【完結】王と伯爵に捧げる七つの指輪

遊佐ミチル

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第九章 ベリル

203:吸うとこうなるんだって

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部屋は真っ暗だ。
「違うって何がだよ。隠すなよ」
ベリルは真実を知りたくて、バロンに迫る。
とうとう、小柄なベリルは、大柄なバロンを壁際に追い詰めた。
「ライト オン」
「やめて、せめて薄明り」
バロンがそう言って、部屋が廊下のように薄明りに包まれた。
バロンは観念したようにローブをはだけ、横髪を耳にかけ首筋を見せた。
「赤いのが幾つもあるぞ」
軽く擦ると、バロンがピクリと身体を動かす。
「痛い?」
「痛くないよ。けど、敏感になっているから、余り触らないで」
「分かった。けど、なんで本体にこんなことされたんだ?」
すると、バロンは、恥ずかしそうに顔を伏せた。
「殿下の名誉のために言うけど、これ、いじめじゃなくて、慰めてくれた結果だから」
「慰め?」
「さっき、ルシウスのボイスメモを聞いて、俺、乱れてしまっただろう?殿下が、俺を抱きしめながらここに唇を押し当ててくれたんだ」
「ん?」とベリルは首を傾げる。
「オレだって、アーサーにそれぐらいしてもらったことがある。でも、痕なんかつかなかった」
バロンは、顔を覆った。
「吸うとこうなるんだって」
それ以降、バロンは黙ってしまった。彼の袖をベリルは引っ張る。
「それって、オレとアーサーが好きあっているみたいに、オレの本体とバロンも好きあっているってこと?」
「す、好きあう?!」
その言葉に、バロンが異様なほど動揺する。
「お、俺は、た、確かに、殿下のことを、おおおお慕い申しあげているけれど」
「だから、つまり、好きってことだろ?」
「ううううん。だ、だけど、殿下は、別に……」
「好きじゃないのに、相手の身体に痕を残すのか?」
バロンは、赤い痣が散った首筋を撫で始めた。
「たぶん、殿下は落ち着きたいんじゃないかな?」
「どういう意味だ?」
「ベリルは、アーサー様と触れ合っていると落ち着かない?例えば、抱擁とか、手を繋ぐとか」
「落ち着くというか、そうされるのは好きだ。幸せな気分になる」
「それと一緒だよ」
「あのグリズリーみたいに凶暴そうなのも、バロンにそういうことをして、気持ちを落ち着けているってことか?」
「見た目はそうだけど、本当はとても優しいよ。それに、ナイーブな人だと思う。ルシウスのことだって、ダニエル様の大切なドメインだからなんとかしなければいけないって思っているはずだし」
「ルシウス、大丈夫かな」
「配送ドローンっていう、切り札を持っているからね。交渉を長引かせるうちに、殿下が助けにいくよ」
「だといいけど」
「何、その投げやりな言い方」
「もし、俺がルシウスの立場だったら、本体は心配しないだろうってこと」
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