144 / 281
第六章 エドワード
144:私の試作品なら、もう少し綺麗な言葉遣いをしろ
しおりを挟む
「わ、私?」
「おいおい。ベリル。不調か?そうなのか?じゃあ、ダニエル先生が診てやろう」
とダニエルも傍に寄ってくる。
エドワードはジロリとメアリーを見た。
「子供には不思議な力があって、初期の妊娠でも分かる者がいると聞く。まさか、お前」
「なわけないじゃないっ!こんな、身体で」
メアリーは、エドワードに噛みつくように言うと、ベリルの肩を叩いた。
「ダニエルから通信で話は少し聞いたわ。エドワードのドメインなんて、同情しちゃう。私はメアリー。エドワードとアーサーとダニエルの幼馴染よ。仲良くしてね」
「う、うん」
アンとは初対面、メアリーはお母さんじゃないと二回も自分の発言を否定され、ベリルは戸惑っている。
しかし、気を取り直したのか、アンに向かって、銀色の箱を開けた。
「そうだ。アン女王。これ、持って来たんだ」
そこには、白、黒、赤、青、緑、黄色と六色の小さな宝石が並んでいた。
アンは、無言でそれを眺めている。
「お前、これ」
エドワードはアーサーの顔を見る。
アーサーは、うんとだけ頷いた。
自分の母親がドメインであると告げられた日、アンから貰った宝石だった。
ヴァレットの女性の告白が余りにも衝撃的で、存在を忘れてしまったが、アーサーが大切に保管していたらしい。
「礼は言わないぞ」
とエドワードは言うと、また静かにアーサーが頷く。
「何だよ、大切じゃないのか?じゃあ、コレとコレとオレとアーサーにくれよ」
ベリルは、銀の箱の左端にある緑と黄色の宝石を指さした。
「あんたがいいって言わないから、オレ、このうちのどっちかをアーサーからいつまでたっても貰えないんだ」
あの晩、あんなことをさせられておいて、今こうやって堂々とねだってくる神経がエドワードには信じられなかった。
差し出された銀の箱を、片手でパンッと叩き落とす。
床に落ちた箱が衝撃で弾んで、宝石が飛び散った。
「ひでえっ」
「私の試作品なら、もう少し綺麗な言葉遣いをしろ」
「オレはベリルで、あんたじゃないっ!」
エドワードは無言で、ベリルのシャツの襟を掴んだ。
引っぱたいてやりたい。
しかし、黒い布地に包まれた細い手が二人の間にぬうっと入ってくる。
アンが止めに入ったのだ。
エドワードがベリルを突き放すと、ベリルは後ろにいたアーサーに支えられた。
「大丈夫、ベリル?」
「うん。でも、ひどすぎる。アーサーが大切に保管していた宝石を、こんな風に床にぶちまけるだなんて。アン女王だってそう思う……」
必死に訴えるベリルに、アンは手を伸ばし、頬にそっと触れた。
「え?えっと、あの」
「大丈夫よ、ベリル。アン女王から親愛の印よ」
とメアリーが補足する。
暫く、ベリルの頬を触ったアンは、自分の指から指輪を外し、ベリルの指にはめかけ、ふっと止める。
「違う」
「おいおい。ベリル。不調か?そうなのか?じゃあ、ダニエル先生が診てやろう」
とダニエルも傍に寄ってくる。
エドワードはジロリとメアリーを見た。
「子供には不思議な力があって、初期の妊娠でも分かる者がいると聞く。まさか、お前」
「なわけないじゃないっ!こんな、身体で」
メアリーは、エドワードに噛みつくように言うと、ベリルの肩を叩いた。
「ダニエルから通信で話は少し聞いたわ。エドワードのドメインなんて、同情しちゃう。私はメアリー。エドワードとアーサーとダニエルの幼馴染よ。仲良くしてね」
「う、うん」
アンとは初対面、メアリーはお母さんじゃないと二回も自分の発言を否定され、ベリルは戸惑っている。
しかし、気を取り直したのか、アンに向かって、銀色の箱を開けた。
「そうだ。アン女王。これ、持って来たんだ」
そこには、白、黒、赤、青、緑、黄色と六色の小さな宝石が並んでいた。
アンは、無言でそれを眺めている。
「お前、これ」
エドワードはアーサーの顔を見る。
アーサーは、うんとだけ頷いた。
自分の母親がドメインであると告げられた日、アンから貰った宝石だった。
ヴァレットの女性の告白が余りにも衝撃的で、存在を忘れてしまったが、アーサーが大切に保管していたらしい。
「礼は言わないぞ」
とエドワードは言うと、また静かにアーサーが頷く。
「何だよ、大切じゃないのか?じゃあ、コレとコレとオレとアーサーにくれよ」
ベリルは、銀の箱の左端にある緑と黄色の宝石を指さした。
「あんたがいいって言わないから、オレ、このうちのどっちかをアーサーからいつまでたっても貰えないんだ」
あの晩、あんなことをさせられておいて、今こうやって堂々とねだってくる神経がエドワードには信じられなかった。
差し出された銀の箱を、片手でパンッと叩き落とす。
床に落ちた箱が衝撃で弾んで、宝石が飛び散った。
「ひでえっ」
「私の試作品なら、もう少し綺麗な言葉遣いをしろ」
「オレはベリルで、あんたじゃないっ!」
エドワードは無言で、ベリルのシャツの襟を掴んだ。
引っぱたいてやりたい。
しかし、黒い布地に包まれた細い手が二人の間にぬうっと入ってくる。
アンが止めに入ったのだ。
エドワードがベリルを突き放すと、ベリルは後ろにいたアーサーに支えられた。
「大丈夫、ベリル?」
「うん。でも、ひどすぎる。アーサーが大切に保管していた宝石を、こんな風に床にぶちまけるだなんて。アン女王だってそう思う……」
必死に訴えるベリルに、アンは手を伸ばし、頬にそっと触れた。
「え?えっと、あの」
「大丈夫よ、ベリル。アン女王から親愛の印よ」
とメアリーが補足する。
暫く、ベリルの頬を触ったアンは、自分の指から指輪を外し、ベリルの指にはめかけ、ふっと止める。
「違う」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる