【完結】王と伯爵に捧げる七つの指輪

遊佐ミチル

文字の大きさ
上 下
135 / 280
第六章 エドワード

135:次期国王に凌辱されかけた、とあいつ、ネットフィリップスあたりに垂れこむだろうか

しおりを挟む
本当に長く男娼をやってきたのかと言うほど、バロンの受け方は拙く、壁に押し付けた身体は、棒のように硬くなっている。
舌を入れて、口腔をまさぐると、「ンアッ、殿下、ンアッ」と我慢できない嬌声を漏らしながら、必死にエドワードに呼びかけてくる。
バロンの手が、エドワードの両腕を掴んだ。
指がそこに食い込んでくる。
止めて欲しいという、声にならない意思表示がそこに感じられた。
「すまん」
エドワードは、我に返ってバロンから唇を離す。
彼の目には薄く涙の膜が張っており、直視することができなかった。
茫然としているバロンを置き去りにして、バスルームを出る。
今夜は、全く自分をコントロールできそうにない。
頭を冷やすため、ガウンを羽織ってバルコニーに出た。
外は雪がチラチラと降っている。月が出ているが、雲が多く、ぼんやりとした光を放っていた。
涼んでいると、扉が開く音がして、バロンがバスルームから出て来て、自分の部屋に走って入っていくのが見えた。
傷つけてしまった。
あんなことをするつもりはなかった。
ベリルには湧かなかった罪悪感が、エドワードの心を占拠していく。
「次期国王に凌辱されかけた、とあいつ、ネットフィリップスあたりに垂れこむだろうか」
そう呟いたら、笑えてきた。
なんと不自由な身分だろう。
口づけ一つで、お茶の間の一大ニュースだ。
元々無いようなものだったかった好感度はマイナスにめり込み、きっと首相は「エドワード王太子殿下は次期国王にはふさわしくありませんね。アン女王の続投は続きそうです」と手を叩いて喜ぶ。
全く笑えない状況なのに、エドワードは喉を鳴らして、寝室に向かう。
部屋を暗くしてベッドに横たわり、まだ滾りを残している雄を掴んで、上下させる。銀色の包みは、封を切って傍らに置いておいた。
さっさと出して、ダニエルに渡し、寝てしまおう。
こんな状態では、何一つまともな思考などできない。
「ンッッツ、クッ」
枕を腰に当て、ベッドの背もたれにもたれた。ブランケットで腰を隠しその下で激しく動かすが、なかなか兆しはやってこない。
いつも忙しくて、自慰よりも睡眠時間のほうが優先なエドワードは、他の成人男性より圧倒的に回数が少ない。
かといって、やり方を忘れてしまった訳でもないのに、雄は硬く張り詰めるばかりで、終わりは見えない。
「クッソ。ッツ」
息が荒くなってきた。
もう、出すことしか考えられない。
あと、少しだ。
あと、少しなはずなのに……。
息が乱れ顎を上げて呼吸をしていると、突然、肩を揺さぶられた。
「殿下、あのっ。大丈夫ですか?」
闇の中で、バロンの声がする。
「苦しいのですか?前みたいな過呼吸ですか?」
きっと、声をこらして喘いでいるのを勘違いして、駆け付けたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

丸出しの恥部は身悶えに合わせ敵達の前で踊る

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

無防備な恥部は痒みと快楽で嬲られる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

捜査員は薬を用いた尋問に鳴き叫ばされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

処理中です...