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第七章 ラリー
168:シークレットのお客様が満足するレベルの子は、今夜おりません
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大人二人で追っても、若者の足には叶わない。
鍛えていないわけではないラリーの足でもあっという間に離される。
ただ、行き先は分かっていた。公爵か王の部屋だ。
二階に上がるとすでにルシウスの姿は無かったが、廊下の奥の扉が一か所だけ大きく開いていた。
戸口に立つと、シャツを手に持ち着替え中の上半身裸の青年が、ベッドサイドに立って本物の悪魔に出会ってしまったとでもいうような怯えっぷりを見せていた。
「トラフィルガーッッッ!ボクのことを覚えているか?!」
ルシウスがじりじりと間合いを詰めて行く。
「覚えていないとは言わせないぞ。取り巻きの一人として散々可愛がってやったからな。なのに、受付係をいじめるってのはどういうことだ?!お前の力で予約が取れているんじゃないんだぞ?お前がやらかしたミスや貰ったクレームを彼らがサンドバックになって処理してくれているから、またお前に予約は入るんだぞ?そこんとこ、思い出せっ!!」
叫んでだルシウスは、トラフィルガーに、蹴りかかっていく。
ちょうどルシウスの足が、トラフィルガーのみぞおちに入り、彼は盛大に呻いて仰向けにベッドに倒れた。
「困るんだよね~。トラフィルガーは鹿の園の王。いわば、一番高い商品なんですよ。それを面接を受けに来た子が、蹴り倒すなんて」
「申し訳ございません」
鹿の園のオーナーの前で、ラリーは平謝りしている。
「ええっと、テンペストさんとロゼット?でしたっけ?」
クリストファーが急遽作った偽情報で、ラリ―とルシウスは、トルコからやってきたテンペストという実業家とそのドメインということになっている。
「まあ、ビックリするほど可愛い顔をしているけれど」
ルシウスは、胸元まである長いカツラを被り、ニ―ソックスにスカートとかなりコケティッシュな姿だ。
さすがにこれでは、鹿の園歴代最長の王ルシウスとは一致しない。
すると背後に控えていたクリストファーが言った。
「オーナー。テンペスト様は、ロゼットを十日ほどお試しで使って欲しいとのことでした。お試し期間でも所有者には、ドメインが働いた分の給金が支払われますが、今回の責任を取る上で、その期間、タダ働きはいかがでしょう?契約等の話し合いは、ロゼットの十日間の働き次第ということで」
「まあ、そうなるだろうな。いいでしょうか、テンペストさん」
「はい。いかようにも」
「じゃあ、そういうことで、決まりですね」
とクリストファーが笑った後、深刻な顔をした。
「そして、オーナー、緊急のご相談です」
「どうした、クリストファー。改まって」
「これからトラフィルガーは、シークレットのお客様の御相手をするはずでした」
「何だと?!じゃあ、謝りの連絡を入れたうえで、公爵ランクのオリバーかノアを行かせろ」
「それが、彼らは今夜は」
「では、その下の者は?」
「シークレットのお客様が満足するレベルの子は、今夜おりません」
「なんていうことだ」
鹿の園のオーナーは顔を青くする。
シークレットのお客様?なんだそりゃ?
ラリーは、内心そう思いながら聞いていた。
「ですから、オーナー。ロゼットを行かせてみてはいかがでしょう?」
鍛えていないわけではないラリーの足でもあっという間に離される。
ただ、行き先は分かっていた。公爵か王の部屋だ。
二階に上がるとすでにルシウスの姿は無かったが、廊下の奥の扉が一か所だけ大きく開いていた。
戸口に立つと、シャツを手に持ち着替え中の上半身裸の青年が、ベッドサイドに立って本物の悪魔に出会ってしまったとでもいうような怯えっぷりを見せていた。
「トラフィルガーッッッ!ボクのことを覚えているか?!」
ルシウスがじりじりと間合いを詰めて行く。
「覚えていないとは言わせないぞ。取り巻きの一人として散々可愛がってやったからな。なのに、受付係をいじめるってのはどういうことだ?!お前の力で予約が取れているんじゃないんだぞ?お前がやらかしたミスや貰ったクレームを彼らがサンドバックになって処理してくれているから、またお前に予約は入るんだぞ?そこんとこ、思い出せっ!!」
叫んでだルシウスは、トラフィルガーに、蹴りかかっていく。
ちょうどルシウスの足が、トラフィルガーのみぞおちに入り、彼は盛大に呻いて仰向けにベッドに倒れた。
「困るんだよね~。トラフィルガーは鹿の園の王。いわば、一番高い商品なんですよ。それを面接を受けに来た子が、蹴り倒すなんて」
「申し訳ございません」
鹿の園のオーナーの前で、ラリーは平謝りしている。
「ええっと、テンペストさんとロゼット?でしたっけ?」
クリストファーが急遽作った偽情報で、ラリ―とルシウスは、トルコからやってきたテンペストという実業家とそのドメインということになっている。
「まあ、ビックリするほど可愛い顔をしているけれど」
ルシウスは、胸元まである長いカツラを被り、ニ―ソックスにスカートとかなりコケティッシュな姿だ。
さすがにこれでは、鹿の園歴代最長の王ルシウスとは一致しない。
すると背後に控えていたクリストファーが言った。
「オーナー。テンペスト様は、ロゼットを十日ほどお試しで使って欲しいとのことでした。お試し期間でも所有者には、ドメインが働いた分の給金が支払われますが、今回の責任を取る上で、その期間、タダ働きはいかがでしょう?契約等の話し合いは、ロゼットの十日間の働き次第ということで」
「まあ、そうなるだろうな。いいでしょうか、テンペストさん」
「はい。いかようにも」
「じゃあ、そういうことで、決まりですね」
とクリストファーが笑った後、深刻な顔をした。
「そして、オーナー、緊急のご相談です」
「どうした、クリストファー。改まって」
「これからトラフィルガーは、シークレットのお客様の御相手をするはずでした」
「何だと?!じゃあ、謝りの連絡を入れたうえで、公爵ランクのオリバーかノアを行かせろ」
「それが、彼らは今夜は」
「では、その下の者は?」
「シークレットのお客様が満足するレベルの子は、今夜おりません」
「なんていうことだ」
鹿の園のオーナーは顔を青くする。
シークレットのお客様?なんだそりゃ?
ラリーは、内心そう思いながら聞いていた。
「ですから、オーナー。ロゼットを行かせてみてはいかがでしょう?」
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