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第七章 ラリー
157:怒るってことは図星かな?
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「あ、そうだった。なら、ここで受け取れば?もう、特別区じゃないはずだ」
ラリーは再び小窓を少し開ける。
「寒いってば。閉めて」
とすぐさまルシウスが文句を言った。
「荷物を受け取ったら、したいことがあるんだ。それをラリーにも手伝って欲しくって」
「どうして、僕が?さあ、さっさとここで荷物を受け取って。王宮に帰るよ!」
当然のようなルシウスの物言いに、ラリーはイラッとした。
恵まれた美貌で、きっと鹿の園でも客に我儘放題で優雅に過ごしていたはずだ。今の所有者のダニエルは、細胞ラボを開業し成功しており、生活には全然困らなさそうだ。束縛するようなタイプには見えないし、さらにルシウスの我儘が助長されたのではないだろうか?
苦労知らずのオールドドメインは少ないはずだ。だから、ルシウスは希少な類にあたるだろう。
「だって、ラリーは自宅待機なんでしょう?家に帰ったって、ワーカーホリックさんはすることがないんじゃない?戦死した君を、たっての願いで、オールドドメインとして目覚めさせた元妻が与えてくれた部屋で一人でメソメソしたい気分なの?その元妻は世間身体のためだけに、その部屋を君に与えたのに?」
とっさにラリーは、ルシウスの襟首を掴んでいた。
だが、ルシウスは冷静だ。
「怒るってことは図星かな?」
「どうやって知った?」
「ボクには、闇ラボのお友達が多いからさ。彼らはシステムにも当然、詳しい。『調べて、お願い』って可愛く言えば、一時間で知りたい情報は集まる。ああ、いい機会だから教えといて上げるよ。闇ラボの連中に言わせれば、今、王立警ら隊で使っているシステムは、原始時代レベルだって。つまり、全部、筒抜けだから、早急に変えた方がいいってこと」
ラリーは、ルシウスの襟首を離した。腹いせに、馬車の背もたれに突き倒す。
「乱暴だなあ」
「僕を使って、何がしたい?」
「ちょっと、協力してもらいたいだけ。未成年設定のボクが、出歩くのは一体じゃ何かと不便だし。アーサーやベリル、バロンじゃ役不足。殿下は外を歩くだけで大注目される身分だし、ダニエルは絶対に反対するしね。で、自宅待機になった君に白羽の矢を立てた、と」
この男娼上がりのオールドドメイン、何を考えているのだろう。
全く読めない。
ルシウスが、足を組み替えた。
「ねえ。今の状況さ、王立警ら隊副隊長の君から見て、どう思う?ボクは、殿下がかなり不利だと思うんだよね。『オールドドメイン嫌悪派のエドワード王太子殿下に、待遇改善を願おう』って首相に言われて集まった彼らを、武力で追い払えば、ますます、殿下のドメイン嫌悪派の印象が強まる。今や、英国のドメイン産業は国内だけでなく、世界にも広がっている。いわば貴重な収入源だ。だから、これ以上のドメイン嫌悪派っていうイメージを強めたくないはず。とすると、首相が渡し舟を出して来て、和解って道でしょ。そして、今まで以上に首相の力が強くなってしまう」
ルシウスの意見は、ラリーの読みと一致している。
「殿下は、一歩出遅れたんだ。そして、オールドドメインがここまで不満を溜めていて、そして行動する力を持っているとも思っていなかった。首相が議会前に集まったオールドドメインに、コーヒーをサーブしながら、『タウンミーティングを開こう』って言う前に、ベリルの存在を世間に公表すべきだった。私の知らないところで勝手に複製が造られている、ドメインを野放しにしておくのは人間にとって危険だってね」
ルシウスがケタケタと笑い出す。
ラリーは再び小窓を少し開ける。
「寒いってば。閉めて」
とすぐさまルシウスが文句を言った。
「荷物を受け取ったら、したいことがあるんだ。それをラリーにも手伝って欲しくって」
「どうして、僕が?さあ、さっさとここで荷物を受け取って。王宮に帰るよ!」
当然のようなルシウスの物言いに、ラリーはイラッとした。
恵まれた美貌で、きっと鹿の園でも客に我儘放題で優雅に過ごしていたはずだ。今の所有者のダニエルは、細胞ラボを開業し成功しており、生活には全然困らなさそうだ。束縛するようなタイプには見えないし、さらにルシウスの我儘が助長されたのではないだろうか?
苦労知らずのオールドドメインは少ないはずだ。だから、ルシウスは希少な類にあたるだろう。
「だって、ラリーは自宅待機なんでしょう?家に帰ったって、ワーカーホリックさんはすることがないんじゃない?戦死した君を、たっての願いで、オールドドメインとして目覚めさせた元妻が与えてくれた部屋で一人でメソメソしたい気分なの?その元妻は世間身体のためだけに、その部屋を君に与えたのに?」
とっさにラリーは、ルシウスの襟首を掴んでいた。
だが、ルシウスは冷静だ。
「怒るってことは図星かな?」
「どうやって知った?」
「ボクには、闇ラボのお友達が多いからさ。彼らはシステムにも当然、詳しい。『調べて、お願い』って可愛く言えば、一時間で知りたい情報は集まる。ああ、いい機会だから教えといて上げるよ。闇ラボの連中に言わせれば、今、王立警ら隊で使っているシステムは、原始時代レベルだって。つまり、全部、筒抜けだから、早急に変えた方がいいってこと」
ラリーは、ルシウスの襟首を離した。腹いせに、馬車の背もたれに突き倒す。
「乱暴だなあ」
「僕を使って、何がしたい?」
「ちょっと、協力してもらいたいだけ。未成年設定のボクが、出歩くのは一体じゃ何かと不便だし。アーサーやベリル、バロンじゃ役不足。殿下は外を歩くだけで大注目される身分だし、ダニエルは絶対に反対するしね。で、自宅待機になった君に白羽の矢を立てた、と」
この男娼上がりのオールドドメイン、何を考えているのだろう。
全く読めない。
ルシウスが、足を組み替えた。
「ねえ。今の状況さ、王立警ら隊副隊長の君から見て、どう思う?ボクは、殿下がかなり不利だと思うんだよね。『オールドドメイン嫌悪派のエドワード王太子殿下に、待遇改善を願おう』って首相に言われて集まった彼らを、武力で追い払えば、ますます、殿下のドメイン嫌悪派の印象が強まる。今や、英国のドメイン産業は国内だけでなく、世界にも広がっている。いわば貴重な収入源だ。だから、これ以上のドメイン嫌悪派っていうイメージを強めたくないはず。とすると、首相が渡し舟を出して来て、和解って道でしょ。そして、今まで以上に首相の力が強くなってしまう」
ルシウスの意見は、ラリーの読みと一致している。
「殿下は、一歩出遅れたんだ。そして、オールドドメインがここまで不満を溜めていて、そして行動する力を持っているとも思っていなかった。首相が議会前に集まったオールドドメインに、コーヒーをサーブしながら、『タウンミーティングを開こう』って言う前に、ベリルの存在を世間に公表すべきだった。私の知らないところで勝手に複製が造られている、ドメインを野放しにしておくのは人間にとって危険だってね」
ルシウスがケタケタと笑い出す。
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