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第五章 アーサー
109:ごめん。オレ、アーサーの前に、他のお客で実験した
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すると、シファーチェが珍しく情けない表情をした。
「オレねー。たまにああなっちゃうんだ。明らかに間違えているのに、正せないときの、気持ちの悪い感じって言ったらアーサーに伝わる?あれの物凄いバージョンに、ときたま襲われるんだ。こんな場所にいるのはおかしいって。こんなことをされるのは間違っているって。止めようにない怒りみたいなのが湧いて来て、処理しきれなくて泣いてしまう」
「心の底からの吐露と感じたよ」
アーサーは、ベリルの額に口づけて、おやすみのサインを送る。
「男娼を抱きに来る場所なのに、抱かないって、アーサーって変な奴」
堅苦しい敬語も取れて、シファーチェはリラックスした様子で、アーサーに抱き付いて来る。
「身体を重ねることはいつでもできる。だったら僕は別の方法で君の記憶に残りたい。なーんてね、格好つけたいだけなんだけど」
今までたくさんの男娼と身体を重ねて来た。シファーチェはその中でも、抜きんでた魅力を感じる。
早く自分の物にしてしまいたい、その身体に跡を残したいと雄の欲求は高まるばかりだが、あの晩の切実な叫びを聞くと、彼の気持ちを尊重したい方が勝る。
「君を買い取りたい客が、チラホラ出始めたと聞いた。でも、鹿の園は君が王のランクになるまでは売ることはないだろうなあ。今までの売れっ子もそうだったし」
「オレが王に?だって、不動のルシウスがいるよ?」
「ああ、あの悪魔っぽい子ね」
「アーサーは、ルシウスとも寝た?」
「……あー、はい。寝ました」
「バロンとも?」
「……寝ました」
「そんな、すまなさそうな顔しなくていいのに」
とシファーチェが寝返りを打ち、アーサーに背中を向ける。
「ごめん。シファーチェ。怒った?不愉快な気分にさせた?じゃあ、お詫びに何かさせて欲しい」
「何かって?」
「何でもいいよ。いつも鹿の園で会っているから、外出でもしてみる?オペラを一緒に見に行くとか、それとも、買い物にする?」
「本当に、何でもいいのか?鹿の園が禁止していることでも?」
「例えば、どんなこと?」
背中を向けていたシファーチェが、再びアーサーの方を向き、身体を少し起こしてアーサーの胸に肘をついてもたれた。
「アーサーの館に、遊びに行きたい。だから、住所を教えて」
パーティーでもない限り、鹿の園の男娼が客の館に行くことは、禁じられている。外出で許可されるのは大勢の目のある所、もしくは公共の場所だ。
それでもアーサーは「いいよ」と頷く。
「本当に??断らないの?何で??」
言い出したシファーチェが驚いている。
名刺を取り出して、シファーチェに渡した。
「よかった、紙の名刺も持っていて。データの名刺だと、インストールした途端、怖い教育係にバレてしまうものね」
アーサーは言うが、シファーチェは貰った名刺に夢中だ。
そして、抱き付いてくる。
「ごめん。オレ、アーサーの前に、他のお客で実験した。どんなに優しいお客でも、それはできないって言われた。それって、男娼が館にいきなり来たら困るって意味なんだろ?」
「オレねー。たまにああなっちゃうんだ。明らかに間違えているのに、正せないときの、気持ちの悪い感じって言ったらアーサーに伝わる?あれの物凄いバージョンに、ときたま襲われるんだ。こんな場所にいるのはおかしいって。こんなことをされるのは間違っているって。止めようにない怒りみたいなのが湧いて来て、処理しきれなくて泣いてしまう」
「心の底からの吐露と感じたよ」
アーサーは、ベリルの額に口づけて、おやすみのサインを送る。
「男娼を抱きに来る場所なのに、抱かないって、アーサーって変な奴」
堅苦しい敬語も取れて、シファーチェはリラックスした様子で、アーサーに抱き付いて来る。
「身体を重ねることはいつでもできる。だったら僕は別の方法で君の記憶に残りたい。なーんてね、格好つけたいだけなんだけど」
今までたくさんの男娼と身体を重ねて来た。シファーチェはその中でも、抜きんでた魅力を感じる。
早く自分の物にしてしまいたい、その身体に跡を残したいと雄の欲求は高まるばかりだが、あの晩の切実な叫びを聞くと、彼の気持ちを尊重したい方が勝る。
「君を買い取りたい客が、チラホラ出始めたと聞いた。でも、鹿の園は君が王のランクになるまでは売ることはないだろうなあ。今までの売れっ子もそうだったし」
「オレが王に?だって、不動のルシウスがいるよ?」
「ああ、あの悪魔っぽい子ね」
「アーサーは、ルシウスとも寝た?」
「……あー、はい。寝ました」
「バロンとも?」
「……寝ました」
「そんな、すまなさそうな顔しなくていいのに」
とシファーチェが寝返りを打ち、アーサーに背中を向ける。
「ごめん。シファーチェ。怒った?不愉快な気分にさせた?じゃあ、お詫びに何かさせて欲しい」
「何かって?」
「何でもいいよ。いつも鹿の園で会っているから、外出でもしてみる?オペラを一緒に見に行くとか、それとも、買い物にする?」
「本当に、何でもいいのか?鹿の園が禁止していることでも?」
「例えば、どんなこと?」
背中を向けていたシファーチェが、再びアーサーの方を向き、身体を少し起こしてアーサーの胸に肘をついてもたれた。
「アーサーの館に、遊びに行きたい。だから、住所を教えて」
パーティーでもない限り、鹿の園の男娼が客の館に行くことは、禁じられている。外出で許可されるのは大勢の目のある所、もしくは公共の場所だ。
それでもアーサーは「いいよ」と頷く。
「本当に??断らないの?何で??」
言い出したシファーチェが驚いている。
名刺を取り出して、シファーチェに渡した。
「よかった、紙の名刺も持っていて。データの名刺だと、インストールした途端、怖い教育係にバレてしまうものね」
アーサーは言うが、シファーチェは貰った名刺に夢中だ。
そして、抱き付いてくる。
「ごめん。オレ、アーサーの前に、他のお客で実験した。どんなに優しいお客でも、それはできないって言われた。それって、男娼が館にいきなり来たら困るって意味なんだろ?」
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