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第一章 バロン
17:バロン。大丈夫ですか?
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英国全身体に雪マークが踊っている天気予報が映し出されると、「殿下が出ているチャンネル」と続けて言った。
LIVEと画面の右端に書かれた画面が映る。
今日のエドワードは軍服ではなく、バロンと同じようなジャケット姿だ。きちんと髪を撫でつけていて、昨日と変わらない不機嫌ぶりで映っていた。
女性インタビューアーの声がする。
『国営放送ABCテレビです。今朝の新聞には、エドワード王太子殿下が救出した男娼が、鹿の園に放火したバロンではないかという見出しが躍っていますが?』
『まだ、当オールドドメインに事実確認はできていない。それが真実だとしたら、非常に残念だ』
『バロンは、三年半前に機密データを持ちだした容疑もかかっていますね。それについては、どうお考えですか?』
すると、エドワードが微妙な間を置いた。
『―――それが真実だとしたら、非常に残念だ』
バロンは、画面を食い入るように見つめる。
何だ、この間は?
それに、唇の端が少し上がっている?
今度は、男性インタビューアーの声がする。
『ネットフィリップスです。もし、その二点が真実だとしたら、エドワード王太子殿下は、バロンをどうされるおつもりですか?放火は重罪ですよね?現行では、ドメインを裁く法律はありませんので、所有者、つまり鹿の園のオーナーが処罰されるのでしょうか?』
エドワードは、テーブルに両肘をつき、祈るように両手を重ね合わせた。
『バロンと二十四時間足らずだが、同じ時を過ごしてみて、人にかなり近い感情を持っていることが感じとれた。昨年、ドメインは不自然な存在だと発言したことは、取り消すべきかもしれない』
会見場には、どよめきが起こる。
エドワードが、さらに続ける。
『暫く一緒に過ごして、最終的な結論を出したいと思う。以上、会見は終わりだ』
そして、一方的に会見を打ち切って、席から立ち上がる。
『エドワード王太子殿下っ!つまり、それは、ドメインを人間と同等と考えるということですか?人権団体から、激しい突き上げがありそうですが』
『それは、オールドドメインに限ったことなのでしょうか?ニュードメインは、いかがお考えですか?』
会見場は、ハチの巣を突いたような騒ぎになる。
テレビ画面には、リポーターがひょいと画面に割り込んできて、会見の顛末をまとめると、昨日の違法娼館救出の映像を映し出す。
肩にエドワードに軍コートを掛けられ、涙ぐみながら娼館から出てくるバロンが出て来るシーンだった。
「何だ、これ。何なんだっ」
バロンは、頭を抱えて呻く。
機密データは、自分が持っていて、エドワードはそのありかを知らない。
切り札を持っているのはこっちのはずなのに、手のひらで転がされているよう思えてならない。
「バロン。大丈夫ですか?」
キースに心配され、バロンはカッとなった。
「大丈夫なわけ、ないじゃないですか!!それに、キースさんだって心の底では、男娼が好奇の目にさらされて、面白がっているんでしょう」
声を荒げて立ち上がったバロンは、ハッとした。
「すみませんっ。本当にすみませんっ」
LIVEと画面の右端に書かれた画面が映る。
今日のエドワードは軍服ではなく、バロンと同じようなジャケット姿だ。きちんと髪を撫でつけていて、昨日と変わらない不機嫌ぶりで映っていた。
女性インタビューアーの声がする。
『国営放送ABCテレビです。今朝の新聞には、エドワード王太子殿下が救出した男娼が、鹿の園に放火したバロンではないかという見出しが躍っていますが?』
『まだ、当オールドドメインに事実確認はできていない。それが真実だとしたら、非常に残念だ』
『バロンは、三年半前に機密データを持ちだした容疑もかかっていますね。それについては、どうお考えですか?』
すると、エドワードが微妙な間を置いた。
『―――それが真実だとしたら、非常に残念だ』
バロンは、画面を食い入るように見つめる。
何だ、この間は?
それに、唇の端が少し上がっている?
今度は、男性インタビューアーの声がする。
『ネットフィリップスです。もし、その二点が真実だとしたら、エドワード王太子殿下は、バロンをどうされるおつもりですか?放火は重罪ですよね?現行では、ドメインを裁く法律はありませんので、所有者、つまり鹿の園のオーナーが処罰されるのでしょうか?』
エドワードは、テーブルに両肘をつき、祈るように両手を重ね合わせた。
『バロンと二十四時間足らずだが、同じ時を過ごしてみて、人にかなり近い感情を持っていることが感じとれた。昨年、ドメインは不自然な存在だと発言したことは、取り消すべきかもしれない』
会見場には、どよめきが起こる。
エドワードが、さらに続ける。
『暫く一緒に過ごして、最終的な結論を出したいと思う。以上、会見は終わりだ』
そして、一方的に会見を打ち切って、席から立ち上がる。
『エドワード王太子殿下っ!つまり、それは、ドメインを人間と同等と考えるということですか?人権団体から、激しい突き上げがありそうですが』
『それは、オールドドメインに限ったことなのでしょうか?ニュードメインは、いかがお考えですか?』
会見場は、ハチの巣を突いたような騒ぎになる。
テレビ画面には、リポーターがひょいと画面に割り込んできて、会見の顛末をまとめると、昨日の違法娼館救出の映像を映し出す。
肩にエドワードに軍コートを掛けられ、涙ぐみながら娼館から出てくるバロンが出て来るシーンだった。
「何だ、これ。何なんだっ」
バロンは、頭を抱えて呻く。
機密データは、自分が持っていて、エドワードはそのありかを知らない。
切り札を持っているのはこっちのはずなのに、手のひらで転がされているよう思えてならない。
「バロン。大丈夫ですか?」
キースに心配され、バロンはカッとなった。
「大丈夫なわけ、ないじゃないですか!!それに、キースさんだって心の底では、男娼が好奇の目にさらされて、面白がっているんでしょう」
声を荒げて立ち上がったバロンは、ハッとした。
「すみませんっ。本当にすみませんっ」
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