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第一章 バロン

5:ゴムを付けさせ、一人でさせろ。仕事なんだから、それぐらいできるだろ

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 人間の性の相手までするぐらいこの世界に溶け込みつつあるドメインを、差別せずに受け入れようという声がある一方、先ほどTVに映っていたエドワードのようにドメインを危険視する人間も大勢いる。
共存か、それとも支配か。
もしくは、淘汰か。
バロンのようなオールドドメインの命は、人間の手のひらの上でいつも転がされているようなものだった。
ラリーのドメインチェックは続く。
バロンの身体は嫌な汗をかき、右手が、異様なほど突っ張っている。
右手の親指の付け根は、分からないよう違法増設がされている。
そこには、盗み出して返すあてを失ったデータが入っていた。
増設は三年前、闇ラボでしてもらった。店主は、まだ十代の店を開いたばかりの若者で、かなり不安な増設だったが、「オレは天才だから、絶対に見つからない」とのたまった。そして、通信機能や位置情報機能など余計なものまで、お試していろいろ付けられた。
要は彼は、自分が造ったシステムがきちんと機能するか、オールドドメインで実証したかったらしい。
ドメインチェッカーがキュインと鳴った。色が変わったのは、左手のみ。しかも、色は青。
クリアの印だ。
自信家の若い店主の言葉に嘘はなかったようだ。
しかし、ラリーの身体チェックはそこでは終わらない。閉じた膝に手を入れられ、足を開かせられた。
「あらら。可哀想なぐらい萎えちゃってるね」
身体の中心に無遠慮に視線を注がれ、バロンは渾身の力で膝を閉じようとするが、一ミリも動かせない。
「どうします?時間がかかるかもしれませんよ?」
ラリーは、ベッドの隣りの小机を探ってゴムを二枚取り出した。
すると、背後にいた不機嫌な男が答える。
「無理に抱いて後々問題になったら困る。ゴムを付けさせ、一人でさせろ。仕事なんだから、それぐらいできるだろ」
バロンはその言葉を聞き、体温が一瞬で三度ほど下がった気がした。
今度は、ドメイン照合か。
手の甲の刻印はドメインの印であり、歴代の所有者情報や、どこに住んでいたか、どんなラボで治療を受けていたのかなどを知ることができる。だが、今の時代、闇ラボに行けば情報を書き換えることは簡単だ。金さえ払えば、所有者を伴わないオールドドメインにだって、処置を施してくれる人間は大勢いる。
だから、治安を取り締まる王立警ら隊はドメインを確実に取り押さえるため、皮膚や頭髪、体液を用いたドメイン照合を行う。チェックにかかる時間は体液が一番短く正確で、所有者の元から逃走したドメインを道端で見つけた場合、路地裏で強制採取したりなど、非道なことを行う。
「良かったね。君のソコ、もう限界だろ?」
数十時間、ほとんど休みなく使われ入り口が赤く腫れあがった秘部を覗きこみながら、ラリーが言う。
目の前でゴムの袋が裂かれた。
ラリーがそれを中指に装着し、ローションボトルから液を片方の手の平に出す。それをすくってバロンの秘部に塗り込んで来た。
「止めっ……」
拒絶の言葉を吐こうとすると、
「手を膝の裏にっ。足を限界まで開けっ」
軍隊式の命令に、バロンは怯えた。
息が上手く吸えなくて苦しい。
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