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第五章 アーサー
122:痛てーな。このロシアのエセ貴族!!
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ロシアでは何代も続いた宝石商で、父の代で急激に規模は大きくなった。革命で半分ほどに資産は減ってしまったが、父は新天地で再起を図ろうとしているのは、幼心にも分かっていた。
だから、真実かどうか聞けやしない。
肩を組むと見せかけて押し倒されたり、後ろの席から小突かれたり、「エセ貴族、エセ貴族」と囁かれたり。
地味ないじめは、アーサーにボディブローのように利いてきて、口数を少なくさせていった。
当のエドワードは、王宮では優しいが、学校では助けてくれない。
きっとギルバートやアンから命令されたから、嫌々傍に置いているだけなのだろう。
そんな生活が数か月続き、アーサーは耐えられなくなった。
もう、こんな学校通いたくない。
エドワードの傍付きも限界だ。
授業の合間にいつものからかいが始まって、アーサーは我慢の限界を超えてしまった。
メーターが振り切れたのは、「エドワード王太子殿下もきっと、ロシアのエセ貴族に宝石を貰って買収されたんだ」という言葉だった。
アーサーは、その子に掴みかかってく。
「痛てーな。このロシアのエセ貴族!!」
「エドワード王太子殿下は、関係ないだろっ!」
つかみ合いのケンカに、他の子供が合わさってくる。
アーサーがもみくちゃにされる様子を、黙ってエドワードは見ている。
助けてくれなんて思わない。
明日にはこの学校から離れられるだろうからせいせいする。
と思っていると、なんと、エドワードがアーサーに加勢してきた。
最後には、クラスメイト全員を巻き込んだ大ケンカになってしまい、結局、ケンカを仕掛けた者、加わった者、止めずに黙って見ていた者、つまり教室にいた全員がお咎めを受け、そして首謀者たちは親を呼ばれる羽目になった。
「エドワード王太子殿下、ごめんなさい」
きっとエドワードは、次期国王だからアーサーを見捨てられないと思って義務から助けたに違いない。
学校の応接室で、親を待ちながら、アーサーはエドワードに平謝りをする。
「もう、いい。これで、教室の奴らが、どんな人間なのか分かったから」
と顔に青いアザを作りながらエドワードは平然としている。
「ダニエルに、周りの人間の出方をよく見とけと言われたんだ。こんなことをして何になると思ったが、あいつに言う通りにして役に立った。それに、お前のことを試していたところもあった」
「僕を?」
「言われっぱなしで抵抗一つできないのなら、私の傍にいるのは、酷でしかない。でも、やり返した。見ていてスカッとした」
「エドワード王太子殿下~」
アーサーの目にじわっと涙が浮いてくる。
「今から、エドワードと呼ぶのを許す」
「ええっ?」
彼を名前で呼ぶのは、エドワードの両親、それに、ダニエルとメアリーしか許されていない。学校の教師だって、彼のことは、エドワード王太子殿下と呼ぶ。
つまり、やけっぱちのアーサーの行動が功を奏して、エドワードに真の友人と認められてしまったようだ。
「嫌なのか?」
「嫌じゃないです、嬉しいっ」
だから、真実かどうか聞けやしない。
肩を組むと見せかけて押し倒されたり、後ろの席から小突かれたり、「エセ貴族、エセ貴族」と囁かれたり。
地味ないじめは、アーサーにボディブローのように利いてきて、口数を少なくさせていった。
当のエドワードは、王宮では優しいが、学校では助けてくれない。
きっとギルバートやアンから命令されたから、嫌々傍に置いているだけなのだろう。
そんな生活が数か月続き、アーサーは耐えられなくなった。
もう、こんな学校通いたくない。
エドワードの傍付きも限界だ。
授業の合間にいつものからかいが始まって、アーサーは我慢の限界を超えてしまった。
メーターが振り切れたのは、「エドワード王太子殿下もきっと、ロシアのエセ貴族に宝石を貰って買収されたんだ」という言葉だった。
アーサーは、その子に掴みかかってく。
「痛てーな。このロシアのエセ貴族!!」
「エドワード王太子殿下は、関係ないだろっ!」
つかみ合いのケンカに、他の子供が合わさってくる。
アーサーがもみくちゃにされる様子を、黙ってエドワードは見ている。
助けてくれなんて思わない。
明日にはこの学校から離れられるだろうからせいせいする。
と思っていると、なんと、エドワードがアーサーに加勢してきた。
最後には、クラスメイト全員を巻き込んだ大ケンカになってしまい、結局、ケンカを仕掛けた者、加わった者、止めずに黙って見ていた者、つまり教室にいた全員がお咎めを受け、そして首謀者たちは親を呼ばれる羽目になった。
「エドワード王太子殿下、ごめんなさい」
きっとエドワードは、次期国王だからアーサーを見捨てられないと思って義務から助けたに違いない。
学校の応接室で、親を待ちながら、アーサーはエドワードに平謝りをする。
「もう、いい。これで、教室の奴らが、どんな人間なのか分かったから」
と顔に青いアザを作りながらエドワードは平然としている。
「ダニエルに、周りの人間の出方をよく見とけと言われたんだ。こんなことをして何になると思ったが、あいつに言う通りにして役に立った。それに、お前のことを試していたところもあった」
「僕を?」
「言われっぱなしで抵抗一つできないのなら、私の傍にいるのは、酷でしかない。でも、やり返した。見ていてスカッとした」
「エドワード王太子殿下~」
アーサーの目にじわっと涙が浮いてくる。
「今から、エドワードと呼ぶのを許す」
「ええっ?」
彼を名前で呼ぶのは、エドワードの両親、それに、ダニエルとメアリーしか許されていない。学校の教師だって、彼のことは、エドワード王太子殿下と呼ぶ。
つまり、やけっぱちのアーサーの行動が功を奏して、エドワードに真の友人と認められてしまったようだ。
「嫌なのか?」
「嫌じゃないです、嬉しいっ」
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