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第六章 エドワード
145:ま、ベリル、頑張んな
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という呟きがエドワードの耳に聞こえた。
そして、辺りを見回し、輪の外で、礼儀上仕方なく立っているルシウスの傍に行く。
「え、ボクも?」
アンは、ベリルのときと同じようにルシウスの頬に触り、指輪をはめようとして止めた。
「一体、何?」
とルシウスは不思議顔だ。
「宝石に反応したのかもしれないな」
ダニエルはそう言って、床に散らばった宝石を拾って銀の箱に戻した。そして、それをベリルに渡す。
「俺も以前、アン女王にされたことがあるんですが、何か意味はあるのでしょうか?」
「だそうだ。アン女王、お答え願えますか?」
ダニエルが聞くと「ごきげんよう」と言って、アンは踵を返し、部屋をゆっくり出ていく。
「あ、お待ちください」
メアリーはその後を追った。
「こう言っちゃあ何だけど、変な人」
とルシウスが肩をすくめる。
「お前、言葉を慎め」
とダニエルがたしなめた。
「第三次世界大戦を乗り切れたのは、あの方の様々な決断があったお蔭だ。ギルバート国王を目の前で無くされ、悲しむ間もなく第三次世界大戦が始まって、心が癒える暇はなかったろうさ。なあ、エドワード」
急に話しを振られて、エドワードはむっつりした顔で頷く。
ああ、これは失敗したという顔で、ダニエルが別の話題を持ちだした。
「エドワード。あの指輪って、王家にありがちな伝説の指輪とかそいう類のものか?」
「その手のものは普段使いしない。あの指輪は、あれが気に入って使ってるファッションリングだ」
「あれ、ねえ」
指輪をはめられかけたルシウスは、消えて行ったアンを疑心の目で眺めている。
エドワードは、再びベリルの手に戻った銀の箱を眺める。
「試作品。それが欲しいのなら、くれてやろう。ただ、素直に条件の二つ目に従って貰う。間もなく、勲章授与式がある。お前はそれに同行しろ」
「そこに、ケビンがやってくるんだね?」
とアーサーが心配顔で言う。
「そうだ。奴は、私からベリルを紹介されることで、今までの悪事がばれつつあることに気付く。譲歩案を出してくるはずだ」
「例えば、二期目を目指すのは止めるとか?」
とルシウスが聞いてくる。
「私としては、政界から引退させたい」
「ふうん。殿下は、自分の複製が男娼をしていたという過去を世間に知られたくないし、ケビン首相も自分の悪事の責任を取りたくないから、内々で手を打とうって訳ね。そんなに上手くいくかなあ?」
「次の手も用意してある。だが、その手を使ってしまえば、誰も無傷ではいられない」
エドワードが淡々と語るのを、皆、黙って聞いていた。
ルシウスだけが、ヘアゴムでくくっていた髪をほどいて、クルクルと指で回して弄んで、パチンと天井に向けて飛ばす。
そして、「ま、ベリル、頑張んな」と軽い口調で励ました。
王族の公務には、勲章授与式という行事がある。
普段は、締め切られているホールを開放し、この一年で功績のあった者に勲章を与え、称える。
そして、辺りを見回し、輪の外で、礼儀上仕方なく立っているルシウスの傍に行く。
「え、ボクも?」
アンは、ベリルのときと同じようにルシウスの頬に触り、指輪をはめようとして止めた。
「一体、何?」
とルシウスは不思議顔だ。
「宝石に反応したのかもしれないな」
ダニエルはそう言って、床に散らばった宝石を拾って銀の箱に戻した。そして、それをベリルに渡す。
「俺も以前、アン女王にされたことがあるんですが、何か意味はあるのでしょうか?」
「だそうだ。アン女王、お答え願えますか?」
ダニエルが聞くと「ごきげんよう」と言って、アンは踵を返し、部屋をゆっくり出ていく。
「あ、お待ちください」
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「こう言っちゃあ何だけど、変な人」
とルシウスが肩をすくめる。
「お前、言葉を慎め」
とダニエルがたしなめた。
「第三次世界大戦を乗り切れたのは、あの方の様々な決断があったお蔭だ。ギルバート国王を目の前で無くされ、悲しむ間もなく第三次世界大戦が始まって、心が癒える暇はなかったろうさ。なあ、エドワード」
急に話しを振られて、エドワードはむっつりした顔で頷く。
ああ、これは失敗したという顔で、ダニエルが別の話題を持ちだした。
「エドワード。あの指輪って、王家にありがちな伝説の指輪とかそいう類のものか?」
「その手のものは普段使いしない。あの指輪は、あれが気に入って使ってるファッションリングだ」
「あれ、ねえ」
指輪をはめられかけたルシウスは、消えて行ったアンを疑心の目で眺めている。
エドワードは、再びベリルの手に戻った銀の箱を眺める。
「試作品。それが欲しいのなら、くれてやろう。ただ、素直に条件の二つ目に従って貰う。間もなく、勲章授与式がある。お前はそれに同行しろ」
「そこに、ケビンがやってくるんだね?」
とアーサーが心配顔で言う。
「そうだ。奴は、私からベリルを紹介されることで、今までの悪事がばれつつあることに気付く。譲歩案を出してくるはずだ」
「例えば、二期目を目指すのは止めるとか?」
とルシウスが聞いてくる。
「私としては、政界から引退させたい」
「ふうん。殿下は、自分の複製が男娼をしていたという過去を世間に知られたくないし、ケビン首相も自分の悪事の責任を取りたくないから、内々で手を打とうって訳ね。そんなに上手くいくかなあ?」
「次の手も用意してある。だが、その手を使ってしまえば、誰も無傷ではいられない」
エドワードが淡々と語るのを、皆、黙って聞いていた。
ルシウスだけが、ヘアゴムでくくっていた髪をほどいて、クルクルと指で回して弄んで、パチンと天井に向けて飛ばす。
そして、「ま、ベリル、頑張んな」と軽い口調で励ました。
王族の公務には、勲章授与式という行事がある。
普段は、締め切られているホールを開放し、この一年で功績のあった者に勲章を与え、称える。
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