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第四章 ダニエル
94:どっからその自信
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「ルシウス、お前さ。この仕事を天職だと思って、毎日励んでいるわけじゃねえだろ?俺だって会えない時間、お前が他の客に抱かれているかと思うと気が狂いそうになる。だから、いっそのこと、スパッとこの仕事、止めねえか?」
すると、ルシウスがダニエルの足を蹴った。
「ドメイン法一条。ドメインは必ず所有者を持って存在し、所有者の命令に従う。ボクの所有者は、あのイタリア人のいかすかないオーナー」
「俺が買い取る」
「ええっ?!だって、君、アルバイトなんだろ。どうにかこうにか工面して、ボクの元に通っているだろ?きっとよくないところから借りた金が返せなくなって、そのうち、ボクに泣きついてきて……」
「ルシウス君。勝手なストーリーを作るな」
ダニエルはグリグリとルシウスの頭を撫でまわす。
「らしくないって言われると思ってなかなか言えなかったんだが、俺、爵位持ち。ちょっとやらかして剥奪されちゃったけどな。あと、王立細胞研究所所長。これもちょっとやらして退職」
「嘘だ、嘘だ。そんなのあり得ないよ。嘘をつくならもっと上手について欲しんだけど?!」
訳が分からなくなったのか、ルシウスは、ゴンゴンとダニエルの胸に額をぶつけてくる。
「イテテテッ。お前は発情期の鹿か!オーナーに言ったら、いい頃合いじゃないかって返事だった。びっくりする額を提示されたけどな」
「どうするの?」
「テロに遭ったときの王家からの見舞金と王立細胞研究所の退職金でお前の買い取りはなんとかなる」
「ボクが、耐用末期になったら?スクリーニング費用相当かかるよ?」
「お前が、スクリーニングで記憶を失くしてしまうのは嫌だ。けれど、お前自身を失うのはもっと嫌だ。だから、ラボを開いて繁盛させる」
「どっからその自信」
「ルシウス。承諾の返事は?」
「舞い上がってるところに水を差すようで悪いけど、買い取られて、やっぱ飽きたって所有者に言われて出戻って来た男娼、いっぱい知っているよ。それに、ボクは、色んなところから申し出があったけど、断って来た。どんどんボクの買い取り価格は値上がりしていって、今やプレミア状態」
「じゃあ、オレが初めてルシウス君の承諾を受ける人間になるんだ」
「そのルシウス君っていうの、止めて」
「ハハハ。照れてやがる」
ダニエルはルシウスの額に唇を落とす。
「もう少し、この麻薬みたいな恋を楽しみたかったのに、ダニエルのせいで、終わりが早まっちゃったじゃないか」
「新しく何か始まるかもしれないぜ?」
ルシウスはダニエルが買い取りを申し出ても飛びついて喜んだり、涙を流したりはしないと思っていたが、こんなにボルテージが低いとは思いもよらなかった。
目を覚ますと、寝室には西日が差し込んでいた。
ルシウスを連続で抱いて、体力が尽きて眠ってしまったらしい。
まだ醒めない意識の中で、隣をまさぐると、冷たい敷布を感じるばかりだった。
ルシウスは先に目覚めて、自室にシャワーを浴びに行ってしまったのだろう。そして、そっちで休むはずだ。
一緒に暮らし始めて、鹿の園時代のような激しい身体の合わせ方は減った。
ダニエルはラボを開いて維持していくことに精いっぱいだったし、ルシウスも求めて来なくなったのだ。
すると、ルシウスがダニエルの足を蹴った。
「ドメイン法一条。ドメインは必ず所有者を持って存在し、所有者の命令に従う。ボクの所有者は、あのイタリア人のいかすかないオーナー」
「俺が買い取る」
「ええっ?!だって、君、アルバイトなんだろ。どうにかこうにか工面して、ボクの元に通っているだろ?きっとよくないところから借りた金が返せなくなって、そのうち、ボクに泣きついてきて……」
「ルシウス君。勝手なストーリーを作るな」
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「嘘だ、嘘だ。そんなのあり得ないよ。嘘をつくならもっと上手について欲しんだけど?!」
訳が分からなくなったのか、ルシウスは、ゴンゴンとダニエルの胸に額をぶつけてくる。
「イテテテッ。お前は発情期の鹿か!オーナーに言ったら、いい頃合いじゃないかって返事だった。びっくりする額を提示されたけどな」
「どうするの?」
「テロに遭ったときの王家からの見舞金と王立細胞研究所の退職金でお前の買い取りはなんとかなる」
「ボクが、耐用末期になったら?スクリーニング費用相当かかるよ?」
「お前が、スクリーニングで記憶を失くしてしまうのは嫌だ。けれど、お前自身を失うのはもっと嫌だ。だから、ラボを開いて繁盛させる」
「どっからその自信」
「ルシウス。承諾の返事は?」
「舞い上がってるところに水を差すようで悪いけど、買い取られて、やっぱ飽きたって所有者に言われて出戻って来た男娼、いっぱい知っているよ。それに、ボクは、色んなところから申し出があったけど、断って来た。どんどんボクの買い取り価格は値上がりしていって、今やプレミア状態」
「じゃあ、オレが初めてルシウス君の承諾を受ける人間になるんだ」
「そのルシウス君っていうの、止めて」
「ハハハ。照れてやがる」
ダニエルはルシウスの額に唇を落とす。
「もう少し、この麻薬みたいな恋を楽しみたかったのに、ダニエルのせいで、終わりが早まっちゃったじゃないか」
「新しく何か始まるかもしれないぜ?」
ルシウスはダニエルが買い取りを申し出ても飛びついて喜んだり、涙を流したりはしないと思っていたが、こんなにボルテージが低いとは思いもよらなかった。
目を覚ますと、寝室には西日が差し込んでいた。
ルシウスを連続で抱いて、体力が尽きて眠ってしまったらしい。
まだ醒めない意識の中で、隣をまさぐると、冷たい敷布を感じるばかりだった。
ルシウスは先に目覚めて、自室にシャワーを浴びに行ってしまったのだろう。そして、そっちで休むはずだ。
一緒に暮らし始めて、鹿の園時代のような激しい身体の合わせ方は減った。
ダニエルはラボを開いて維持していくことに精いっぱいだったし、ルシウスも求めて来なくなったのだ。
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