロリストがやってくる」
続いてスチュワートはタブレットを取り出す。
「いや~今のソフトって本当に便利でな。映像に映っている人間が、どこを見ているのかわかるんだ」
「本当だ。みんなの顔の先に、矢印がある」
とベリルはタブレットを見て言う。
「じゃあ、よく見ておきな。ケビン首相は、テロリストが表れて棒立ちになっている。けど、視線は正直だ。半径十メートル以内にいた空港職員は十名。うち、テロリストは三名。最初から、ケビン首相はこの三名しか見ていない。彼は自爆テロを起こすテロリストとその他の空港職員の区別がしっかりついている。つまり、恐怖で棒立ちは演技だったってわけ」
最初のテロリストがギルバートらを巻き込んで自爆する直前で、スチュワートは映像を止めた。
「ありがとうございます。この写真と映像、殿下にとって強烈な援護射撃になると思います。今、盛んにケビン首相とやりあっているので。その動画データをこちらにいただけないですか?」
バロンは右手の付け根を示した。
すると、スチュワートがタブレットをそこに押し付けてくる。
「普段なら、無料では情報はやらない。けど、お前と殿下の記念写真を撮らせてくれるならいいぜ。」
「殿下だけでなく、俺もですか?俺は構いませんが」
「じゃあ、約束な」
「殿下に伺っていないので確約は出来ませんが、おそらく可能かと」
すると、スチュワートが満足気に笑う。
「今日の緊急会見は、アン女王のことだろう?この証拠は上手く使わないと、いい燃料には化けないぜ」
「会見の内容をすでにご存知なのですか?」
「うちはね」
とスチュワートは答える。
「ケビン首相は、オールドドメインを使って、エドワード王太子殿下を追い込んでいる。そこに、アン女王が重篤のニュースはかなり分が悪い。噂では、エドワード派は、二千五十三年建国千年の年に、アン女王が退位し、エドワード王太子殿下が国王に、そして、メアリー様と結婚って流れになっているようだ。しかし、エドワード王太子殿下の力が強まれば、この国のドメイン産業は確実に下火になる。だから、アン女王が生きていようと、
「殿下がなんでこんなことを俺に要求したのかなあ、映像で見れば十分だろうと思っていたんだが、面白いことが分かった。ま、俺の仮説だけどね」
「十五年前のテロは、相手国のテロリストが、空港職員に化けて王族らを襲ったということで解決しているのでは?」
「それがそうでもないんだよねえ。軍関係者によると、実はテロが起こることを知っておいて防がなかったという噂がある。まあ、この手の陰謀説はよくある話で、当事者には不幸な話でしかないが、マスコミやお茶の間では、格好のゴシップネタだ。俺も先日までそうとしか思っていなかった」
スチュワートは、三十枚ほどの写真の中から、一枚、取り出した。
「これは、テロリストが空港内に押し入ってくる直前のものだ」
そして、護衛の者のうち、一人を指で示す。
皆が、王族らを見ている中、その男だけ、別方向を見ていた。
「……ケビン首相だ。この場にいたんだ」
「どこ?」
バロンが言い、ベリルは写真を覗き込む。
「そして、こっちの方向から、空港職員に化けたテロリストがやってくる」
続いてスチュワートはタブレットを取り出す。
「いや~今のソフトって本当に便利でな。映像に映っている人間が、どこを見ているのかわかるんだ」
「本当だ。みんなの顔の先に、矢印がある」
とベリルはタブレットを見て言う。
「じゃあ、よく見ておきな。ケビン首相は、テロリストが表れて棒立ちになっている。けど、視線は正直だ。半径十メートル以内にいた空港職員は十名。うち、テロリストは三名。最初から、ケビン首相はこの三名しか見ていない。彼は自爆テロを起こすテロリストとその他の空港職員の区別がしっかりついている。つまり、恐怖で棒立ちは演技だったってわけ」
最初のテロリストがギルバートらを巻き込んで自爆する直前で、スチュワートは映像を止めた。
「ありがとうございます。この写真と映像、殿下にとって強烈な援護射撃になると思います。今、盛んにケビン首相とやりあっているので。その動画データをこちらにいただけないですか?」
バロンは右手の付け根を示した。
すると、スチュワートがタブレットをそこに押し付けてくる。
「普段なら、無料では情報はやらない。けど、お前と殿下の記念写真を撮らせてくれるならいいぜ。」
「殿下だけでなく、俺もですか?俺は構いませんが」
「じゃあ、約束な」
「殿下に伺っていないので確約は出来ませんが、おそらく可能かと」
すると、スチュワートが満足気に笑う。
「今日の緊急会見は、アン女王のことだろう?この証拠は上手く使わないと、いい燃料には化けないぜ」
「会見の内容をすでにご存知なのですか?」
「うちはね」
とスチュワートは答える。
「ケビン首相は、オールドドメインを使って、エドワード王太子殿下を追い込んでいる。そこに、アン女王が重篤のニュースはかなり分が悪い。噂では、エドワード派は、二千五十三年建国千年の年に、アン女王が退位し、エドワード王太子殿下が国王に、そして、メアリー様と結婚って流れになっているようだ。しかし、エドワード王太子殿下の力が強まれば、この国のドメイン産業は確実に下火になる。だから、アン女王が生きていようと、
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