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第七章 ラリー

161:男娼時代に、城でも買ってあげようといわれた?

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「まだ、作業があったの!?ドメイン使いが荒いなあ」
「好きでしょ、働くの?あ、でも、殿下のため以外には働きたくないのか」
「あー。うるさい。で、鹿の園には何しに行くの?」
「お?無理やり話題を変えて来たね?まあまあ、落ち着きなって。性欲滾らせるのは、男としてみっともないよ?」
このドメイン、本当に小憎たらしいことを言う、と思いながら、ラリーは両方の段ボールに手を突っ込んで、空のプラスティックケースとUSBスティックを同時に取り出す。
「君がボクを売るんだ、そこに」
ラリーの作業の手が止った。
「オールドドメインがオールドドメインを鹿の園に売れるわけがないだろう?!」
「だから、振りをしてもらうんだってば。手引きは、クリストファーがしてくれる」
「え?誰だって?」
イーサン伯爵所有の最古のドメインの名が出て来て、ラリーは顔つきを険しくする。
「何、そんなに面白い?」
「顔?こんなときでも僕、笑っている?」
「うん」
「で、そのクリストファーって何者?君とどんな関係?」
「鹿の園の受付係。公爵のランクにいる二体、王のランクにいる一体のオールドドメイン担当だよ。彼も最初は男娼で、その次は教育係。客に出す前の男娼を教育していた。今の紳士的な姿からは想像できないけど、本当にサディスティックでさあ。このボクが頬を赤らめ、生まれたての子猫みたいに愛らしくなるほどだったよ」
「それは、……相当なんだろうね。でも、彼の手引きがあっても、契約は無理だろう」
「お試しでって十日ほど預けてくれればいい。で、ボクの働きがよかったら、契約に進むって話しの展開でお願い」
「ダニエル元伯爵がいながら、鹿の園に戻って何するつもり?」
「どうしても会いたい客がいるんだよ」
ルシウスは作業の手を止めた。
「約束をまだ果たしてもらってないからさ」
このUSBスティックといい、鹿の園への潜入といい、何を企んでいるんだか。
とラリーは不信に思う。
「わざわざ、鹿の園経由で会わなくてもいいだろう?」
「無理だよ。一般のオールドドメインじゃ、会えない相手だから」
「異国の王族とか、そういう御身分?男娼時代に、城でも買ってあげようといわれた?だったら、口約束だって」
「うるさいなっ!!」
ルシウスが突然声を荒げた。
「だから、嘘だったかどうか、確かめるんだろ?!」
「キレるポイントがさっぱり分からない」
とラリーは肩をすくめる。
「それに、館で荷物を受け取ったら帰るって言ってあっただろう?もう、結構時間が過ぎたし、気を揉んでいるはずだ」
ルシウスは、USBスティックをもくもくとケースに詰めながら、答える。
「ああ、それなら、大丈夫。アーサーに通信しておいたから。ラリーと意気投合したので、クラッシックシティーで遊ぶって。もしかしたら戻らないかもしれないって、ダニエルに言っておいてって」
「止めてくれよ。ダニエル元伯爵に誤解される!」
「もう、遅い」
ルシウスがピシリと言う。
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