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第ニ章 ベリル
52:だったら今夜、ルシウスに会いに行ってもいいか?
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宝石商助手の生活も慣れて来て、ベリルもお供で一緒に外出をする。そうすると、必ず訪問先で、遠回しの嫌味をアーサーは言われるのだ。
金の髪に深く澄んだ青い目。端正な顔立ちをしているから、周りにやっかまれているのだろうか?
今日だってそうだ。
商用でクラッシックシティー郊外のカントリーハウスに出向いたら、その館と主人とマダムと小さな娘が待っていた。
小さな娘は、宝石よりアーサーに興味があるようで盛んに寄ってこようとしたが、館の主人が娘を抱き上げそれを阻止した。
「アーサー君に近づいたら、娘は即刻、お嫁に行く事態になりそうだな」
「さすがに、それは、無いですよ」
おそらくタラシだから気を許せないという意味なのだろうが、そういう軽い人間なら、嫌味だってスルッと流せるはずだ。なのに、アーサーは明らかに落ち込んでる。
新人食いのアーサー。
スクリーニング。
ぶっ壊される。
隣家のドメインたちが言った言葉の意味は今だによく分からないけれど、あまりいい言葉ではないというのは何となく察しが付く。
スクリーニングという意味は、タブレットがあれば調べられる。しかし、アーサーはベリルに情報機器に溺れて欲しくないらしく、自由に使わせてくれない。
ああ、もどかしい。
面と向かって聞いても、いつもの悲しそうな顔をされるだけだ。
馬車が館の前に止って、鍵をベリルに渡したアーサーが馬車の扉を開けた。
「ベリルは降りて。僕は、商用がまだ続くから」
「オレも行くよ」
「話好きで、お酒も出てくる方だから、明け方まで解放してもらえない。ニュードメインに泊まりを頼んでおくから、一体じゃないよ。安心して」
「ニュードメインに?だったら、オレ、一体で待っている方がマシ!」
「心配なんだよ」
ふっと目を細めて、アーサーがベリルの頬に触れて来た。
冷たい指先が気持ちがいい。
初めての行為なのに、もう何度もしているのよう自然だった。
その姿は、ドメインを壊す暴力的な所有者には見えない。
触れられて嬉しいのか、怖いのか、それとも両方の気持ちが混じり合っているのか。
ベリルは混乱していた。
その気持ちを誰かに聞いてもらいたい。
誰かに。
適任の顔が浮かんで、ベリルはアーサーに申し出た。
「だったら今夜、ルシウスに会いに行ってもいいか?」
ラボの隣りにあるダニエルの私館で、ベリルは夕食を振る舞われていた。
料理を作るニュードメインの姿は無く、ルシウスが給仕をこなしている。
しかし、彼は機嫌が悪いようだ。
ドンっと勢いよく熱々のシチューたっぷりの皿をベリルの目の前に置くと、ルシウスは一体だけ離れたところに座り、壁の点けっぱなしのテレビを見始める。
『国営放送ABCテレビのアリスです。ただいま議会前です』
肩までの髪の眼鏡の女性は、何十段と続く白い大きな階段前にいた。階段のてっぺんには、真四角な建築物の上に巨大なドームが乘った建物がそびえたっている。
議会は、クラッシックシティーの中央通りにある。
ベックス宮殿と真反対に位置し、十分ほどの距離にある。
金の髪に深く澄んだ青い目。端正な顔立ちをしているから、周りにやっかまれているのだろうか?
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ああ、もどかしい。
面と向かって聞いても、いつもの悲しそうな顔をされるだけだ。
馬車が館の前に止って、鍵をベリルに渡したアーサーが馬車の扉を開けた。
「ベリルは降りて。僕は、商用がまだ続くから」
「オレも行くよ」
「話好きで、お酒も出てくる方だから、明け方まで解放してもらえない。ニュードメインに泊まりを頼んでおくから、一体じゃないよ。安心して」
「ニュードメインに?だったら、オレ、一体で待っている方がマシ!」
「心配なんだよ」
ふっと目を細めて、アーサーがベリルの頬に触れて来た。
冷たい指先が気持ちがいい。
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触れられて嬉しいのか、怖いのか、それとも両方の気持ちが混じり合っているのか。
ベリルは混乱していた。
その気持ちを誰かに聞いてもらいたい。
誰かに。
適任の顔が浮かんで、ベリルはアーサーに申し出た。
「だったら今夜、ルシウスに会いに行ってもいいか?」
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料理を作るニュードメインの姿は無く、ルシウスが給仕をこなしている。
しかし、彼は機嫌が悪いようだ。
ドンっと勢いよく熱々のシチューたっぷりの皿をベリルの目の前に置くと、ルシウスは一体だけ離れたところに座り、壁の点けっぱなしのテレビを見始める。
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