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第四章 ダニエル

100:お前たちは、死人を毎日、目にすることが無くて、羨ましい

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テロリストは中東の者で、世界をリードする英国の王ギルバートが殺され、国論は一気に戦争賛成へと傾いた。しかし、次期国王エドワードはまだ十二才で指揮を取れる年齢ではなく、しかもテロの爆風で昏睡状態だった。
臨時指揮権が議会に移され、英国は加速度的に軍国色が強くなっていった。
このままでは、王家か飾りになってしまう。
テロの爆風で昏睡状態だったアンが目を覚まし事態を知り、軽傷だったダニエルの父親に伝えた。
極秘裏に進めていた核細胞データの実験を進めてほしいと。そして、その核細胞データは私のを使って欲しいと。そして、核細胞データと使い複製が出来上がると同時に息を引き取った。
あと一歩のところまで来ていた細胞研究は、アンの申し出により一気に進んだ。
当時、人道的には許されなかった計画を進めたのは、現首相で当時、国防総省長官であったケビン。そして、王立細胞研究所所長のダニエルの父親だ。
一年後、アンの複製が出来上がった。
複製はドメインと呼ばれるようになった。
あの頃のアンは、今のニュードメインよりも機能が劣り、おかしなことばかりしでかした。しかし、黒いベールをかぶせて、事情を知っている王立細胞研究所の人間をヴァレットとしフォローをすると、夫を目の前でテロで亡くし少し心を病んだ女性と世間は見るようになった。
こうやって世界最古のオールドドメインが出来上がったのだ。
しかし、テロの爆風で昏睡状態だったエドワードにすぐその事実は伝えられず、彼がそのことを知ったのは、一年も後だった。
生きているとばかり思っていた母親が実は核細胞データ使って複製した偽物と知ったエドワードは、明らかに狂った。
粗暴になり、やがて感情を表に表さなくなり、先に目覚めていたダニエルやアーサーでは彼を抑えきれなかった。
やっと落ち着いて、ダニエルやアーサーに向かってまともに喋った言葉が、
「お前たちは、死人を毎日、目にすることが無くて、羨ましい」
だった。
深すぎる言葉をしっかり受け止めてやるべきだったとダニエルはずっと後悔しているが、テロで痛んだ身体が回復すると王立細胞研究所の仕事が待っていた。
ドメインのアンの教育とともに、始まろうとしている第三次世界大戦に向けての、オールドドメインのさらなる生産だ。時間はいくらあっても足りなかった。
ここでも指揮を取ったのは、ダニエルの父親とケビンで、次期国王エドワードには何も知らされず、事は極秘裏に進められた。
やがて第三次世界大戦が勃発し、なかなか終わらない戦争に、当初は高価なオールドドメインが、そして、数年後には安価に大量生産できるようになったニュードメインが戦場に投入された。
英国が先頭にたち、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと同盟を結び、中東諸国と戦った戦争は、辛くも英国側の勝利に終わった。
だが、平和になって気づけは、世界中に新たな種、ドメインが溢れていた。
法の整備がまるで追いついていないので、人間対ドメインのいざこざも起っている。
肉体的に優れたオールドドメインが束になって人間にかかってきたらどうなるのか?
なぜ、オールドドメインは人間の細胞を使用しているのに、人間の所有物なのか?
人間の法律を適用し、人間と同じ生活をすることは認められないのか?
など、様々な問題が噴出している。
こんなセンシティブな事案は、本来ゆっくりドメインという存在を議論し認知させた上で行うものだが、時代がそうさせなかった。
そして、ドメインの生産は、もはや完全に新時代の産業になっていた。世界一、細胞研究が進んでいて、ドメインの生産技術が高い英国の動きに世界が注目している。
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