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第七章 ラリー
154:殿下に呼ばれていますので
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もっと、彼のことが知りたい。
もっと、彼の役に立ちたい。
だが、最近、バロン出現のお蔭で、その努力は一向に報われない。
大きなため息をつきながら、エドワードの自室に向かいかけていると、廊下の奥の扉から、背の高いほっそりした女性が出てくるのが見えた。
出て来たのはメアリーだ。
彼女は口元を押さえ、青白い顔をしている。
あの部屋はエドワードの自室なはずと思いながら、ラリーはメアリーに駆け寄っていく。
「メアリー様。どうされました?」
金の豊かな髪にすみれ色の目をした人形のような女性は、声を掛けたラリーに怪訝な顔をした。
「僕は、王立警ら隊副隊長のラリーです」
「そうなの。エドワード直轄部隊の方ね」
「お加減が優れないのですか?お顔が真っ青ですよ?」
ラリーが手を差し出すと、メアリーは素直に手を添えて来た。
おいおい、お嬢さん。具合が悪ければ、すぐに頼れて気楽なものだね。
とラリーは心の中で思う。
メアリーは、エドワードに会いによく王宮に来ていることをラリーは知っている。
未来の王妃なのだからと当然のように王宮内をフラフラし、母親であるアンとも仲がいい。
能天気すぎて、たまにエドワードに怒鳴られているようだが、「エドワード。エドワードったら!!」とまとわりつくことを止めない。
彼女は、オールドドメインでもなく、男でもない。
家柄は王族に次ぐ地位で、美人でスタイルもいい。
当たり前のようにエドワードと結ばれる権利を持っている。
ラリーははっきり言って、恵まれている彼女のことが、バロン以上に嫌いだった。
しかし、声をかけてしまった手前、このままにはしておけない。
「どこかで休まれますか?」
「この廊下の先にね、小さなキッチンがあるの。そこにお願い」
「そこでは、十分に休めないでしょう?いいのですか?」
「ええ」
そうまで言うなら、連れて行ってやろうと、ラリーはメアリーの背中を支え歩き出す。
メアリーに指示されて向かったキッチンは本当に小さかった。
キッチン台と、椋の素材の四人掛けのテーブル。それに四客の椅子が置かれただけで手いっぱいな広さだ。
「ここは、私の隠れ家。この王宮って広すぎて、誰も使っていない部屋がいくつもあるの。エドワードも知らないんじゃないかしら」
少し気分が良くなってきたのか喋り始めたメアリーに、ラリーは黙って椅子を引く。
「殿下と遅くまで夜遊びでもされていたんですか?大切なお身体なんですから……」
軽く嫌味を言いかけると、
「こんな身体なんだから、それはないわよ」
とメアリーが遮って来た。
こんな身体?
ウエストと胸が強調されたドレスは、細身のメアリーだと全然下品に見えない。
いい身体じゃないかと思いながら「そうですか。では」とラリーは薄笑い張り付けてその場を去ろうとした。
「殿下に呼ばれていますので」
「ええ。ありがとう」
小声で礼を言ったメアリーは、椋のテーブルの上で両手を組んで、そこに額を乗せた。背中が小刻みに震えていた。
その場を去りかけていたラリーは、足を止める。
もっと、彼の役に立ちたい。
だが、最近、バロン出現のお蔭で、その努力は一向に報われない。
大きなため息をつきながら、エドワードの自室に向かいかけていると、廊下の奥の扉から、背の高いほっそりした女性が出てくるのが見えた。
出て来たのはメアリーだ。
彼女は口元を押さえ、青白い顔をしている。
あの部屋はエドワードの自室なはずと思いながら、ラリーはメアリーに駆け寄っていく。
「メアリー様。どうされました?」
金の豊かな髪にすみれ色の目をした人形のような女性は、声を掛けたラリーに怪訝な顔をした。
「僕は、王立警ら隊副隊長のラリーです」
「そうなの。エドワード直轄部隊の方ね」
「お加減が優れないのですか?お顔が真っ青ですよ?」
ラリーが手を差し出すと、メアリーは素直に手を添えて来た。
おいおい、お嬢さん。具合が悪ければ、すぐに頼れて気楽なものだね。
とラリーは心の中で思う。
メアリーは、エドワードに会いによく王宮に来ていることをラリーは知っている。
未来の王妃なのだからと当然のように王宮内をフラフラし、母親であるアンとも仲がいい。
能天気すぎて、たまにエドワードに怒鳴られているようだが、「エドワード。エドワードったら!!」とまとわりつくことを止めない。
彼女は、オールドドメインでもなく、男でもない。
家柄は王族に次ぐ地位で、美人でスタイルもいい。
当たり前のようにエドワードと結ばれる権利を持っている。
ラリーははっきり言って、恵まれている彼女のことが、バロン以上に嫌いだった。
しかし、声をかけてしまった手前、このままにはしておけない。
「どこかで休まれますか?」
「この廊下の先にね、小さなキッチンがあるの。そこにお願い」
「そこでは、十分に休めないでしょう?いいのですか?」
「ええ」
そうまで言うなら、連れて行ってやろうと、ラリーはメアリーの背中を支え歩き出す。
メアリーに指示されて向かったキッチンは本当に小さかった。
キッチン台と、椋の素材の四人掛けのテーブル。それに四客の椅子が置かれただけで手いっぱいな広さだ。
「ここは、私の隠れ家。この王宮って広すぎて、誰も使っていない部屋がいくつもあるの。エドワードも知らないんじゃないかしら」
少し気分が良くなってきたのか喋り始めたメアリーに、ラリーは黙って椅子を引く。
「殿下と遅くまで夜遊びでもされていたんですか?大切なお身体なんですから……」
軽く嫌味を言いかけると、
「こんな身体なんだから、それはないわよ」
とメアリーが遮って来た。
こんな身体?
ウエストと胸が強調されたドレスは、細身のメアリーだと全然下品に見えない。
いい身体じゃないかと思いながら「そうですか。では」とラリーは薄笑い張り付けてその場を去ろうとした。
「殿下に呼ばれていますので」
「ええ。ありがとう」
小声で礼を言ったメアリーは、椋のテーブルの上で両手を組んで、そこに額を乗せた。背中が小刻みに震えていた。
その場を去りかけていたラリーは、足を止める。
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