【完結】王と伯爵に捧げる七つの指輪

遊佐ミチル

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第一章 バロン

6:私から目を反らすなっ。陰部から手も離すなっ

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大丈夫だ、落ち着けと心の中で必死に繰り替えす。
俺は、いままで体液の提出を求められたことがない。
だから、違法娼館のロンでしかない。
「もう一度言うっ。手を膝の裏にっ。足を限界まで開けっ」
言う通りしなければ、殴打では済まない迫力だった。
屈辱にまみれながら、足を開く。
「ああ、上手だ」
子供でも褒めるみたいにラリーは声を甘くし、バロンの秘部に長い指を潜り込ませていく。数度抜き差ししただけで、透明なローションとともに白濁とした液が出て来た。
「アハハ。さっきの男かあ」
「ラリー。遊んでないで早くしろ」
組んだ腕の上で、指をせわしなくトントンとさせながら戸口の男が言う。
「はいはい」と生返事をして、ラリーの指がバロンのさらに奥へと侵入して来る。
「ここかな?そうだよね?」
敏感な部分を擦られ、バロンの雄が硬度を保ち始めた。
ラリーは、もう一枚ゴムを開いている手で掴むと口で裂いて取り出し、バロンの雄に器用につける。
「いいよ、しな」
命ぜられて、バロンは芯を持ち始めたそれを掴んだ。それでも、手を上下することができない。
「これ以上、恥ずかしい思いをしたくなければ、さっさとね」
ラリーは、バロンが掴んだ手の上からローションを振りかける。
戸口の男が、軍服の胸ポケットから小さなタブレットを取り出していた。そして、バロンの顔と端末を数度見比べた後、ラリーより重い靴音を立てて、傍に寄ってくる。
「どうされたんですか?」
「ニューイヤーの挨拶を、すっぽかしたかいがあったようだ」
ベッドの傍らに、男が立った。
威圧感のある視線に、バロンは下を向きかける。
「顔を上げろ」
手が伸びて来て、長く伸びた前髪をかき上げられ顔を露わされた。
化け物と揶揄される顔半分を見られるのが嫌で、反射的に顔を背けようとすると、顎を取られる。
男はもう一方の手で、タブレットをバロンの顔に近づけてきた。
「私から目を反らすなっ。陰部から手も離すなっ」
まるで雷を頭上から落とされたような罵声に、バロンは完全に固まってしまった。
「ハハ。絞めすぎ、絞めすぎ」
ラリーが笑いながらバロンの秘部に潜り込ませた指を動かす。そして、男を見た。
「急いで、ドメイン照合します。娼館は、上階がランクの高い部屋になっていますから、綺麗ですよ。そちらで待たれては?」
「いや、いい」
男は、バロンの顎から手を外し、端末をポケットにしまって傍を離れた。部屋の隅にあった椅子を持ってくる。
その最中、ラリーが男に聞こえない声量で「―――疑り深いなあ」と呟いた。
「さっさと、出させろ」と男が急かす。
「焦らせたら、出るものも出ませんて」
ラリーは薄ら笑いを濃くし、指の出し入れを続ける。
今までの客とは違った繊細な動きに、バロンの腰はムズムズし始めるが、雄の硬さは最高潮には達しない。
早く照合の結果を知りたい男はイライラしているようだ。
癖なのか、組んだ腕の上でまた指をまたトントンと動かしている。
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