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第八章 ルシウス
180:ごめんな、ルシウス。辛い思いをさせるな。でも、頑張ってくれ
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「こんなに?予想以上の額です」
「何に使われるのか知りませんが、この子に感謝したほうがいい。これから、地獄を味わうのですから」
「必ず迎えに来ます」
と言いながら、ケビンは小切手を胸ポケットに仕舞う。
「忠告しておきますが、この子はきっと高位までいく。だとしたら、今支払った額の十倍のでも買い取りはできませんよ」
「大丈夫です。この子が王の位になっていても、僕もそのとき、王のような位にいます」
「は?」
「まあ、こっちのことです」
ルシウスの値段が高かったことで、ケビンはスキップでもして歩き回りそうなご機嫌ぶりだ。
「教育係には、クリストファーを指名しておきました。おい、クリストファー」
オーナーに呼ばれ、背の高い銀髪の青年が入ってくる。ラボにいたときも、クリストファーは顔立ちの整った青年だったが、さらに洗練されて磨きがかかっていた。
ケビンが、ルシウスに耳打ちをしてきた。
「クリストファーはスクリーニングをして、鹿の園に連れて行った。だから、こちらのことは覚えていない。初めましてって言うんだよ」
ルシウスは、うんと頷く。
「ケビン様。教育係のルシウスです」
片腕に、バスローブをかけてにこやかな笑顔で寄ってくる長身のクリストファーに、ケビンは「やあ、初めまして。うちのルシウスが世話になるよ」と手を差し出す。
握手を交わした二人だったが、クリストファーの握力が強いのか、ケビンは手を離した後、背後に手を回し、痛みを散らすかのようにプルプルと振っていた。
「行きましょうか」
クリストファーは、ルシウスにバスローブを掛けながら言う。
「ごめんな、ルシウス。辛い思いをさせるな。でも、頑張ってくれ」
「ケビンこそ、頑張れよ」
抱擁を交わし、ルシウスは周りに聞こえないよう耳元で囁く。
「立派な政治家になれよ。ボク、待っているから。チップだって一杯稼いで、送るから」
「じゃあ、君が王の座についたら、おめでとうと手紙を書く」
「本当?だったら、希望を持って頑張れる」
「希望?たった手紙一枚が?」
「ケビンから届く手紙だからだよ。待っているから、絶対送って。ボク、王になるって約束するからさ」
「分かったよ」
「待っているからね。絶対だからね」
喉が詰まって声がかすれた。
ケビンが、ルシウスの背中をさする。
「でも、その前に僕が迎えに行く方が早いかな?」
「言ったな!」
ルシウスは、ケビンの腕から抜け出て背を向けた。
オーナーの部屋を一足早く出されたが、もう振り向かなかった。
「ここが、当面の貴方の部屋です」
クリストファーに案内された部屋は、ベッドとソファーがある小綺麗な部屋だった。
「案外綺麗だ。娼館っていうから、もっと不衛生かと思った」
「綺麗だの、汚いだのそんなこと、すぐに気にならなくなりますよ」
クリストファーは、着ていたジャケットを脱いで、ソファーの背もたれにかけた。
着痩せするタイプなのか、なかなか身体に厚みがある。
「何に使われるのか知りませんが、この子に感謝したほうがいい。これから、地獄を味わうのですから」
「必ず迎えに来ます」
と言いながら、ケビンは小切手を胸ポケットに仕舞う。
「忠告しておきますが、この子はきっと高位までいく。だとしたら、今支払った額の十倍のでも買い取りはできませんよ」
「大丈夫です。この子が王の位になっていても、僕もそのとき、王のような位にいます」
「は?」
「まあ、こっちのことです」
ルシウスの値段が高かったことで、ケビンはスキップでもして歩き回りそうなご機嫌ぶりだ。
「教育係には、クリストファーを指名しておきました。おい、クリストファー」
オーナーに呼ばれ、背の高い銀髪の青年が入ってくる。ラボにいたときも、クリストファーは顔立ちの整った青年だったが、さらに洗練されて磨きがかかっていた。
ケビンが、ルシウスに耳打ちをしてきた。
「クリストファーはスクリーニングをして、鹿の園に連れて行った。だから、こちらのことは覚えていない。初めましてって言うんだよ」
ルシウスは、うんと頷く。
「ケビン様。教育係のルシウスです」
片腕に、バスローブをかけてにこやかな笑顔で寄ってくる長身のクリストファーに、ケビンは「やあ、初めまして。うちのルシウスが世話になるよ」と手を差し出す。
握手を交わした二人だったが、クリストファーの握力が強いのか、ケビンは手を離した後、背後に手を回し、痛みを散らすかのようにプルプルと振っていた。
「行きましょうか」
クリストファーは、ルシウスにバスローブを掛けながら言う。
「ごめんな、ルシウス。辛い思いをさせるな。でも、頑張ってくれ」
「ケビンこそ、頑張れよ」
抱擁を交わし、ルシウスは周りに聞こえないよう耳元で囁く。
「立派な政治家になれよ。ボク、待っているから。チップだって一杯稼いで、送るから」
「じゃあ、君が王の座についたら、おめでとうと手紙を書く」
「本当?だったら、希望を持って頑張れる」
「希望?たった手紙一枚が?」
「ケビンから届く手紙だからだよ。待っているから、絶対送って。ボク、王になるって約束するからさ」
「分かったよ」
「待っているからね。絶対だからね」
喉が詰まって声がかすれた。
ケビンが、ルシウスの背中をさする。
「でも、その前に僕が迎えに行く方が早いかな?」
「言ったな!」
ルシウスは、ケビンの腕から抜け出て背を向けた。
オーナーの部屋を一足早く出されたが、もう振り向かなかった。
「ここが、当面の貴方の部屋です」
クリストファーに案内された部屋は、ベッドとソファーがある小綺麗な部屋だった。
「案外綺麗だ。娼館っていうから、もっと不衛生かと思った」
「綺麗だの、汚いだのそんなこと、すぐに気にならなくなりますよ」
クリストファーは、着ていたジャケットを脱いで、ソファーの背もたれにかけた。
着痩せするタイプなのか、なかなか身体に厚みがある。
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