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第四章 ダニエル

85:ねえ、もっと激しくしてよ。乱れまくって頭を真っ白にしたい

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つまり、自分以外のドメインが存在するという概念がないはずなのだ。
とある人類学者によれば、人間は、意識の深い層で皆、繋がっているという。
一万年前、西洋と東洋など絶対に行き来できない時代に、似たような神話や伝説が各地に残っているのはそのせいだ、と。
幼い頃、この話を聞いて随分強引な研究結果だと思った。
だが、今は、そうも思えない。
もしかして、ドメインたちも深い部分で繋がっているのではないか?
だから、我々と複数で語ったのではないだろうか?
「腰が止ってる!」
ビタンッと頬を叩かれて、ダニエルは我に返る。
「何、ぼおっとしてるの?」
「悪い。ルシウス君の美しさに見とれていた」
「馬鹿なの?」
向かい合って座るルシウス、ダニエルの肩に手を回してくる。そして、受け入れている雄をもっと内部で感じようと、腰を深く落としてきた。
「お前、対面座位、好きだよなあ」
自分の唾液で濡れた口の傷を、親指の腹で拭う。
ダニエルが重点的に目をかけるドメインがラボにいると、ルシウスはたまに桁外れの暴走を起こす。
病的な嫉妬だ。
汗で濡れた身体はひんやりしていて、吸盤でもあるかのように、ダニエルの肌にくっついてくる。
ルシウスは、ダニエルの横髪をかきわけて、首に走る白い傷痕を舐めてくる。
テロで受けた傷だ。
自爆したテロリストの身体に仕込まれていたガラスや金属の一部が、十二才のダニエルを傷つけた。
今の医学なら簡単に消せるだろうが、自分一人だけ楽になるような気がしてずっと残したままでいる。
「ここ、好き」
「お前は、悪趣味だ」
「ねえ、もっと激しくしてよ。乱れまくって頭を真っ白にしたい」
「こうか?」
ルシウスをベッドに一旦押し倒しかけて、ダニエルはそれを止める。かわりに、細い両腰を掴んで、ルシウスの内部にすでに潜り込んでいる雄を、突きさすようにしてさらに奥の奥まで届かせる。
体型と同じくほっそりしたルシウスの雄の先端から、触ってもいないのにピューピューと白濁した液が噴き出した。
「きついけど、好きだもんなあ、これ」
ダニエルはルシウスの形のよい耳をはみながら、低い声でいじめる。
達しすぎて飛んでしまったのか「アー、アアッー」とダニエルの動きにされるがままにルシウスは嬌声を上げるだけだった。
責める手を緩めず、突き破るかのようにルシウスの奥を刺激すると、快楽が強すぎてついに気絶した。
ダニエルの雄を咥えたまま、身体がゆっくりと弛緩していく。
この瞬間が、一番、可愛いと思ってしまうなんて、俺も相当いかれている。
とダニエルは思う。
ルシウスと出会ったのは三年前と数か月前。鹿の園が放火される直前だ。
エドワードは次期国王として公務に忙しく、寂しさで狂ったアーサーは、鹿の園の住人と化してしまい、友人関係はすっかり途絶えていた。
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