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第七章 ラリー

170:嫉妬しているかのようで、見苦しいので

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「三時間コース」
「場所はここか?」
「別。普通は、男娼が客の館に行くのは禁止されているんだけど、彼は特別なんだ」
「ラリー様。鹿の園から男娼を向かわせれば、必ず記録に残ります。シークレットのお客様もそれを知っています。つまり、帰さなければ、鹿の園は表沙汰にできます」
ついにラリーは、真剣な二体を見て、ついに根負けした。
腹いせに悪態をつく。
「人間がオールドドメインにした数年前に約束なんて、絶対に果たされない。忘れられてい泣いて帰ってきたとしても、僕は慰めてやらないからな」
 
飾り気のない馬車に乗ってルシウス、いやコケティッシュな格好のロゼットが出発する。寒くないようフード付きの毛皮のローブを身に着けた姿は、小悪な女王のようだ。
館はここから三十分だという。
往復にかかる時間は、一時間。プラス三時間の接客で彼はまたここに戻ってくる。
明け方になれば、何事も無く王宮に帰れると思いながら、ラリーは、クリストファーとともにルシウスを送り出した。
それでも心配なので、馬車が動き出してからも、通信でしつこく注意を与える。
「約束が果たされないからって、客の前で暴れて、傷害事件なんか起こすなよ。心配だからずっと通信をオンにしておく」
『大丈夫だよ。ボクを誰だと思っているの?』
と通信機から元気なルシウスの声が聞こえる。
だから、性悪のドメインだろ、と心の中で思いながら、ラリーは再び、最初の小部屋に戻った。
クリストファーがそこに、ティーポットを乗せたカートを運んでくる。
傍らにはティーカップは二客。
いい匂いのする紅茶が注がれ、差し出された。
「どうも」
「いいえ。ルシウスがご迷惑をおかけしました」
「貴方は、今夜の仕事は?」
「トラフィルガーは、寝込んでしまいましたし、オリバーはお客様の旅行に付き合って異国に。ノアは、明け方まで鹿の園で接客中です」
「これだけ広いと、従業員が休む部屋もあるでしょう。なのに、貴方はここにいる。先ほど、貴方たち四体は、何らかの共通項を持っているのでは?と聞いたとき、答えを避けましたね。ルシウスが戻って来て騒ぎを起こし、うやむやになってしまった。こうやって二客、ティーカップが用意されたということは、僕にじっくり話を聞かれたいってことですか?」
するとクリストファーが、ソファーから腰を浮かせラリーの耳の通信機に手をやってスイッチを切った。
「さらには、ルシウスには聞かれたくない話ってことでいいですか?」
「嫉妬しているかのようで、見苦しいので」
クリストファーは、ソファーに座り直す。
「貴方は、私と、バロン、ルシウス、そしてシファーチェに共通項があるのではといいましたね。確かにそうです。私たちは、同じラボ出身です。シファーチェは私がラボを出てからの子なので、まさか、同じとは思いませんでしたが」
「オールドドメインを造ることができるラボは、王立細胞研究所、軍、そして王宮のプライベートラボの三か所のはず。僕は軍だけど、貴方は?」
すると、クリストファーがフフッと笑った。
「一緒です。軍のラボは戦死した軍人の核細胞データを使用してオールドドメインを造っていた場所ですが、あの頃は、核細胞データ提出に同意してくれる家族は少なかった。なので、非合法に一般人から集めていました」
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