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第九章 ベリル

199:アーサー。最悪の場合だ。避けるよう、努力はする

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「ルシウスは、自分で考えて行動した。ケビンは今や個人じゃない。大きな権力だ。それにオールドドメイン一体で立ち向かうってことが、どんなに危険なことか分かっていたはずだ。ここにいる誰にも相談せずそれをやりやがった。囚われの身になるのも当然だ」
そう言ったダニエルは、「アン女王の部屋に戻る。エドワード、ちょっと」とエドワードを部屋の外に連れ出した。
きちんと締まりきらない扉から、ボソボソと声が聞こえてくる。
「アン女王の細胞数値がおかしい」
「いよいよと言うことか?」
驚愕の事実に、バロンが立ち上がりエドワードの傍に行こうとする。
すると、エドワードがこっちへ来るなというように首を振って、扉をきっちりと閉めた。
やがて、エドワードだけが戻ってくる。
アーサーがソファーから腰を浮かせ、エドワードに近づく。
「どうするつもりだい?ダニエルは、ああ言っているけれど、強がっているだけだ」
すると、ラリーも言う。
「殿下。突撃でも何でも命令してください」
「まあ、待て」
エドワードはヒラッと手を振りながら、また、ソファーに座る。
そして、足を組み、ラリーの顔を見る。
「ルシウスは、一万羽の配送ドローンを修理屋から購入したと言ったな?」
「はい。予定の時までよろしくと保管を頼んでいました。それがいつなのかはわかりません」
「ルシウスのことだから、自分を廃棄したり、スクリーニングしたりするなら、その一万羽の配送ドローンがクラッシックシティーに向かって飛ばすと脅しているはずだ。首相のところに乗り込んだ目的は分からないが、あの悪魔、死ぬなら、道連れにしてやろうと考えているのかもしれない。ラリー、その修理屋を急いで保護しろ。一万羽の配送ドローンを用意できる者はそういない。首相も当てをつけて、部下に捜索させるはずだ」
「分かりました。すぐに」
ラリーが急いでエドワードの部屋を出て行く。
「僕たちに出来ることは?」
アーサーが、ベリルの手を取ってエドワードに聞く。
「このオールドドメイン騒動が収まらない場合は、会見を開くことになる。私の複製が勝手に造られたとな。場合によってはそれ以上の会見も開かねばならないかもしれないが」
「協力してやるけど?それで、ルシウスが無事、帰ってくるなら」
とベリルが言う。
傍らで、アーサーが唇をかみしめていた。
「アーサー。最悪の場合だ。避けるよう、努力はする」
とエドワードが珍しく労わった。
「ごめん。僕は、全然、君の役に立っていなくて」
「立っている。十五年前からずっと。お前が、庇ってくれなければ、私は死んでいたのだから」
アーサーの肩を軽く叩いた後、エドワードはバロンを呼んだ。
「私のタブレットはどこだ?」
「はい。確か、寝室の方で見かけました。お持ちします」
パタパタとバロンが駆けて行って、すぐにエドワードのタブレットを持ってくる。
エドワードは、タブレットの下部にあるポートにUSBスティックを差し込んだ。
タブレットの画面にファイル名が出て来て、それをクリックする。
「どんな過去を流すつもりなのか、とりあえず聞いてみよう」
とエドワードが言う。
やがて、音声が流れだした。
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