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第七章 ラリー
160:ねえ、車を早く。山に行った後、鹿の園にも寄りたいんだ
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「車、呼んでくれた?まだ、来てないの?」
ルシウスは、両手にまた別の段ボール箱を持っている。蓋は開いていて、服が入っていた。
「その物々しい軍服はやめてもらっていい?ダニエルの服を着てよ。少しでかくて、少し丈が短いかもしれないけどさ」
ジャケットやシャツ、ズボンを無理やり渡される。その下から、箱いっぱいのUSBスティックが出て来た。
「なんで、僕がダニエル元伯爵の服を着なければならないんだい?それに、このUSBスティック、全部、さっきの配送ドローンに運ばせたの?」
「ううん。定期的に受け取ったものは一部で、ほとんどは空のUSBを一括で買ってボイスメモをコピーしたものだよ。全部で一万個あるかな」
ラリーは、もう一つのプラスティックケースいっぱいの段ボールを見る。大きさはUSBスティックを収めて多分ちょうどだ。
「分かった。このボイスメモが入ったUSBスティックをどこかに送ろうって魂胆だろう?データでやったほうが楽でよくないか?」
「それ、地味すぎ。派手にいかないと」
「データを送るのに、地味とか派手とかある?」
「あるの!ねえ、車を早く。山に行った後、鹿の園にも寄りたいんだ」
「何だって、鹿の園?」
さっきまで考えていたことを読まれた気分になり、ラリーの声が大きくなる。
ルシウスが、ニヤニヤ笑いながら言った。
「わ、ラリー、興味を示している。スケベそうな顔をしているけど、やっぱりスケベなんだね」
「で、山に行くって何しに?」
自動運転の車の中で、USBスティックをプラスティックのケースにせっせと詰めながら、ラリーは聞いた。軍服を脱いで、ダニエルの服を着ている。ルシウスの言う通り、少し大きくて、少し丈が短い。
リムジンを呼べと言われたので、呼んだはいいが、段ボール箱二つのせいで、内装の豪華さが台無しだ。
同じ作業をしながら、ルシウスも答える。
「ハイウィカムの傍の山で、壊れた配送ドローンを引き取って修理している奴がいる」
「クラッシックシティーから随分西のところにある街だね」
「そう。修理屋はサーシャって言うんだけど、そのドローンを使って幸せの種を撒きたいって言ったらいいよって」
「全人類とドメインが死滅するウイルスじゃなくて?」
「失礼な」
ルシウスが、唇を尖らせる。
「これを撒いて、どうするつもり?君にとって黒歴史なんじゃないの?不幸な過去とその見てくれを利用して、有名になりたいってこと?王宮に集まったオールドドメインに撒けば、一瞬で認知度が上がるよねえ。マスコミも大勢来ているんだし」
「見た目を裏切らない行動で感心した?」
とルシウスは小首を傾げながら可愛らしく聞いて来た。
ラリーは呆れた。
やっぱり、金と欲にまみれたドメインだ。
エドワードたちが大変なときに、自分のことしか考えていない。
ラリーは、プラスティックケースに入ったUSBスティックをカシャカシャと振る。
「遊んでないでさっさとやってよ。プラスティックケースに小さい穴があるでしょ?そこに紐も通すんだからね!」
ルシウスは、プラスティックケースの入った段ボールを箱を探って、黄色い紐の入った束を投げつけてくる。
ルシウスは、両手にまた別の段ボール箱を持っている。蓋は開いていて、服が入っていた。
「その物々しい軍服はやめてもらっていい?ダニエルの服を着てよ。少しでかくて、少し丈が短いかもしれないけどさ」
ジャケットやシャツ、ズボンを無理やり渡される。その下から、箱いっぱいのUSBスティックが出て来た。
「なんで、僕がダニエル元伯爵の服を着なければならないんだい?それに、このUSBスティック、全部、さっきの配送ドローンに運ばせたの?」
「ううん。定期的に受け取ったものは一部で、ほとんどは空のUSBを一括で買ってボイスメモをコピーしたものだよ。全部で一万個あるかな」
ラリーは、もう一つのプラスティックケースいっぱいの段ボールを見る。大きさはUSBスティックを収めて多分ちょうどだ。
「分かった。このボイスメモが入ったUSBスティックをどこかに送ろうって魂胆だろう?データでやったほうが楽でよくないか?」
「それ、地味すぎ。派手にいかないと」
「データを送るのに、地味とか派手とかある?」
「あるの!ねえ、車を早く。山に行った後、鹿の園にも寄りたいんだ」
「何だって、鹿の園?」
さっきまで考えていたことを読まれた気分になり、ラリーの声が大きくなる。
ルシウスが、ニヤニヤ笑いながら言った。
「わ、ラリー、興味を示している。スケベそうな顔をしているけど、やっぱりスケベなんだね」
「で、山に行くって何しに?」
自動運転の車の中で、USBスティックをプラスティックのケースにせっせと詰めながら、ラリーは聞いた。軍服を脱いで、ダニエルの服を着ている。ルシウスの言う通り、少し大きくて、少し丈が短い。
リムジンを呼べと言われたので、呼んだはいいが、段ボール箱二つのせいで、内装の豪華さが台無しだ。
同じ作業をしながら、ルシウスも答える。
「ハイウィカムの傍の山で、壊れた配送ドローンを引き取って修理している奴がいる」
「クラッシックシティーから随分西のところにある街だね」
「そう。修理屋はサーシャって言うんだけど、そのドローンを使って幸せの種を撒きたいって言ったらいいよって」
「全人類とドメインが死滅するウイルスじゃなくて?」
「失礼な」
ルシウスが、唇を尖らせる。
「これを撒いて、どうするつもり?君にとって黒歴史なんじゃないの?不幸な過去とその見てくれを利用して、有名になりたいってこと?王宮に集まったオールドドメインに撒けば、一瞬で認知度が上がるよねえ。マスコミも大勢来ているんだし」
「見た目を裏切らない行動で感心した?」
とルシウスは小首を傾げながら可愛らしく聞いて来た。
ラリーは呆れた。
やっぱり、金と欲にまみれたドメインだ。
エドワードたちが大変なときに、自分のことしか考えていない。
ラリーは、プラスティックケースに入ったUSBスティックをカシャカシャと振る。
「遊んでないでさっさとやってよ。プラスティックケースに小さい穴があるでしょ?そこに紐も通すんだからね!」
ルシウスは、プラスティックケースの入った段ボールを箱を探って、黄色い紐の入った束を投げつけてくる。
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