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第六章 エドワード

144:私の試作品なら、もう少し綺麗な言葉遣いをしろ

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「わ、私?」
「おいおい。ベリル。不調か?そうなのか?じゃあ、ダニエル先生が診てやろう」
とダニエルも傍に寄ってくる。
エドワードはジロリとメアリーを見た。
「子供には不思議な力があって、初期の妊娠でも分かる者がいると聞く。まさか、お前」
「なわけないじゃないっ!こんな、身体で」
メアリーは、エドワードに噛みつくように言うと、ベリルの肩を叩いた。
「ダニエルから通信で話は少し聞いたわ。エドワードのドメインなんて、同情しちゃう。私はメアリー。エドワードとアーサーとダニエルの幼馴染よ。仲良くしてね」
「う、うん」
アンとは初対面、メアリーはお母さんじゃないと二回も自分の発言を否定され、ベリルは戸惑っている。
しかし、気を取り直したのか、アンに向かって、銀色の箱を開けた。
「そうだ。アン女王。これ、持って来たんだ」
そこには、白、黒、赤、青、緑、黄色と六色の小さな宝石が並んでいた。
アンは、無言でそれを眺めている。
「お前、これ」
エドワードはアーサーの顔を見る。
アーサーは、うんとだけ頷いた。
自分の母親がドメインであると告げられた日、アンから貰った宝石だった。
ヴァレットの女性の告白が余りにも衝撃的で、存在を忘れてしまったが、アーサーが大切に保管していたらしい。
「礼は言わないぞ」
とエドワードは言うと、また静かにアーサーが頷く。
「何だよ、大切じゃないのか?じゃあ、コレとコレとオレとアーサーにくれよ」
ベリルは、銀の箱の左端にある緑と黄色の宝石を指さした。
「あんたがいいって言わないから、オレ、このうちのどっちかをアーサーからいつまでたっても貰えないんだ」
あの晩、あんなことをさせられておいて、今こうやって堂々とねだってくる神経がエドワードには信じられなかった。
差し出された銀の箱を、片手でパンッと叩き落とす。
床に落ちた箱が衝撃で弾んで、宝石が飛び散った。
「ひでえっ」
「私の試作品なら、もう少し綺麗な言葉遣いをしろ」
「オレはベリルで、あんたじゃないっ!」
エドワードは無言で、ベリルのシャツの襟を掴んだ。
引っぱたいてやりたい。
しかし、黒い布地に包まれた細い手が二人の間にぬうっと入ってくる。
アンが止めに入ったのだ。
エドワードがベリルを突き放すと、ベリルは後ろにいたアーサーに支えられた。
「大丈夫、ベリル?」
「うん。でも、ひどすぎる。アーサーが大切に保管していた宝石を、こんな風に床にぶちまけるだなんて。アン女王だってそう思う……」
必死に訴えるベリルに、アンは手を伸ばし、頬にそっと触れた。
「え?えっと、あの」
「大丈夫よ、ベリル。アン女王から親愛の印よ」
とメアリーが補足する。
暫く、ベリルの頬を触ったアンは、自分の指から指輪を外し、ベリルの指にはめかけ、ふっと止める。
「違う」
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