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第三章 エドワード
67:エドワードがヴァレットにした子だね。確か、元男娼だったとか。
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公務に忙殺され、エドワードはアーサーに連絡をとったのは、ラリーの申し出から数日後だった。
明らかに戸惑っているアーサーの声が聞こえてくる。
ダニエルがアーサーが来ていることをエドワードに告げなかったことといい、目覚めたドメインを置き去りにして走り去ったことといい、幼馴染二人の行動はかなりエドワードにはひっかかる。
いつの間に、こんな、秘密を作られる仲になってしまったのだろう。
寂しさで心が痛むが、もう一人の自分が、都合のいいものだと鼻で笑う。
母親のアンと自分しかメインの王族がいなくなり、十代から代理公務で忙しかった。そのせいで、寂しさでメンタルがおかしくなったアーサーを、助けてやることはできなかった。
何もしなかったわけではない。何度も手は差し伸べたが、どうやってもアーサーの穴の開いた心を満たしてやることはできなかったのだ。
ダニエルと疎遠になったのだって、自分に原因がある。
王立細胞研究所からの機密データが持ちだされたとき、エドワードは犯人として最初に彼を疑った。ダニエルはドメインの細胞研究の第一人者で、世界最古のドメインをこの世に放った父親の仕事ぶりを間近で見ている。
だから、部下に執拗な取り調べをさせてしまった。結局、ダニエルは白だったのだが、彼は責任を取って辞職。議会まで口出しをしてきて、世間的にも問題となり、ダニエルを攻め立て爵位を取りあげるという落としどころに辿りつくまで、世間のダニエルへのバッシングは止まなかった。
せっかくあのテロから生き残った仲間だというのに、こうやって遠ざけてしまうのは、昏睡状態で目覚めるのが遅かったエドワードに内緒で、様々なことが秘密裏進められていたからだ。
その一部の秘密を知っていても、彼らは暫くエドワードにそのことを伏せていた。
あのとき、芽吹いた不信感は十年がすぎようと、枯れてはいない。むしろ事あるごと、成長を続けている気がする。
通信機器の向こう側で、アーサーは息をこらしている。
「こうやって話をするのは、かなり久しぶりだな」
『ごめん。忙しくて』
「仕事の方か?それとも、プライベートの方か?」
『え?……仕事だよ』
なんだか、よそよそしい。
「最近、ダニエルに会ったか?ルシウスという綺麗なオールドドメインを所有していた」
『ルシウス?知らない』
アーサーの声が硬くなる。
『今、忙しくて、ごめん』
執拗にアーサーは通信を切ろうとする。
「悪い。要件を手短かに言う。もう、私が渡した会員証で鹿の園に行く予定はないな?」
『鹿の園?まさか』
恐れおののいたように、アーサーは答える。
「なら、それを返してくれないか?」
『え?』
「部下が忍び込む。オールドドメインだから、細工しないと客にはなれなくてな」
『何をする気?』
「事細かに話すことはできない」
怯えた声が、エドワードに引っかかる。
今にも、通信を切られそうで、エドワードは話を引き延ばしにかかった。
「ところで、バロンを知っているか?」
『エドワードがヴァレットにした子だね。確か、元男娼だったとか。真面目な君が、思い切ったことをするものだなあと思ったよ』
明らかに戸惑っているアーサーの声が聞こえてくる。
ダニエルがアーサーが来ていることをエドワードに告げなかったことといい、目覚めたドメインを置き去りにして走り去ったことといい、幼馴染二人の行動はかなりエドワードにはひっかかる。
いつの間に、こんな、秘密を作られる仲になってしまったのだろう。
寂しさで心が痛むが、もう一人の自分が、都合のいいものだと鼻で笑う。
母親のアンと自分しかメインの王族がいなくなり、十代から代理公務で忙しかった。そのせいで、寂しさでメンタルがおかしくなったアーサーを、助けてやることはできなかった。
何もしなかったわけではない。何度も手は差し伸べたが、どうやってもアーサーの穴の開いた心を満たしてやることはできなかったのだ。
ダニエルと疎遠になったのだって、自分に原因がある。
王立細胞研究所からの機密データが持ちだされたとき、エドワードは犯人として最初に彼を疑った。ダニエルはドメインの細胞研究の第一人者で、世界最古のドメインをこの世に放った父親の仕事ぶりを間近で見ている。
だから、部下に執拗な取り調べをさせてしまった。結局、ダニエルは白だったのだが、彼は責任を取って辞職。議会まで口出しをしてきて、世間的にも問題となり、ダニエルを攻め立て爵位を取りあげるという落としどころに辿りつくまで、世間のダニエルへのバッシングは止まなかった。
せっかくあのテロから生き残った仲間だというのに、こうやって遠ざけてしまうのは、昏睡状態で目覚めるのが遅かったエドワードに内緒で、様々なことが秘密裏進められていたからだ。
その一部の秘密を知っていても、彼らは暫くエドワードにそのことを伏せていた。
あのとき、芽吹いた不信感は十年がすぎようと、枯れてはいない。むしろ事あるごと、成長を続けている気がする。
通信機器の向こう側で、アーサーは息をこらしている。
「こうやって話をするのは、かなり久しぶりだな」
『ごめん。忙しくて』
「仕事の方か?それとも、プライベートの方か?」
『え?……仕事だよ』
なんだか、よそよそしい。
「最近、ダニエルに会ったか?ルシウスという綺麗なオールドドメインを所有していた」
『ルシウス?知らない』
アーサーの声が硬くなる。
『今、忙しくて、ごめん』
執拗にアーサーは通信を切ろうとする。
「悪い。要件を手短かに言う。もう、私が渡した会員証で鹿の園に行く予定はないな?」
『鹿の園?まさか』
恐れおののいたように、アーサーは答える。
「なら、それを返してくれないか?」
『え?』
「部下が忍び込む。オールドドメインだから、細工しないと客にはなれなくてな」
『何をする気?』
「事細かに話すことはできない」
怯えた声が、エドワードに引っかかる。
今にも、通信を切られそうで、エドワードは話を引き延ばしにかかった。
「ところで、バロンを知っているか?」
『エドワードがヴァレットにした子だね。確か、元男娼だったとか。真面目な君が、思い切ったことをするものだなあと思ったよ』
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