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第九章 ベリル
205:これで、信じたか?私がオールドドメインであることを
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「二人とも。少し休もう。ベリルが休んでいるか、確かめたら、僕がアン女王を看るよ。何かあったら二人にすぐ通信する。さあ、一旦部屋を出よう」
アーサーに促され、疲れ切ったエドワードとダニエルがアン女王の部屋から出てくる。
ベリルとバロンは、廊下の角に素早く隠れた。
「バロン、今の聞いたか?もしかして、バロンは本体のヴァレットだから知っていた?」
すると、バロンは蒼白な顔で首を振る。
「いいや。初耳だ。変わった方だなとは度々思っていたけれど、テロと第三次世界大戦でお心を病んでいるんだと。でも、本当は……」
「なあ、バロン。本体の奴、言ったよな?十五年前にテロが起こり、十四年前に世界で初めてのオールドドメインが誕生したって。そして、オレは、そいつは誰なんだって聞いたら、機密事項だって、ぴしゃっと言われた」
「つまり、アン女王が、殿下の御母様が、世界初のオールドドメイン……」
バロンは今にも倒れ込みそうな勢いだった。
「殿下、今までどんなお気持ちで」
バロンの手をベリルは強く引いた。
「行くぞ。きっと、あのオールドドメイン、オレたちを呼んだに違いない」
「え?」
「だってそうだろ?バロンもオレも廊下で出会ったとき、似たようなことを言ってたじゃないか。誰かに呼ばれた気がしたって」
「そんな。それじゃあ、アン女王は、超能力者だ」
「かもしれない。世界初のオールドドメインなんだし」
「どういう理屈なんだよ」と全然納得しようとしないバロンを引っ張って、ベリルはアンの部屋に忍び込んだ。
暗闇の中で、ピッ、ピッ、ピッと医療計器の音がする。
「ライト 薄明り」
ベリルが言うと、居間にぼんやりした明かりがついた。
テーブルがあり、椅子が数客乱れた形で置かれてあった。
ここに先ほどまで、エドワードたちが座っていたのだろうと、ベリルは思う。
「奥にいるのかな?」
「ベリル、帰ろう、幾ら病気で伏せられていても、失礼だ」
「なんでだよ。呼ばれたのに、行かないほうが失礼だろう」
部屋の入り口で押し問答をしていると、奥の部屋から「……おいで」と弱々しい声がした。
その部屋を覗くと、天蓋付きのベッドに女性が枕を腰にあてもたれていた。
「あ、あ、あの、失礼しました。すぐ去ります」
と慌てるバロンに、ベリルは「来いって言ってるのに」と言って、バロンをアンの元まで引っ張っていく。
「オレたちのことをさっきからずっと呼んでいた?」
ベリルが聞くと、アンが頷いた。
「けど、アン女王、一体どうやって?」
とバロンが恐る恐る問いかける。
「私たちは、光と音から生まれたのだから、繋がるのはその二つがあればたやすい」
「つまり、アン女王もオールドドメインってこと」
「ベリル。なわけないじゃないか。よく見てみろよ!仮死状態だったら、オールドドメインはカプセルに入っているはずだろう?」
すると、アンはふっと隣の小部屋を指さす。半開きの扉の奥にカバーが開いたカプセルがあり、薄い緑色の光を発していた。
「で、でも、手の甲にドメインの印である数字の刻印はないし」
すると、アンがバロンの手を取って、左の親指の付け根を触らせた。
「―--データ孔」
「これで、信じたか?私がオールドドメインであることを」
アーサーに促され、疲れ切ったエドワードとダニエルがアン女王の部屋から出てくる。
ベリルとバロンは、廊下の角に素早く隠れた。
「バロン、今の聞いたか?もしかして、バロンは本体のヴァレットだから知っていた?」
すると、バロンは蒼白な顔で首を振る。
「いいや。初耳だ。変わった方だなとは度々思っていたけれど、テロと第三次世界大戦でお心を病んでいるんだと。でも、本当は……」
「なあ、バロン。本体の奴、言ったよな?十五年前にテロが起こり、十四年前に世界で初めてのオールドドメインが誕生したって。そして、オレは、そいつは誰なんだって聞いたら、機密事項だって、ぴしゃっと言われた」
「つまり、アン女王が、殿下の御母様が、世界初のオールドドメイン……」
バロンは今にも倒れ込みそうな勢いだった。
「殿下、今までどんなお気持ちで」
バロンの手をベリルは強く引いた。
「行くぞ。きっと、あのオールドドメイン、オレたちを呼んだに違いない」
「え?」
「だってそうだろ?バロンもオレも廊下で出会ったとき、似たようなことを言ってたじゃないか。誰かに呼ばれた気がしたって」
「そんな。それじゃあ、アン女王は、超能力者だ」
「かもしれない。世界初のオールドドメインなんだし」
「どういう理屈なんだよ」と全然納得しようとしないバロンを引っ張って、ベリルはアンの部屋に忍び込んだ。
暗闇の中で、ピッ、ピッ、ピッと医療計器の音がする。
「ライト 薄明り」
ベリルが言うと、居間にぼんやりした明かりがついた。
テーブルがあり、椅子が数客乱れた形で置かれてあった。
ここに先ほどまで、エドワードたちが座っていたのだろうと、ベリルは思う。
「奥にいるのかな?」
「ベリル、帰ろう、幾ら病気で伏せられていても、失礼だ」
「なんでだよ。呼ばれたのに、行かないほうが失礼だろう」
部屋の入り口で押し問答をしていると、奥の部屋から「……おいで」と弱々しい声がした。
その部屋を覗くと、天蓋付きのベッドに女性が枕を腰にあてもたれていた。
「あ、あ、あの、失礼しました。すぐ去ります」
と慌てるバロンに、ベリルは「来いって言ってるのに」と言って、バロンをアンの元まで引っ張っていく。
「オレたちのことをさっきからずっと呼んでいた?」
ベリルが聞くと、アンが頷いた。
「けど、アン女王、一体どうやって?」
とバロンが恐る恐る問いかける。
「私たちは、光と音から生まれたのだから、繋がるのはその二つがあればたやすい」
「つまり、アン女王もオールドドメインってこと」
「ベリル。なわけないじゃないか。よく見てみろよ!仮死状態だったら、オールドドメインはカプセルに入っているはずだろう?」
すると、アンはふっと隣の小部屋を指さす。半開きの扉の奥にカバーが開いたカプセルがあり、薄い緑色の光を発していた。
「で、でも、手の甲にドメインの印である数字の刻印はないし」
すると、アンがバロンの手を取って、左の親指の付け根を触らせた。
「―--データ孔」
「これで、信じたか?私がオールドドメインであることを」
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