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第八章 ルシウス
196:思い出せっっっ!!
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ルシウスはベッドを降りて、ケビンに近づいていった。
そして、ネクタイを掴んで、引き寄せる。
「あんまりオールドドメインを舐めない方がいいよ?」
「君たちは何がしたい?脅迫か?だったら、一生遊んで暮らせるだけの金は用意しよう。豪華な館も提供する」
「……」
「今、君はダニエル元伯爵のところにいると聞いた。彼との生活がつつましすぎてつまらないんだろう?だから、僕のところにおねだりにやってきたんだね?」
ケビンの額には、脂汗が滲んでいた。
扉を横目で見ながら、早口で繰り返す。
きっと、警備兵を待っているのだ。
「ダニエルとの生活は楽しいよ。けど、ケビン。どうしてボクが危険を犯してまでこうやって君に会いに来たのか、そろそろちゃんと考えてもらっていいかな?」
「それは……首相になったら、迎えにいくと」
「その前に、君はボクのために果たさなければならない約束があった」
ルシウスは立ち上がって、ケビンの前に向かった。
スーツの襟を掴んで、
「思い出せっっっ!!」
と叫ぶ。
復讐は、スマートに行うはずだった。
どうして、ここまで、声を荒げてしまうのだろう。
格好が悪い。
とルシウスは心の中で思う。
しかし、沈黙するケビンに、再び叫ぶことを止められなかった。
「思い出せっっっ!!」
すると、ケビンがルシウスの背中に手を当てた。
「ルシウス。本当に悪かったと……」
「だったら、思い出せと言っているだろっ!!分かんないのか?なあ、分かんないんだろ?」
矢継ぎ早に言うと、ケビンがゆっくり口を開きかけた。
その時。
バンッと扉が空いて、警備兵がやって来た。
ケビンの顔に、安堵の表情が浮かんだのをルシウスは見逃さなかった。
張り詰めていた気持ちが爆発する。
ここまでしたくなかったという一線を、とうとう超えようとしていた。
「医師を呼んでこい。緊急スクリーニングのアンプルを」
とケビンが額の脂汗を拭きながら、警備兵に命令する。
「ですが、この者は侵入者では?警察か王立警ら隊に」
「いいんだ。少し、興奮しすぎて具合が悪らしい」
「はっ」
警備兵は、急ぎ足でケビンの部屋を出て行った。
「へえ、スクリーニングするんだ」
ルシウスは、ケビンの前を通りすぎ、窓辺に立つ。
「じゃあ、ケビンの政治生命終わるね」
「どういう意味だ。誰かに話したのか?ダニエルか?エドワードか?」
「いいや。誰にも」
「じゃあ、なぜ、僕の政治生命が終わるなんて、縁起でもないことを言う?」
「ボクは、君が鹿の園に迎えに来てくれると願う一方でスクリーニングされることを恐れた。だから、ボイスメモに残した。ラボ時代から、君の館で暮らしたこと、そして、鹿の園に売られたこと。もちろん鹿の園の男娼時代のことも。それをUSBに記録し、今日の昼、一万場羽の壊れかけの配送ドローンにくくりつけた」
すると、ケビンが頭を抱えてのけ反った。
「なんてことを。止めろ!今すぐ止めるんだ!」
「君がボクとの約束をいつまでも果たそうとしないんだもの、まあ、こういう結果になるよね。配送ドローンはクラッシクシティーに向けて飛び立とうとしている。受取人はランダムに指定してあるから、誰が受け取るかはわからない。もし受取人と出会えなければ、壊れかけの配送ドローンはクラッシックシティー全域に次々と墜落する」
身体の力が抜けたケビンは、呆けたように、床に膝立ちになった。
ルシウスは、ケビンの顎を取る。
「君は、鹿の園の男娼を三時間コースで呼んだのだから、その時間は大人しくしておいてあげる。その間に、ボクにした約束を思い出しなよ」
ざまあみろという気持ちでルシウスは告げた。
なのに、目の前は涙で曇って何も見えない。
どうしてだろう。
とルシウスは思った。
分かりきった結果を突きつけられただけなのに。
どうして、悲しいと思ってしまうんだろう、ボクは。
こんな感情は、予想外だった。
そして、ネクタイを掴んで、引き寄せる。
「あんまりオールドドメインを舐めない方がいいよ?」
「君たちは何がしたい?脅迫か?だったら、一生遊んで暮らせるだけの金は用意しよう。豪華な館も提供する」
「……」
「今、君はダニエル元伯爵のところにいると聞いた。彼との生活がつつましすぎてつまらないんだろう?だから、僕のところにおねだりにやってきたんだね?」
ケビンの額には、脂汗が滲んでいた。
扉を横目で見ながら、早口で繰り返す。
きっと、警備兵を待っているのだ。
「ダニエルとの生活は楽しいよ。けど、ケビン。どうしてボクが危険を犯してまでこうやって君に会いに来たのか、そろそろちゃんと考えてもらっていいかな?」
「それは……首相になったら、迎えにいくと」
「その前に、君はボクのために果たさなければならない約束があった」
ルシウスは立ち上がって、ケビンの前に向かった。
スーツの襟を掴んで、
「思い出せっっっ!!」
と叫ぶ。
復讐は、スマートに行うはずだった。
どうして、ここまで、声を荒げてしまうのだろう。
格好が悪い。
とルシウスは心の中で思う。
しかし、沈黙するケビンに、再び叫ぶことを止められなかった。
「思い出せっっっ!!」
すると、ケビンがルシウスの背中に手を当てた。
「ルシウス。本当に悪かったと……」
「だったら、思い出せと言っているだろっ!!分かんないのか?なあ、分かんないんだろ?」
矢継ぎ早に言うと、ケビンがゆっくり口を開きかけた。
その時。
バンッと扉が空いて、警備兵がやって来た。
ケビンの顔に、安堵の表情が浮かんだのをルシウスは見逃さなかった。
張り詰めていた気持ちが爆発する。
ここまでしたくなかったという一線を、とうとう超えようとしていた。
「医師を呼んでこい。緊急スクリーニングのアンプルを」
とケビンが額の脂汗を拭きながら、警備兵に命令する。
「ですが、この者は侵入者では?警察か王立警ら隊に」
「いいんだ。少し、興奮しすぎて具合が悪らしい」
「はっ」
警備兵は、急ぎ足でケビンの部屋を出て行った。
「へえ、スクリーニングするんだ」
ルシウスは、ケビンの前を通りすぎ、窓辺に立つ。
「じゃあ、ケビンの政治生命終わるね」
「どういう意味だ。誰かに話したのか?ダニエルか?エドワードか?」
「いいや。誰にも」
「じゃあ、なぜ、僕の政治生命が終わるなんて、縁起でもないことを言う?」
「ボクは、君が鹿の園に迎えに来てくれると願う一方でスクリーニングされることを恐れた。だから、ボイスメモに残した。ラボ時代から、君の館で暮らしたこと、そして、鹿の園に売られたこと。もちろん鹿の園の男娼時代のことも。それをUSBに記録し、今日の昼、一万場羽の壊れかけの配送ドローンにくくりつけた」
すると、ケビンが頭を抱えてのけ反った。
「なんてことを。止めろ!今すぐ止めるんだ!」
「君がボクとの約束をいつまでも果たそうとしないんだもの、まあ、こういう結果になるよね。配送ドローンはクラッシクシティーに向けて飛び立とうとしている。受取人はランダムに指定してあるから、誰が受け取るかはわからない。もし受取人と出会えなければ、壊れかけの配送ドローンはクラッシックシティー全域に次々と墜落する」
身体の力が抜けたケビンは、呆けたように、床に膝立ちになった。
ルシウスは、ケビンの顎を取る。
「君は、鹿の園の男娼を三時間コースで呼んだのだから、その時間は大人しくしておいてあげる。その間に、ボクにした約束を思い出しなよ」
ざまあみろという気持ちでルシウスは告げた。
なのに、目の前は涙で曇って何も見えない。
どうしてだろう。
とルシウスは思った。
分かりきった結果を突きつけられただけなのに。
どうして、悲しいと思ってしまうんだろう、ボクは。
こんな感情は、予想外だった。
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